進路取捨選択<中編>
「お母さん、この子の勉強は、諦めてください」
やぎ先生は、ずっとずっと、前に、お母さんにそう言ったらしい。
保母さんに、なりたかった私は、また勉強をしてもいいかな、と思った。
だけど、私は、保母さんになれないんだよと、お母さんは悲しそうな顔で言う。
何で、どうして、と聞くけれど、お母さんは悲しそうな顔をしたまま、ぽつり、ぽつりと、言った。
「沙誉、沙誉の病気の、てんかんにはね、ピアノの音がね、すっごく響くんだよ。
今だって、やっと治りかけてるのに、沙誉。あなたがまた発作を起こしたら、次はダメ。
お父さんやお母さんは、今度こそ、あなたを助けられないんだよ」
目の前が、また真っ暗になった。
校長先生は、全校集会の時に、いつも決まって、「病気と仲良くしましょうね」と、
にこにこした顔で、小学部の子供達にも、中学部の子供達にも、高等部の私達にも言う。
病気と、仲良くしましょうね。無理して、頑張ってはいけないんだよ。
そんな校長先生の言葉を思い出しながら、お母さんの言葉を聞きながら、
私のココロの中は、涙をこぼしはじめた。
神様は、意地悪だ。
私の手のひらの中は、ちっぽけな物だけなのに、
いつも、いつも、その中で、一番、大事な物を取り上げようとする。
ほんの少しだけ、ほんの少しだけでも、何か残してくれればいいのに。
なんでこんなに、意地悪なことをするんだろう。
神様、神様、聞いても、いいですか?
私は、あなたに、何かしましたか
あなたにとって、嫌なこと、悲しいこと、しましたか
教えてください。
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