自動ドア
「命題”フランス王は禿ではない”は通常、偽だとして斥けられるが、それはその命題が”<フランス王が存在し、かつ禿げである>ということは偽である”ではなく、”フランス王が存在する。かつ彼は禿ではない”を意味するものとして取られるからである」
B・ラッセル&A・N・ホワイトヘッド『プリンキピア・マテマティカ』
2002.10.2(水)
自動ドアには俺が確認済みなだけで3種類ある。
T:センサーで人を感知し、文字通り自動で開閉するドア
U:ボタンを押して、開閉する自動ドア
V:スイッチ(とされる)部分を触って、開閉する自動ドア
以上の3種類だ。つい最近、Vのタイプの自動ドアを初めて知った。というか、数秒間ドアの前で立ち尽くした。Uのようにボタン=突起部がなく、かつ「自動」などと書いてあったので、誰でも引っかかるだろう。
ところで疑問に思ったのが、この3種はいずれも「自動ドア」というカテゴリーで一括りにされているということだ。極めて常識的に考えると、「自動ドア」は「自動的に開閉するドア」と定義できるだろう。ここで問題になるのが「自動的に開閉する」という部分だ。
というのも、もし自動ドアが自動的に開閉するものなら、「自動ドアを開ける」や「自動ドアを閉じる」といったことはあり得ないことになるじゃないか。自動ドアはその性質上、「開ける」と「閉じる」という動詞の目的語にはなり得ない。それはもはや自動ドアではない。ただの動くドアである。それと同様に自動ドアは「開けられる」「閉じられる」ものでもない。
それでも「UとVもあくまで自動ドアだ」と言い張るわがまま野郎のために、少し論を整理して考えてみよう。
「自動ドアを開ける」という行為があり得ないということは揺るぎないので、UやVを開閉する際の行動は「自動ドアを開ける」という行動なのかどうかを考えてみよう。細かく考えればこれは「自動ドアが開いたり閉じたりする運動を誘発する何らかの信号を発する」行為であるといえるだろう。もしこのことが「自動ドアを作動させる」ということならば、なるほど自動ドアは確かに自動ドアだ。
しかし、自動ドアは、開店前に店員がスイッチを入れた時点ですでに作動していたのではないのか?ということは店員か自分か、どちらかが「作動させる」以外のことをしていることになろう。ごく自然に考えるなら、店員は「自動ドアが作動する準備をした」と言えそうだ。
では、店員が「自動ドアが作動する準備をする」前は、確かに自動ドアは作動する準備がなされていなかったはずだ。ところで、「自動ドアが作動する準備」というのはいったい何を言っているのだろうか?自動ドアが「自動ドアという1個の統合された装置」として作動する準備が出来ていることであるように思われるのだが・・・。
だとすると、自動ドアは、店が出来て、出入り口ないしそれに類する場所にしかるべき形で設置された時点で作動する準備が出来ていたはずである。したがって、店員と、大工なり建設作業の兄ちゃんなりは同一の「自動ドアが作動する準備をする」ということをしていることになってしまうが、明らかに彼らはそれぞれ違った行為をしている。ということは建設作業の兄ちゃんは「自動ドアが作動する準備」をしていなかったことになる。
ならば彼はいったい何をやっていたのだろう?考えられるのは「自動ドアを作っていた」というあたりだろうか。「設置する」は一見使えそうに見えるが、「設置する」ことは自動ドアが「作動する」こととは違うので、設置されずに作動する自動ドアがあってもいいことになる。しかし、そのような自動ドアは論理的にも実際的にもあり得ない。したがって、兄ちゃんは「自動ドアを作っていた」ことになる。
建設作業の兄ちゃんによって(最終的にであれ)自動ドアが作られたのならば、自動ドアが完成するのは、それがしかるべき場所にしかるべき形で置かれたとき、ということになる。しかし・・・それは通常の使い方での「自動ドアを設置する」ないし「自動ドアの準備をする」とどう違うというのか・・・?
ハッキリ言ってUとVを自動ドアだ、と言うからいけないのだ。そう、UとVは「自動ドア」ではなく「動ドア」である。したがって、その手のドアの前で立ち尽くした人は、立ち尽くした時間を店側にだまし取られたことになる(より正確にいうなら、ドアに表示された事項にだまされたが、その責任はそのような事項を表示したドアを採用した店側にある、ということになろう)。・・・詐欺罪で訴えるか・・・?