妖怪会話集より


    



「欲望の人生と・・・」



妖怪 :

   いらっしゃい、いらっしゃ〜い!
   お得な三点セットぉ! 今夜はお買い得〜〜〜!

       (お祭りの夜道に出店がひしめいている)
東郷さやか:

   何を売ってるの?

妖怪 :

   人間の欲望でっさぁ!
   今夜は特に「性欲」が目玉商品っす!

   こちらのセットは「性欲」「食欲」「睡眠欲」強化セット。
   こちらのセットは、フランスの三色国旗つきで「性欲」と
   「エスプリの効いた夜の会話」の2点セット。  
   ドイツ製のセットには「性欲」の他に「真面目な目つき」が
   入ってます。

東郷さやか
  
   このイタリアのセットには何がついてんの?

妖怪 :
   
   イタリア製のワインの香りでさぁ。

   お嬢さん、ところでこっちのセットには「ケシの花畑と秘密
   基地」の写真がついてまっせ。
   国旗がついてないが、まあ、いいや!

   どうです?

東郷さやか:
  
   いらない・・・。
   あんまり複雑なモノ、好きじゃないのよね。        

      (クールに立ち去る)

.....................
    
チビ妖怪 :
      (人間の「性欲」を両手の中で引っ張ったり、突っつ
       いたりしながら、退屈そうに時間を過ごしている)
大妖怪 :
  
      (部屋に入るなりチビ妖怪を見て一喝する)

   こら!何をしているんだ!

   人間の「性欲」は、われわれ妖怪が扱っている人間の欲望の
   中でも最も扱いやすい、大切なお得意様だぞ!

   丁重に扱え!

   突っついたり引っ張ったりするとは、何事だ!!    

チビ妖怪 :
      (一喝されてひどく驚き、急いで「性欲」を口に入れ
       て飲みこんでしまう!)

軽口妖怪 :

   あ!こいつ、又へまりやがった!

   「性欲」を口から飲みこんだりするからおかしな事になるん
   だよ!

   きっと口から下ネタばっかり偉そうに吐くものの、実際には
   ガールフレンドを作る気力もない、タダの阿呆になるぞ!

   あっちゃっちゃ〜〜〜!
   なめちゃいかん!! 
   そういう大事な欲望を口に入れて、なめたりしたらアカンの
   だよ、君ぃ〜!
  
美人妖怪 :
  
   ふふふ。
  
   妖怪も人間も、男が単純なのは変わらないわねえ。

   性欲なんて大したことないじゃない?
   大騒ぎして、バッカみたい・・・。

   色気出して寝室でやたらに頑張るより、真っ昼間に私のこの
   美貌で昼間の理性的な男を翻弄する方が、よっぽど楽しいわ。

      (真っ白い指でツルツルの長い髪をすうっと梳く)

無口妖怪 :
  
      (うっとりとそれを眺める)     

軽口妖怪 :

   男が夜に寝室で大ハリキリなのは、そうやって昼間、女性に
   征服されたことへの仕返しさぁ。

   しかし、女性の忠実度をチェックする夜のお仕事は、常に欠
   かせないぜ!

チビ妖怪 :

   そうかい?

      (先ほど性欲を口から飲みこんでしまった為、美人妖
       怪のお色気には不感症気味で、ケロケロと話し出す) 

   しかし最近僕は「性欲」と「征服欲」の区別がつかないよ〜!

   男も女も、色気を振りまいて「性欲」の望むところを実行に
   移すのは、動物と同じ性欲が原動力になっているんじゃあな
   くて、実は何か別の人間的な欲望、つまりだなあ、ある種の
   「征服欲」とかぁ、まあ、「孤独や不安を埋めたい欲望」が
   背後にあるようじゃないか!

   人間には本当に「動物的な、純粋な性欲」があるのかなあ!?

   だって一年中発情している動物なんて、人間だけだろう?
   不自然で可笑しすぎるぜ! 

   けけ! けけけけ!

大妖怪 :

      (再びチビ妖怪を一喝する)
  
   こら! あんまり「性欲の正体」をばらすんじゃない!
   どこかで人間が聞き耳を立てていたら、一体どうするのじゃ!
  
   ただでさえ最近は妖怪マガジンなどが増えて、我々の仕事が
   やりにくくなって来てるのじゃ!

ボケ妖怪 :

   さっきから言ってる「征服欲」って何のこと?

知ったか妖怪 :

   知らないのか?最近アメリカの学者が性犯罪者を研究して、
   その結果を発表したのだ!
   そしてその結果は、アメリカでは現在かなり重要視されてい
   るのだよ!

知らなかった妖怪 :

   性犯罪者は一般人とは関係ないんじゃないのか?

知ったか妖怪 :
  
   馬鹿!
   一般人より欲望に素直なだけさ!

   我々の挑発に自然にのってくれて、夢のような犯罪を犯して
   くれた方たちだ。
   昼間はみんなマジな顔をして普通に街を歩いているじゃない
   か!

   一般人だって、極端に孤独になったり、極貧にあえぎ出した
   ら、たちまち犯罪者予備軍になるものさ!
   人間なんてちょろいもんさ!

   ひっひっひ!
  
   しかし、研究者に取材されて「性欲を利用した我々の活動」
   の結果が日の目を見るとはなぁ!

知らなかった妖怪 :
  
   で、性欲の背後にひそむ「征服欲」とは?
 
知ったか妖怪 :
   
   性犯罪者がムショから出て、立ちなおって社会復帰を果たす
   為に、世の中では色々な人が働いているのさ〜。

   中には犯罪を起こす人間心理のメカニズムを研究している学
   者もいるのだよ。

馬鹿妖怪 :

   へええ、偉そうに研究しているそいつは、自分の事だけじゃ
   研究し足りないのかねえ!

   けっけっけ!

      (ヘコヘコと馬鹿妖怪が首を振って歩き回ると、「平
       凡人と狂人との境目をぼかすエキス」なるものが指
       からこぼれて床にたれ、異臭を放つ)

知らなかった妖怪 :
  
   こら!エキスをやたらに蒔くな!
   くさいじゃないか!

   狂人が増えすぎたら、狂人ぶりを維持する為のアフターケア
   に駆り出されるのは、俺たち新人妖怪たちだぞ!
  
   世の中にはもう既に、十分おかしなヤツがいるんだ!
   いいかげんにしろ!!!

      (馬鹿妖怪がまき散らした「平凡人と狂人の境目をぼ
       かすエキス」を吸いこんだ「知らなかった妖怪」は、
       怒鳴っているうちに、どんどん興奮してきて目つき
       が妖しくなり、攻撃的で激しい貧乏ゆすりを始める)

馬鹿妖怪 :
  
   そうだよなあ!
   民主主義の社会っちゅーのは、多数決の社会だろう?
   みんなの人権を守って、ひとりひとりの個性発揮を促進するん
   だよなぁ?

   狂人が増えて過半数を超えたら、彼らの方が正当な人間という
   事で、世の中がひっくり返って、で、そうしたら又新たなエキ
   スを開発して、新しい狂人を増やさなくっちゃいけねえ事にな
   るかもしれねえな!

   け、けけけ!

知ったか妖怪 :

   どうでもいいよ。そんなたわ事!
   馬鹿妖怪のいう事なんか、まともじゃないのさ!
   
   ところで本題に入るぞ。

      (ふと満足そうに目を細める)

   しかし、人に説教をたれたり、何かを偉そうに説明するのは、
   気持ちがいいもんだなあ!
   演説好きな恐怖政治家の気持ちがわかるぜ!

   征服欲っちゅーのかな!?

   みんなが俺の説明を聞いてるサマを見ていると、最高だぜ!
   ヘタな性欲よりも俺を興奮させるぜ! 
  
   へっへっへ!

   みんな聞け!!!
   アメリカの学者の話しだぞ〜う!

無口妖怪 :
      (うっとりと「知ったか妖怪」を眺める)

知ったか妖怪: 

   で、だなあ・・・。
   アメリカの学者さんは、性犯罪者を部屋に入れて、定期的に
   インタビューをして記録をつけたんだよ。

   なんで犯罪を犯したか?
   異性に乱暴をしている間の心境を思い出してみろ!
   自分の中にひそむ本性をどう思うか?って問い詰めたりして
   さ。

   犯罪者は男性も女性もいるが、共通点は「彼らは満たされて
   いなかった」ということさ。

知らなかった妖怪 :        

   彼らの住む街には、いわゆるセックスショップみたいなモノ
   が足りなかったのか?

知ったか妖怪 :
   
   いやいや。そんなお店に行ったって、奴らは満たされなかっ
   た、っていうのさ・・・。

つねに黙っていたけれど既に知ってる妖怪 :
   
   そうだよ。

   澄ました顔をして、昼間は彼らを無視して生活していて、時
   には彼ら部下を怒鳴り散らしたりして好きにしている上司。
   
   セクシーな衣服で人を挑発していて人の注目を浴びたがるの
   に、近寄るとマユをひそめて汚いものでも見るように相手を
   見たりするヤツ。

   そういうヤツらを「いじめてやりたかった」という発言が、
   記録的に多かったそうだぜ。

大妖怪 :
  
   何をこそこそやっているのだ!
   時間を無駄にしないで、さっさと働きにいけ!!

      (妖怪達、くもの子を散らすように部屋から出て行く)

.....................

マヌケ妖怪 :

      (夜道で仲間に囁く)

   あんまり本気で恋愛している人間には近づかない方がいいよ。

   不真面目な人間、ふざけたヤツが見つからなかったら、せめ
   て迷いのある人間、不安のある人間なんかをみつけて、欲望
   に火をつけて騒動を起こすのがいいよ。

   カアッとしている人間同士の間なんかにスルっと入っていっ
   て、最新の欲望セットを仕掛けることにも醍醐味があるぜ!
      
   しかし、冷静で真面目なヤツや、熱くなって純粋に誰かに惚
   れてる人間には、いまいち欲望セットも効果が出せないのさ。

   そんな場所じゃあ仕事の成果が上がらないよ。
   不穏な雰囲気がすでにある所に行けよ!

マヌケ妖怪の冴えない友達妖怪 :

   ちっ!

   今日のノルマ、まだ終わっていないんだよな・・・。
   あと6人は、「性欲の犠牲者」を作らないと、俺も首だ!

   どこへ行こうかな・・・。

.....................

恋する善良な青年 :

      (自分の部屋でぼうっとしながら) 
 
   あ〜、気になるなぁ・・・・・・。
   今日は寒いけど、あの子は元気でやってるかなあ・・・。
   
      (恋する善良な青年がうっとりして椅子に腰を下ろす
       と、妖怪たちが椅子の上にポンと置いて仕掛けてあ
       った性欲・征服欲セットが、がっちゃりと青年のお
       尻の下で割れてしまう)

.....................

      (新宿の広場)

チビ妖怪 :

      (「欲望の人生とその結果」セットをカバンに入れて、
       新宿の広場をうろつきながら、欲望に弱そうな人間
       の犠牲者を物色している。

       カップルが広場で待ち合わせをしていて、そしてお
       互いを見つけて手を振り合う)
女の子 :

   待ったア?

男の子 :

   大丈夫。
   君、寒くない?

女の子 :

   う〜ん!寒いな〜〜〜!!
      
      (男の子の腕にしがみついて甘える。
       ふたりとも仲良くもつれて街角に消える)

チビ妖怪 :

      (ぼうぜん・・・。口をぽかんと開けて、立ちつくす)

   いいな〜ぁ!

      (そこへ血相を変えた「知ったか妖怪」が空から飛ん
       で来て、ぼうっとしているチビ妖怪に怒鳴る)

知ったか妖怪 :

   こら!日が暮れるぞ!
   早く「欲望の人生とその結果」セットを売りさばかないと、
   二人とも首だ!

   あと三人は犠牲者を探さないとノルマがこなせんぞ!

チビ妖怪 :

      (ため息をつき、しょぼ〜ん・・・。

       しばらくして、夕日に向かって羽を広げてしぶしぶ
       飛びたつ)

              おわり



    


「タバコ吸いすぎ?」



イケイケ妖怪 :
       (皮のジャケットを着込んで粋な様子で、妖怪が集
        合する某ある都内の喫茶店に登場)

     最近忙しいわ〜!
     毎日がさがさしていて嫌ねえ!
  
     なんかこう、こころ休まる一瞬がほしいわあ!

占い妖怪 :
     
     そうかい?
     
イケイケ妖怪 :
         
     ちょっとあんた! 私の人生占ってよ! 
     あんたの占い、よく当たるっていう噂じゃん?

占い妖怪 :
    
     他人の人生に干渉しないことに決めたんだよ。

     占いの結果にこだわって人生曲げる奴が多いから、占い、
     つまりは発言をひかえているのさぁ。

     占ってやるのはいいけど、口は開かないぜ。
     
     けっけっけ! 

     まあ、他人の悪いところを口に出すのは止めようってわ
     けさ。でも良い所だけを伝えるんじゃ、占いの使命が果
     たせんだろう。廃業だな、こりゃ。

     どいつの人生も問題だらけ!

     けっけっけ!

イケイケ妖怪 :

       (一瞬黙って神経質そうにタバコを取り出して火を
        つけようとする。)

カウンターのボーイ妖怪 :

     へ〜い、お前さん、今日は何本目のタバコだ!?

イケイケ妖怪 :

     うるっさいわねぇっ!!!

     人がタバコを何本吸おうと、健康損ねようと、暗い人生
     送ろうと、あんたの知ったこっちゃないでしょ〜がっ!
     ガタガタうるさいのよ!

     今日はこれがはじめてのタバコよ!
     1本目よっ!

     人の体を心配する暇あったら、コーヒーもってきてっ!

       (ライターとタバコを投げ出して激しく首を振る)  

カウンターのボーイ妖怪 :

     ふふふ。 いきり立つなよ。

     心配したとおりだ。
     一本目か。
   
     まだ吸い方が足りない、と言ってるのさ、俺は!


近くにいた複数の妖怪たち&イケイケ妖怪
        
       (腹をよじって)

     い〜〜〜〜ひっひっひっひっひ!



         



「資格はあるの?」



希望妖怪:
       試験が終わったわ〜。
       資格をとったから、これで私も就職活動に入れるわ!

       プロとしてやっていくのはこれからよ! うふ!

ちび妖怪:
       ぼくも資格がほしいなあ。
       資格があるとプロになれるんだね!

       ところで、彼女の資格って何の資格?

ふつうの妖怪:

       知らないけど、介護なんちゃらの資格かなあ。

奥様妖怪:
       うちの主人は、先週コンサルタントの資格をとった
       のよ!
       会社から帰宅して、主人は毎日猛勉強していたのよ!

       資格って大切よ〜! 

資格を全くもっていない妖怪:

             (鼻くそをほじくる)

ちび妖怪:

       僕は何の資格をとったらいいのかな〜。
       ねえねえ、のーてんき妖怪さん、あなたは何の資格
       をもっているの?

のーてんき妖怪:

       馬鹿だなあ。好きなことをすればいいんだよ。
       資格なんか関係あるか!

       うちの親父は経済学部を出たのに、その後ろくろを
       まわし始めて、今じゃ陶芸家だ。
       たしか陶芸家の資格なんか、奴はもってないぞ!
   
       資格があるのに無能な奴もいるぜ。

       片目妖怪の妹なんか、立派な論文を書いて大学時代
       に学部の教授にほめられた、っていうけど、その後
       法律家として事務所を出したら、商才がなかったせ
       いか上手くいかなくてさあ・・・。

ちび妖怪:
       「商才を証明する資格」をとっていなかったから、
       彼女しくじったんじゃないの?

馬鹿妖怪:  
       け〜けっけっけっけ!

       俺も「馬鹿を証明する資格」をもっていたらなあ!
       資格があれば、馬鹿として堂々と食っていけるはず
       だぜ!

       い〜ひっひっひっひ!

ちび妖怪:
       ねえねえ、東郷さやかちゃんって、芸術に理解があ
       る大家さんのおかげでピアノの弾けるアパートを借
       りられたんだよね?

       彼女はアパートを借りるときに、大家さんにちゃん
       とピアニストの資格を見せたのかなあ?



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