「う゛〜〜さむ〜〜〜い!!!」十二月の夕方寒空の下学校の校門の前で人を待つこと三十分。
いいかげん我慢の限界であった。「だからお前は校舎ん中で待ってればいんだよ。」
白い息を吐きながら寒がる夏美に中に入る様に勧める。
「そんな事言ったて勇人一人寒い思いさせるの心苦しいんだもん。」
「俺は生足なお前を寒さに付き合せるのが心苦しいぜ。」寒さを和らげる為に二人はその場で飛び跳ねたり足踏みしたりしているがなんといっても寒い。
「籐矢君早く来ないかなー」
手袋をした両手を口元で合わせて暗くなった校舎の一角、明かりがついている教室を見上げる。
寒さで血色を増した頬、真摯な瞳。「うわ!?ちょ、何々?おーもーいー」
後ろからの重圧に堪らず座り込む。
「あったけーだろ?」
夏美を後ろから抱きかかえた格好の勇人。
「あったかいケド重いぃ!!」
両腕は夏美を抱きかかえたまま立ち上がり校舎を背にして門の壁に寄り掛る。
「ぬっくい〜〜」
と、呟く夏美を他所に勇人は先程夏美が見つめていた教室に目をやる。
「籐矢の奴すっ飛んでくるぞ。」
笑いながら夏美に耳打ちする。
「ホント?」
首を捻って校舎を見上げる。
「あ!ホントだ、生徒会室電気消えた!!」
首を元に戻して「はやくこい〜〜」と呟きながら勇人に抱かれたまま足踏みする夏美。
間もなく本当にすっ飛んできた籐矢。「なにやってるんだい(怒)??」
笑顔を作ろうとしているが口元が引き吊っている。
「遅くまで大変だったね〜お疲れ様、籐矢君。」
勇人の両腕の隙間から夏美が籐矢に手を振る。
「お疲れ様、トウヤくん〜もっとゆっくりして来ればよかったのに〜〜」
夏美から腕を離す事なく籐矢をからかう様に一オクターブ高い声を出しながら夏美に倣って手を振る勇人。
籐矢がキレる寸前に勇人は夏美を解放して「早く行こうぜ。あんまり遅くなると樋口ん家に迷惑だからな」
言うがはやく歩き出す。
後に続く二人。
暫らく歩いて籐矢が口を開く。「橋本さん、なんか近過ぎやしないかい?」
夏美は籐矢の横にピタッと、くっ付いて歩いている。
「だって寒いんだもんっ腕組んで良い?」
言葉を失っている籐矢を
「俺んトコ来るか?」
と、いいながら右肘を曲げる勇人が覚醒させた。
籐矢は左肘を軽く曲げる。
夏美は両腕で籐矢の左肘に縋り付く格好になった。「籐矢君勇人よりあったかぁ〜い。湯たんぽみたい。」
コート越しにも関わらず籐矢の体温が強く感じられる。
「俺だって相手が夏美じゃなかったらもっとあったかくなるぜ〜」
「"夏美じゃなかったら"じゃなくて"綾だったら"の間違いだろ」校門での事が引っかかっている籐矢は容赦なく突っ込む。
勇人の頬が赤みを増すのを見て夏美は「勇人も湯たんぽになったぁ〜〜」
そう言いながら勇人の右肘をひっ捕まえ右手に籐矢、左手に勇人を引き連れる。
一行は風邪を引いて寝込んでいる綾を見舞う為に樋口家に歩を進めている。