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あまりにも突然の事だったので今現在の自分の状況が呑み込めない。
激しく後頭部を強打したようだ。
薄く目を開くと天井から漏れる光が飛び込んできた。
誰かか遠退いていく気配。
横たわっている体を起こして強打した後頭部に手を遣る。
どうやら瘤にはなっていないようだ。
(俺、何してたんだっけ?)
手を右前頭部に移してくしゃっと髪を軽く握る。
(たしか、ナツミを探してたらラミちゃんに絵本読んでやってたのを屋根裏で見つけて・・・)
段々と記憶が戻って行く。
(いつの間にか眠っちまったんだな、俺。じゃあさっきの気配はナツミか。)
立ち上がり伸びを一つ。あくびをしつつ階段を下りると
「!!ハヤト、ナツミが凄い形相で飛び出して行ったけど何かあったの?」
と、クラレットが階段の下からハヤトを見上げて問いかける。
「・・・?これといって別に何も」
言いながら階段を下り終わりクラレットの隣に並ぶ。
クラレットは不信な顔をハヤトに向け問う。
「屋根裏で何か変な事したんじゃないの?」
「なんだよ、変な事って?」
ハヤトの問いに思わず顔を赤くするクラレット。
真面目で純粋なクラレットをからかう絶好の機会をハヤトは逃さずに
「何赤くなってんだよ!?見かけによらずやらしいなクラレット。」
ニヤリと笑みを浮かべながら突っ込んで来るハヤトにクラレットは
「―もうっ!!何でもいいからナツミ追いかけて下さい!!」
ハヤトを玄関の方向へ追い遣ろうとする。
「何で俺が追いかけなきゃなんないんだ?」
と、主張するハヤトにクラレットは呪文の詠唱を始める。
「わー!!分った分った行くからタクェシーは勘弁してくれ〜!!」
ハヤトは言うが早くナツミを目指して走り出した。

夢中で南スラムの外まで全力疾走して後ろを振り向きクラレットが追いかけて来ていないか確認する。
勿論そんな気配はなかった。
胸を撫で下ろしズボンのポケットに手を突っ込みながら歩き出す。
(うぉ〜いい天気ぃー)
そんな事を考えながら空を見上げる。
先ほど見た白昼夢を思い出す。
(そういや、こうやって歩くの何度も注意されたっけな)
ドン!!
「いたたた・・・アンタどこに目ぇつけてんの!?」
「わ、悪ぃ・・・」
商店街に差し掛かった所でこの間ナツミが激突した少女に今度はハヤトが衝突した。
「って、こんな事してる場合じゃなかった!!」
あっという間に少女は去っていった。
「・・・・・ん?お守り?」
手作りらしいお守りが落ちている。
ハヤトは二度会ったのだからもう一回会うだろうとそれを拾い預かっておく事にして再び歩き出した。

「お、リプレ!!」
見知った三つ編みの少女の後姿に話しかける。
「ハヤト。ナツミどうしたの?明らかに機嫌悪かったケド。」
「ん?会ったの?」
「会ったも何もほら、あれ。」
リプレの指差した方向にナツミの後姿を認める。
「原因つき止めて来る。」
リプレに手を軽く一上げしながら笑みを残してナツミに駆け寄るハヤト。
「ナッツミちゃん!!」
後ろから呼びかけられたナツミは声の主がハヤトと知ってか大げさに肩が跳ね上がる。
「何驚いてんだよ。」
ハヤトの問いには答えず歩みを速める。
「あ、おい!待てって。」
ナツミは速度を緩めない。
ハヤトはナツミの前に回り込んで彼女の歩みを止める。
ナツミはハヤトと目が合うと顔まで背けて視線を外した。
前評判とは違い怒っているというより困惑している感じだった。
「悪かったな。」
「何が?」
機嫌の悪そうなトーン。
「重いよなぁ。脚痺れただろ?」
「別に。」
顔を逸らしたままの返答。
「なら、いきなり人の頭床に落とすなよぉ!記憶がぶっ飛ぶかとおもったぞ?」
人の気も知らずに明るくいつも通りに話しかけてくるハヤトに対してナツミはワナワナと握り拳を更に握りしめやっとのことで言葉を紡ぐ。
「〜〜ぶっ飛んだほうがいいんじゃないの?」
「へ?」
素っ頓狂なハヤトの返事にナツミは険しい顔を向け叫ぶ。
「女の子の膝枕で寝ながら幸せそうな顔で男の名前呼んじゃうような人間の記憶なんてぶっ飛んだほうがいいっつってんのよ!!」
「ゲ。俺寝言言ってたの?」
ハヤトには珍しく赤面している。
それがまたナツミの気に障った。
「なぁにっ赤くなってんのよっ気持ち悪いわね〜〜〜バカーーー!」
ポカポカとハヤトの胸板を両手で叩く。
気が立っている為力が込められており結構痛い。
「イタッ痛ぇよっナツミっ」
ハヤトはナツミの両手首を捕らえ落ち着かせようとするが尚も暴れようとするので仕方なくナツミの唇を自分のそれで塞いだ。
ハヤトに両手を拘束されたいる為突き飛ばせないナツミは塞がれながらもモゴモゴと何か言おうとしている。
「お前なぁ、キスしてる時はしゃべんな!舌入れるぞ!!」
「こんなんで騙されないわよっつったの!!!バーカ」
ハヤトの足をおもいっきり踏みつけて怯んだ隙に両手を振り払う。
「いっ!ってぇ〜〜何しやがんだ!?」
「だから!それはコッチの台詞!!なんなのよ!『トウヤ』って!?付き合ってんの?あんたの彼氏な訳?!」
ナツミの言っている事を一瞬かかって理解する。
「・・・憶えてねぇの?『トウヤ』の事。」
「はぁ?うちのクラスに同じ名前の人いるけど、あんたの彼氏って、もしかして深崎君なの!?」
「そうそう、深崎籐矢だよ!!憶えてねぇの?」
「ふ、深崎君モテるのに彼女いなかったのは彼氏がいたからなの・・・?」
全く会話が咬み合っていない二人。
「お、おねえさん方?」
「あ、カノン?」
話かけられて振り向くと声の主ではない人影の方が先に目に入った。
「てめぇら・・・何、人の縄張りでいちゃついてやがんだ!?」
「いちゃついてなんかいないわよ!!喧嘩してんの!!!」
「何処がいちゃついてるってんだよ。」
バノッサの気持ちを知ってか知らずか(おそらく後記)しれっと優越そうな顔で答えるハヤト。
「逃がしてくれるって言ってるんですよ」
カノンはバノッサとハヤト達の間に入り小声でナツミに囁く。
「そう言ってる風にはみえないケド?」
「同感。」
間。
「いいから。はやくどっか行って下さい。」
そう言ったカノンから恐ろしい気を感じ動きが止まるハヤトとナツミ。
「わぁー!!てめぇら、早く言うと通りにしやがれ!!」
バノッサにそう言われてハヤトとナツミは全力疾走でその場を後にした。

ハヤトとナツミはアルク川の辺に辿り着いた。
いい具合の斜面、草原の上に二人で寝そべる。
「で。お前なんで怒ってたんだっけ?」
隣のナツミに顔を向けながら話しかける。
「人の膝使っといて『トウヤ』とか言うから!!」
ナツミは正面つまり空を見つめながら答える。
「お前マジで憶えてねぇの??」
「もうっさっきから何の事を憶えてないってーのよ。」
上半身だけ起こして上からハヤトを見下ろす。
ハヤトはナツミから視線を空へ移す。
晴れ渡った空はほんのりオレンジ色に変わっている。
「保育園の時の夢みてたんだよ。」
話し出したハヤトの真剣な表情にナツミは何も言えず次の言葉を待つ。
「いつも不思議に思ってたんだ。俺と喧嘩した子を『トウヤ』が何処かに連れていったかと思うと次現れた時にはケロッとしてんだその子。」
にこやかな表情で一回ナツミに視線を遣り再び空をみつめる。
「で、年中さんの時『トウヤ』が家の都合で保育園辞めたんだ。」
ナツミは自分の膝を抱え体育館座りをしながら顔はハヤトに向けている。
「『トウヤ』が来る最後の日もいつもの如く俺と喧嘩したその子をいつもの如く『トウヤ』は連れ出したんで俺は後を着けた。『トウヤ』はその子の頭を撫でながら「なつみちゃんきょうでさいごだから」っつって口にキスしてた。」
チロっとナツミに目を遣ると面白いくらいに顔が真っ赤に茹で上がっている。
「違うの!!いつもはおでこにチューだったの!毎回してたわけじゃ―」
「なんだよ。憶えてんじゃねーか。」
ナツミの言い訳を遮りハヤトが口を挟む。
「・・・名前は憶えてなかった」
ハヤトの突っ込みにナツミはバツが悪そうにぼそりと口を開く。
「はぁ?あんな仲良かったのに?」
「あたしの保育園の思い出はハヤトとじゃれ合ってた記憶しかないのよ!!仲良かったっていってもハヤトと喧嘩した時くらいしか話した事もなかったし」
段々と語尾が小さくなっているナツミ。
「トウヤが聞いたら泣くぞ」
「そっかぁ〜あの子トウヤくんっていうのかぁ」
熱った頬を両手で覆う。
「そ。お前と同じクラスの深崎籐矢。」
ナツミの動きが止まる。
「うっ、そぉぉぉぉぉ!!!」
ハヤトに向かって叫ぶ。
「嘘いってどうすんだよ。同じクラスなんだろ?トウヤと。」
「き、きっと同姓同名の別人―」
「な、訳あるか。あんな珍しい名前。しかも俺トウヤと中学一緒だったんで奴がお前と同じ高校に入学したの知ってるし。」
ナツミらしからぬ狼狽の仕方にハヤトは無性に意地悪したくなった。
「オイ。女みたいで気持ち悪ぃぞナツミ。」
「ど、どういう意味!?あたし女の子なんですけど!?」
ハヤトは立ち上がり服に付いた草を掃いナツミに顔だけ向けて
「みえない。つーか感じない。」
「こんなにかわいらしいナツミさんを掴まえて何言うか!?」
ナツミも立ち上がりハヤトに詰め寄る。
「キスされてんのに目は瞑らないはしゃべり出すはムードのヘッタクレも無ぇじゃねぇか。」
人差し指でナツミのおでこを小突く。
「あんたが男じゃないんじゃないの?」
ナツミも負けずに言い返す。
「なんだと!?こんなに男らしいハヤト様を掴まえて何て事言いやがる!?」
「バーカ!!」
と、言い捨てて走り出すナツミ。
「コノっ待ちやがれ!!」
(―俺じゃトウヤみたいにはいかねーな。)
苦笑を浮かべそんな事を思いながらナツミを追いかける為ハヤトも走り出した。






えー・・・ハヤトとナツミのチューが書きたくて書き始めました。
なのでトウヤとアヤはフラットにいません。
でもトウナツをきちんと(?)押さえているあたりみなもらしいかな、と。
ああ、これでまた新しい設定を作ってしまった・・・