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「橋本さん、またお願い出来るかな?」
いつもの放課後いつものセリフ。
始まりは一ヶ月前。
見てはいけないものを見てしまったことから始まった。
「またぁ!?もうすぐ冬休みなんだからそれまで待てないの?」
「僕もそう思っていたんだけど・・・昨日迎えに来ちゃってさ。」
いかにも困っています、といった表情を浮かべてはいるがちっとも困っていないのが伝わってくる。
「進級出来なくなっても知らないんだから!!」
「いやだなぁ、誰に向って言っているの?出席日数さえクリアすれば余裕だよ?」
悪びれもせず、さもあたり前とでも言わんばかりの籐矢の態度に夏美も怒る気が失せる。
「なんか癇に障るわね、その言い方。」
「とにかく僕があっちに行ってる間の授業のノート頼みます!」
わざわざ自分に頼む事ないのに、と思いつつ彼の頼みをいつも彼女は承諾する。
「ありがとう!愛してるよ、ナツミ」
いつもの様に夏美の耳元で囁き、いつもの様に夏美のスポーツバックの襲撃をひらりとかわし教室を出て行こうとしたが何かを思い出したのか立ち止まって
「そうだ!橋本さん、今日家に寄ってくれる?会いたいって言ってたからさ。部活終わったら校門の所で待ってて。」
夏美の返事も聞かずに、じゃ校門でね!と言い残し去る籐矢。


今をさかのぼる事約一ヶ月前。
放課後の教室で籐矢と夏美二人で話しをしている最中に彼は現れた。


「ごめん、待った?」
いつもの様に待たされいいかげん寒さの限界だった夏美は
「待った!!」
と叫びながら冷えきった手のひらを籐矢の頬に押し当てた。
待たせちゃ悪いと、走って校門にやって来た籐矢には夏美が感じているそれよりも彼女の手が冷え切っていると感じた。
自分の頬に当てられている手を思わず握る。
「ごめんね。」
いつもの小ばかにした様な反応でなく紳士的に謝罪してきたので夏美は調子が狂い、黙り込んでしまった。
「じゃ、いこっか。」
にこっと笑って夏美の手を握ったまま歩き出す籐矢。
「え?ちょ、ちょっと放してよ。」
「ソルのじゃなくてご不満だろうけどカイロ代わりにつかってよ、僕の手。」
「なんでソルがでてくんの?」
「だって、あーゆう顔タイプだっていってただろ?」
そんな事いったっけ??眉間に皺を寄せ記憶を辿る夏美。
そういえば初めて会った時そんな事いったような・・・
「!!あれはね、キミに気を使っていったの!なんかすごい責任感じてるみたいだったから・・・」
「でもタイプなんだろ?」
「・・・まぁ、ねぇ。」
お互い顔を見合わせる。
「嘘でもいいから違うって言って欲しかった。」
籐矢が溜め息混じりにそう呟いたきり二人は黙ったまま歩き続けた。
籐矢の家に着くと気まづそうに玄関の前に立ち尽くしている籐矢をけげんにおもい声を掛ける夏美。
「なに、なに、どうしたの?入んないの??」
「入るよ?」
と、言ったものの依然として入ろうとする気配がない。そうこうしているうちに内から玄関の戸が開いた。
「なにやってんだよ、トウヤって、ナツミ!?」
自分で呼んどいて何驚いてんだろ。と、疑問におもう夏美を他所に慌て出した籐矢はソルに跳びかかった。
「いやだなぁ、ソル!わざわざお出迎えしてくれちゃって!!」
「はぁ!?何言ってんだ、おま―」
ソルの口を手で塞ぎ玄関の中に引きずり込み、夏美を家の中に誘う 籐矢の不審な行動をいかぶしくおおもったが彼女は誘われるまま彼に続いた。
夏美をリビングに案内し、ソルを引きずって台所までいき、其処でやっと解放した。
「どういうつもりだよ!?トウヤ!!」
「そう睨むなって。キミが会いたがってる事にして連れて来たからそこんとこ宜しく。」
言いながらお茶の用意をする籐矢。
「紅茶でいいだろ?ダージリンとアップルどっちがいい?」
「話しを逸らすな!!」
「別に逸らしちゃいないよ。どっちがいいんだよ?」
「アップル!!」
フッと笑って言うと思った。と付け加える籐矢。
ソルがこちらの世界に来て初めて口にしたのがりんご紅茶という缶ジュースでその香りの良さに心酔してしまっていたのだ。
籐矢はそれを薦めた人物が夏美だったからこれほと気に入ったのではないかと、深読みしていたりする。
「それはそうと、トウヤお前さっきドサクサに紛れてナツミの手握ってたな。」
「初対面でいきなり抱きついたソルに言われたくないなぁ。」
沈黙。何とも言えない空気が流れる。
「まだ怒ってんのかよ。本人が気にしないでいいっつってんのにっ!」
「怒ってはいないよ。ただ―」
―嫉妬しているだけ。
そう心の中で呟いたが、そういえば自分も初対面に等しい時彼女の肩を借りて大泣きしたな、と思い出しみるみる顔が紅潮してきた。
「?何紅くなってんだ??」
聞いてくるソルを無視して茶器を夏美のいるリビングへ運ぶ籐矢の態度に少々ムッとしつつもソルは彼の後に続いた。
「あ、いい匂いv」
「寒くないかい?」
聞きながらカップに紅茶を注ぐ籐矢。
「うん、平気だよ。いただきま〜すvv」
素早く最初に注がれたカップを手に取りまさしく口を付けようとしたその瞬間、夏美の携帯が鳴った。
「もう、何?うるさいなぁ―!?」
一口も中身を口にしないままカップはもとの場所に戻され
自分の携帯を検めて硬直する夏美。
携帯は鳴り続けている。
「でないの??」
籐矢の問いで我に返った夏美は意を決っして通話ボタンを押した。
「こんな時間まで何やってるんだぁぁぁ〜〜〜!!!??」
受話器越しだというのに通話相手の声が籐矢とソルにも確認できた。
夏美は携帯をブチ切って電源をも切って何事も無かったかの様に先ほどお預けとなった紅茶を楽しんでいる。
「は、橋本さん?」
「何?」
「さっきの電話はいいの?」
夏美の尋常ではない対応に不審を抱いた籐矢は恐る恐る質問してみた。
「いいの、いいの。うっかり電源切るの忘れてただけだから。」
にかっと笑ってはいるものの心ここに有らずな感じをかもし出している夏美。
「用があるなら早く帰れよ。」
「何よ、自分で呼んどいて!!と、言いたい所だけど、ソルがそう言ってくれるんなら帰らせてもらうね。」
すくっと立ち上がって玄関に向う夏美。
籐矢は夏美の後を追う。
「ごめん、用があるなら言ってくれれば良かったのに。」
「人の返事を聞かずに去ってったのは誰?」
「・・・僕です。」
籐矢のしょぼくれた反応に満足したかの様に夏美は明るく
「別にね、約束が入ってた訳じゃないのよ。だから気にしないで。」
と、言って靴を履いた。
「それに、少しでも一緒に居たかったし。」
籐矢に背を向け独り言をボソッと言う夏美。
「え?」
「じゃね、ご馳走様でした!!」
スチャっと片手を挙げて出て行こうとする夏美。
「あ、送っていくよ。」
「いーのいーの。はやくあっちに行ってあげて?仲間が待ってるんでしょ?」
「それとこれとは話が別だよ。もう暗いし。自転車の鍵持ってくるからちょっと待ってて。」
急いで二階の自室から鍵を持ち出し、リビングにいるソルに一言。
「夏美送ってくるから」
言うが早く玄関に向う籐矢の背中に
「早く帰ってこいよ!!今日中じゃないと意味ないんだからな!!」
と、叫んだソルだか籐矢は夏美と共に既に玄関をでた後だった。
「文句言われんのは俺なんだぞ・・・」
独り言とは裏腹に仕方ないな、といった表情で窓から覗く月を見上げた。

「ねぇ、ソルこそなんか用事があってキミのこと迎えに来たんじゃないの?」
籐矢の自転車の後ろに立ち乗りしている夏美。
「・・・らしいんだけど理由言わないんだよ。」
「今日中だとかさっきいってたじゃん、いつ迎えにきたの?」
「昨日の夕方。でも、今日の選択授業休むわけにいかなかったから一日待つようにやっと説得したんだよ」
本当に苦労したらしいのがひしひしと夏美にも伝わってくるような言い回しだった。
「じゃあソルは一刻も早く帰りたかったんじゃないの?」
「だろうね」
「じゃあなんであたしなんかに会いたいとか言ったのかな?それだけ帰るの遅くなっちゃうじゃないねぇ」
ソルが会いたがっていたのではない、とは言えないのでとりあえず「そだね」とだけ言ってペダルを漕ぐ足に力を入れた。

夏美の家付近に差し掛かった時
「この辺でいいから、籐矢君」
「ここまで来たんだから家まで送るよ」
「お願い!今日はこの辺で降ろして!!」
夏美が其処までいうので自転車を停める籐矢。
「ありがと」
自転車から飛び降りて笑顔で御礼を述べる夏美につられて籐矢もにこっと顔を綻ばせる。お互相手が去るのを見送りたいのかその場を動こうとしない。
「ほら、ソルが首を長くして待ってるんだから速く帰った帰った」
籐矢の肩を軽く叩いて速く帰る様に促す夏美。
「否、何があるか分からないからキミが家に入るの見届けてから帰るよ」
という籐矢の言葉に夏美は大きく頭を振って
「とんでもない!!男の子に送ってもらったのがバレたら殺される!」
籐矢に言うというより独り言の如く言う夏美。「殺される」という尋常ではない単語に驚き聞き返そうとする籐矢。
「!?コロ―?」
籐矢が言い終わらないうちに夏美は
「ホントに送ってくれてありがとね、ノートちゃんと取っとくから!!」
そう言って逃げるように走り去っていった。
暫らく呆然としていた籐矢だが徐に携帯電話を取り出しボタンを押した。

籐矢から逃げるように走って自宅の前まで来た夏美は案の定家の前で仁王立ちしている人物を見て心底籐矢に家まで送ってもらわなくて良かったと安堵した。
「だだいま〜」
エヘラっと作り笑いを浮かべて玄関のノブにてをかける夏美。
「遅い!!」
にべも無く怒鳴られて自分に多少の非がある夏美は縮こまるしかなかった。
「携帯の電源まで切りやがって、まさか男と会ってたんじゃないだろうなぁ?あぁ??」
「そんなんじゃありません!」
フテ腐れたように言い、家に入る夏美。
「何があるかわかんねーんだから携帯の電源は常にいれとけよ!」
「はいはい、わかりました!」
携帯を取りだし電源を入れた瞬間夏美の携帯が鳴り出した。
「誰だ!?」
夏美の携帯を取上げようとした瞬間
「関係ないでしょ!!」
そう言われて夏美の強烈な蹴りを腹部に受けその場に崩れ落ちる。

「あ、深崎ですけど、無事に着いたかい?」
「心配性だなぁ、平気だよ?」
「そっか、これで安心して帰れるよ。じゃ、ノート宜しくお願いするね。」
「かしこまり〜気を付けてね〜」

ツーツーツー

(橋本さん・・・僕の事嫌いなのかな・・・?)
と、籐矢が思うくらいソッコーで電話を切った夏美は着代える為に二階の自室に向った。

籐矢が自宅に戻るとソルが準備万端待ち構えていた。
「ん、何沈んでるんだ??」
「否、別に・・・」
明らかに元気がなくなっている籐矢だが、今は一刻も早く籐矢をリィンバウムに連れて還えるのがソルの任務なのでそれ以上は踏み込まない事にしてリィンバウムに向った。

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