| (こんな寒い日に、外でバイトかよ。)
今日はクリスマスイブ。
豊がバイトする繁華街のコンビニ周辺は、23時を回ったというのにまだまだ人通りが多い。
色とりどりのイルミネーションに照らされたカップル達の笑顔は、
吐く息の白さが語る空気の冷たさを感じさせないくらい暖かい。
クリスマスなどという仏教の国に似合わない宗教行事のせいで、
豊はサンタクロースの格好をして、外でホールケーキを売る羽目になっていた。
だいたい、コンビニのケーキなんか売れるはずないんだ。
ちゃんとしたケーキ屋のおいしいケーキが、こんなにも出回っている時期に。
それを分かっていて売らなくてはならないこの立場。
24日に働くのなんて今年に限ったことじゃないからいいとして、
カップルを見ながら、カップルの為に、しかもこの寒空の中ケーキを売るのは
あまりにも惨めだ。
「いらっしゃいませ!クリスマスケーキはいかがですか!?」
寒さと長時間労働で震える紫な唇で客を呼び込む。
掠れ気味な声と一緒に白い気体が喉から空気の中に溶け込んでいく。
「あの、・・・・」
何時間かぶりに聞く、自分に向けられた声。
ようやく客だ。
顔を声の方へ向けると、そこには白いコートがよく似合った、かわいらしい女性が立っていた。
寒そうに手を擦り合わせながら、彼女は、ケーキではなく、豊の方をじっと見つめている。
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