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崩壊の足音2

 

 

 

 「あぁ、そこ。うん、そうそう。・・・・・じゃ、次は机拭いて。」

 

店のカウンターの中で、輝はホスト達に指示を出す。

ここ最近光の不在で、店を仕切るのはナンバー2の輝の役目になっていた。

「はぁぁ・・・・」

輝はカウンターに肘をつき、深くため息をついた。

 

「・・・光さんたら・・・涼子って人のことになると、どうしていつもああなんだろう。
・・・・そんなに美人なのかなぁ・・・・」

 

誰にともなく呟いた独り言に、横でグラスを拭いていた薫は返事を返す。

 

「恋は盲目、なんじゃないか?光さんに限ってそれはないと思ってたけどさ。」

「恋かぁ・・・」

「ああ。やっぱさ、この女だ!って思ったら、人間、突っ走るもんよ。
どんな女にも優しいサイボーグ光も、やっぱ人だったってわけだな〜。ん〜意外っ!」

 

 

「・・・今頃どこにいるんだろ・・・・」

 

「気にするなって!その涼子って女と仲良く仲良く熱〜い夜をお過ごしさ!
光さんの恋の為に、俺らは今日も、店を守っていこうじゃないの!・・・・って、
なんで俺がお前を励まさなきゃなんないの?立場逆じゃん、ナンバー2さんよ??」

薫はグラスを拭き終えて、一旦カウンターの奥に消えていき、

しばらくしてコーヒーを二つ持って帰ってきた。

「ほらよ」

「さんきゅー・・・・」

薫も輝の横に座り、斜め45度上の空を見つめながらコーヒーをすする。

 

 

「お前の大好きな光さんがいなくて、心細いのは分かるけどさ〜。
でも今は、由宇さんっていう頼れる人がいるじゃんか。
・・・・ママだかオーナーだか知らないけどさ、由宇さんがつれてこられた理由って、
案外こういうことだったのかもよ?」

 

「こういうことって?」

「光さんの代わり・・・・ってこと。主任の役割果たさない主任は
いらないでしょ?」

「・・・主任は光さん以外にいないよ。」

むっとして輝は薫を睨めつける。

「ま、俺もそう思うけどさ。・・・でも最近はけっこう、由宇さんの方が・・・
って言う奴らもいるみたいだぜ?」

 

「・・・・」

確かに今の光と比べて、女性人気も高く落ち着きもあり、

統率力もある由宇は、上にたつ者として

相応しいのかもしれなかった。

この上、ホスト達の信頼も得ているというのであれば、

主任交代の噂が流れるのも仕方のないことなのかもしれなかった。

 

「ま、でも当分はまだ大丈夫なんじゃないの?いくら由宇さんがすごくっても、
まだ1ヶ月もたってないんだし?」

 

「・・・うん・・・・」

「光さんだってそのうち頭冷やして戻ってくるって。・・・・で、
由宇さんの方は、今日は??」

「あ〜・・・急遽、休み。用事ができたとかで今日は来れないって。
さっき電話あった。」

「ドタキャン?・・・・こっりゃ、やっぱ当分は代替わりなしだな〜」

 

 

 

空になった紙コップを握りつぶし、薫は勢いよく立ち上がった。

「んじゃ、今日は二人の代わりをみんなで頑張りますか!」

薫を見上げつつ、ようやく輝も笑顔をみせる。

 

「そうだな。・・・さんきゅ、薫」

「おうよっ!同期のよしみ、さ」

story by さし美嬢

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