18

崩壊の足音4

 

 

 

 

「光・・・・光・・・・!!大丈夫か??!」

 

 

 

どこかで聞いたことのある声が、自分を呼んだ。

 

ゆっくりと瞼を押し上げると、黄色い閃光が瞳を射抜く。

 

 

「・・・・・・ん・・・」

 

 

半分だけ開いた瞼を、人の気配がする方向へかたむける。

 

 

 

「・・・光?」

 

「・・・由宇?!」

 

 

 

 

ぼんやりと見えるその姿は、ベージュのニットに黒のジャケットを羽織り、

細身のブラックジーンズを履いた、男の姿。

見慣れない格好とはいえ、そのタイトなルックスには見覚えがあった。

 

 

「光・・・こんなとこで何してんだ??」

 

「・・・え・・」

 

 

ようやく光に慣れてきた目で周りを見渡すと、

澄んだ早朝の空気の中に、緑の葉の間から零れる薄いクリーム色の日光が、

冷たい黄土色の地面をちらちらと照らしているのが眼に入った。

辺りに人気はなく、さわさわと微かな風に木の葉の揺れる音がする。

 

・・・ここは、公園?

 

自分は、ベンチの上に横たわっているようだ。ゆっくりと起きあがって辺りを見回す。

地面には茶色の葉が折り重なり、朝露が表面を包んでいる。

冷たい風がひょう、と音をさせて吹き抜けた。

状況が飲み込めない。

と、頭の上から、大げさなため息が降ってきた。

 

 

「お前・・・。仮にもホストが、公園のベンチに寝てるんじゃないよ。

ナンバーワンの自覚、持たなきゃだめじゃないか」

 

 

「あ・・・あぁ・・」

 

 

「酒にでも呑まれたんだろ?ザルにも限界はあるみたいだね」

 

「・・・?俺・・・何して・・・・、・・・・・!!!!!」

 

そこでようやく昨日(もしくは数時間前)の記憶が光に戻ってきた。

 

「涼子!!涼子は!?涼子はどこだ???!!!」

 

「は?涼子??」

 

光は慌てて立ち上がった。そしてもう一度辺りを見回す。

 

「涼子ーーーーっっっ!!」

 

 

「・・・って最近お前が熱入れてる女のことか?」

 

 

由宇の質問には答えず、光は由宇の横をすり抜け、公園の門に向かって走り出した。

 

 

その背中に向かって由宇は叫ぶ。

 

「光!!・・・図書館はまだ開いてないぞ!!」

 

その声に光ははたと立ち止まる。

ゆっくりと由宇が歩いて、光に近づいていく。

「今6時。開いてるわけないだろ。・・・何があったか知らないけどさ、

とりあえず落ち着けって」

 

 

塗れた葉を踏みしめる音に光は振り返らず、ぼそりと言った。

 

 

 

 

 

「帰る」

 

 

 

 

 

「そうか」

 

ゆっくりと二人は公園の門を出た。

story by + さし美

>>

logtop