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歓楽街の聖母1

 

 

 

「ちょっとぉ。そこ。ほらぁ。ちゃんとお客様にサービスしてぇ。」

 

 

暗闇が世界を支配する深夜、所々に妖しげな明かりが燈る、そんな街角の一角。

 

 

そう。

あのClub−star−voiceの隣にひっそりとたつ、あのお店。

 

 

店内を忙しそうに歩き回り、美しい従業員たちに声をかけているのはマリーだ。

 

 

「まったく、最近忙しくてやんなっちゃうわぁ。お隣に遊びに行く暇もないじゃない…。」

 

 

と、独り言がマリーの口から洩れる。

 

「光ちゃんたち、元気かしら…。」

 

煙草の煙を燻らせながら、マリーはここ最近ずっと感じている、言いようのない不安感を
無理やり拭い去ろうとしていた。

彼らとこんなに長い間会えなかったことはない。

 

 

 

 

 

―私がただ忙しいだけ…?ううん、違うわ。きっと彼らの身に何かが起こったんだわ―

 

 

 

 

 

 

マリーは意を決して、自分のお店をなんとか他の子達に任せ、
隣の店のドアをゆっくりと開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オーナー、久しぶりぃ。ねぇ、光ちゃん呼んでくれるぅ?
それとも指名でいっぱいかしらぁ?」

 

 

「今日は休んでるんだ。なんか頭痛が酷いらしくて。
あいつも年かな?酒が抜けにくくなってるんだろ。」

 

 

「そう、頭痛ねぇ。
・・・・私にまでウソつくの?長い付き合いなのよ、わかるわよ。」

 

 

 

 

 

「・・・・そうだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閉じた瞳の前が痛い。

瞳を開けると、暗闇でマナーにしてる携帯が光っている。

 

 

・・・マリー?

 

 

 

「・・・はい。」

瞳を閉じたまま、掠れた声を絞り出す。いつもの声が出ない。

 

 

「もしぃもしぃ〜。ど〜したの?寝てたぁ?
いつもの光ちゃんじゃないじゃな〜いのぅ。」

 

 

 

 

 

 

プロ失格だな、俺。・・・って今更か。

 

 

 

 

「ああ、マリー。ごめん、最近店に行けなくてさ。」

「・・・顔出してないのは、私の店だけ?」

「何言って、」

「近くまで来てるのよぅ。顔見せなさいよぅ。」

「マリー、俺・・・」

「待って、光ちゃん。なんだか深刻そうな雰囲気じゃない。実際に会ってお話しましょう。
 その方がきっといいわ。今日はアタシのお・ご・り」

「……マリー、なんだか…」

「なぁに?」

 

「聖母のようだな」

 

 

「やぁだ!アタシはただのオカマよぅ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マリーが指定したのは彼、もとい彼女のニューハーフ仲間が経営する女装サロンだった。

 

受付でマリーの名前を出すと、白シャツに蝶ネクタイの女性スタッフが奥へ案内してくれた。

女性スタッフに案内されるままに、薄暗い店内の最も奥にある薄い天幕をかきあげる。

 

 

 

「あらぁ、遅かったじゃなぁい。光ちゃぁん」

 

 

 

そこには、今夜も入念なメイクが美しいマリーの姿があった。

「あら、ちょっとぉ、ここは女装サロンよぉ。光ちゃんもちゃんと女装してくれなきゃぁ」

そんな冗談を言いつつも、彼女(彼??)は光を気遣うように、自分の隣へと誘った。

 

 

 

 

「何があったのよぉ」

 

人払いをし、二人きりになると、マリーは静かに光に尋ねた。

「実は・・・」

しばしの沈黙の後、光は重い口を開いた。

マリーなら、自分の苦しみを受け止めてくれる、そんな気がしていた。

 

「実は、何?」

「いや、・・・・・最近ホント頭痛が酷くてさ。眠れないんだよ〜。
どうしたんだろうな〜。なんかさ、睡眠薬ってのも、どうかなっておもうんだけど、
眠れなくてクマとかつくっちゃうと、ほら、商売になんないから。」

「・・・光ちゃん、」

マリーは、ふっとほほえむと俺の手を二度ほど優しくたたいた。

「さ、ここがどういう場所かわかってるでしょぉ?
ふふっ☆覚悟なさ〜いっ。楽しみだわ〜ん。」

「や、それは・・・。」

「逃げられないわよ〜ん。んふふっ。」


 

 

 

 

 

・・・・・ありがとな、マリー。

 

 

 

 

 

story by 美詩夜 + 光 +yukio

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