マダム=リィの独り言

窓の外では、きらびやかなネオンが眠らない通りを彩っている。


ママは、指の間で燻らせていた煙草をひとくち吸うと、傍にあるクリスタルの灰皿にそれを押し付けた。

ゆっくりと紫煙を吐きながら、その吸い込まれていく先を見つめる。

11月の寒さにも構わず、開け放した窓の外に広がる風景は、あの頃と何も変わってはいない。

 

光を拾った、あの頃。

 

ママは、銀色のシガレットケースからまた新しく一本取り出すと、それを咥え、火を付けた。

あの子に煙草の付け方を教えたのも、女の扱い方を教えたのも、みんな私。

それを。

自嘲気味に口を歪め、再び紫煙を吐く。

私と夫が手塩にかけて育て上げたというのに、まあ、いい恥をかかせてくれる。

正直、初めて光を見たとき、これは必ず物になると、夫と共に長年の感が働いた。

敢えて周囲に埋没しようとするかのような表情のうちに、人を寄せ付けない、それでいて人を魅了する瞳を持った少年だった。

しかし、その光りの使い方を知らず、その輝きも知らなければ意味が無い。

何も知らない少年だったのに。

ママは、クッ、とひとつ笑うと煙草を咥えなおし唇を吊り上げた。

「面白いじゃないの、私達を裏切ろうなんて。まあ、なんて大きくなったこと。でもね、」

赤く紅を引いた唇から薄く煙を吐き出すと、目を細めて眼下のネオン街に意識を落とした。

「ママを甘く見たら痛い目を見ますよ。お仕置きを覚悟してらっしゃいね。」

色とりどりのネオンが威圧するように裏通りを覆って、眩しいほどに光を放つ。

何も見えない、果てしない闇のような夜空に、煙は吸い込まれ、消えていった。

 

story by ヤスコ=コッティ=ジョセフィーヌ

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