~君が望む永遠 another short story~

 

想い <

 

「おにいちゃんっ! お姉ちゃんが大変なの 早くきてっ!」

「…………  まーたその手か そう何回も俺がだまされると思ってるのか?」

「もぅ、ほんとだよっ ホントにおねえちゃんがっ」

「なんだよ」

「えーっと……」

「…………」

「おばあちゃんちに行った」

「あっそ それじゃ切るよ、茜ちゃん」

「あ、お兄ちゃん ねー あそぼおよぉ」

「あのね、茜くん ワタシはれっきとした受験生なのだよ わかる?」

「へーんだ。少し前からようやく勉強はじめたくせにー」

「…………」

「お兄ちゃん、今日くらいいいじゃん ね? ね? 遊ぼうよ」

「うーん……」

「もー 決断力ないんだからー ほら、早く決心するっ 茜ちゃんと遊びますか? 3・21 はいっ」

「わかったわかった 今日は一日茜ちゃんと遊んであげましょうかね」

「ホント? わーい じゃあー、30分後に駅で待ち合わせね」

「え? どこ行くの?」

「えへへー それは秘密だよぉ じゃね」

 

はぁ……

茜はため息をついた。公衆電話のボックスから出ると、鋭い日差しが突き刺さった

はぁ……

うそ、ついちゃったな

でも、きっとすぐお姉ちゃんにばれちゃうだろうな

お姉ちゃん、お兄ちゃんのことになると本気だからなぁ

お兄ちゃんに口止めしとかないと、ホントに大変なことになっちゃうかも

でもね、お姉ちゃん

今日は…

今日は、私にお兄ちゃん貸してくれないかな

何も知らずに家にいるであろう遥のことが気にかかったが、それでも今日はお兄ちゃんと一緒にいたかった

自分の気持ちを整理する、ちょっとしたきっかけがほしかった……

 

「茜ちゃん!  はぁ はぁ 待った?」

「あれー お兄ちゃん、そんなに汗かいて…  もしかして私に早く会いたくてとんできちゃったのぉ?」

「安心しろ、それはない」

「そ、そんなに早口で否定しなくても……」

「それで、どこ行くの?」

「えっとね… 子供っぽいって笑わない? ありきたりだっていわない?」

「言わないよ」

「遊園地………」

「いいよ 行こう 遊園地」

あ…

お兄ちゃん…

そんな顔、しないでほしい

そんなやさしい顔されちゃったら、私、勘違いしちゃうから…

だから……  でも……  ちょっと嬉しい

 

夕闇が迫るころ、茜は観覧車に乗りたいと孝之に言った

茜はあえて、観覧車を最後に残した

これまたお約束ってかんじだけど、むしろそのほうが思い出になりそうな気がした

「わー お兄ちゃん。夕日がすっごくきれいだよ」

「あぁ、きれいだな」

今日、いっぱい楽しい思い出を作れたら、それでじゅうぶんだよ… お兄ちゃん

「ねぇ、うちのほうも見えるかなぁ」

「あぁ、遥の家なら見えるかもなぁ 結構高台にあるし

 って茜ちゃんの家からは観覧車見えるの?」

「…え?あ、うん」

「なら見えるだろ 探そうぜ 遥が見えるかもしれないぞ」

「う、うん」

胸に、なにかがちくりと刺さった それはかすかな痛み でも、たしかにここにある

お兄ちゃん やっぱり、どんなに私と過ごしても、お姉ちゃんのこと、考えてるんだね

やっぱり、お兄ちゃんはお兄ちゃんだね

もちろん…… そんなお兄ちゃんが好きだよ 私は…

 

「茜ちゃん?」

「え?」

「どうした ぼーっとして」

「あ、ううん ちょっと疲れただけだよ」

「あー でも今日は楽しかったよ 茜ちゃん、誘ってくれてありがとな 気分転換できた」

あ、また

「気分転換するほど勉強してないでしょー?」

「てめー」

私ね、お兄ちゃんの無邪気な笑顔見てると、なんだかどきっとするよ

でもね、どきっとするのに、安心するんだぁ

これが すき ってきもち?

あーあ、これでお終いにするつもりだったのになぁ、この気持ち

ますます強くなっちゃったじゃない

お兄ちゃん、責任とってよねー

だからさ、これからも……… 好きでいるね? いいかな…

けっして表現できないこの気持ち

けっして届くことのないこの気持ち

いつかいい思い出になるのかな…

「お兄ちゃん お兄ちゃんは、これからも私のお兄ちゃんだからねっ」

「いきなりどうした?」

「ねっ?」

 

Fin