~Kanon another short story~
ボクの幸せ? <あゆ>
「よぉ、たいやき泥棒」
うしろからあの人の声が聞こえてくる。振り返らなくても、誰だかわかっていた
「泥棒じゃないよ、今日はちゃんとお金はらったもん」
「そんなの全然いばることじゃないぞ」
「うぐぅ… 祐一君はやっぱりいぢわるだよっ!」
祐一君がボクの髪をくしゃくしゃになぜてくる。なんだか少し、心地よかった。でも、
「やめてよ、髪がくずれちゃうよっ!」
「なんだ、これでもちゃんとセットしてたのか? わはははっ」
もうっ 祐一君はいつもこうなんだから
「ゆういちー あゆちゃーん まってよぉー」
後ろから祐一のいとこの名雪が駆けてくる。きれいなロングヘアーがゆれていた
いいなぁ… 何度そのきれいな髪をみてため息をついただろう
でも、ボクの顔にロングヘアーを重ねてイメージしてみると…
まぁいいや。そういえば名雪は、なゆちゃんって呼んでねっ、って言ってくれたけど、
ボクがあゆだから、なんだか呼びにくいんだ
名雪がはぁはぁいいながら追いついた
「ひどいよ祐一、おいて行くなんて! あ、あゆちゃん、久しぶりだねー」
「うん、名雪ちゃん、たいやき食べない?」
ボクは抱えていたたいやきの包みを差し出した
「いいの? やったぁ いただきまーす」
「おいっ、俺にはなにも言わなかったじゃないか」
祐一が叫ぶようにいった
「だっていぢわるなんだもん…」
結局持っていた3匹のたいやきは、一人一匹ずつ食べることになった。なんだか、いつもよりおいしかった
「えへへ、なんだか楽しいね」
「あゆちゃん、今度お礼にイチゴサンデーおごってあげるね。祐一が」
「おい、俺がいつそんなこと言っ…」
「わぁー 祐一君、ボクうれしいよぉー」
「……お前ら……」
口調では怒っていても、祐一の目はやさしかった…
あれ?
「ん? どうした、あゆ」
「あれ、ううん、なんでもないよ」
でも、涙がでてきちゃう…。 そうか、ボクはきっと…
「ボク、うれしいんだ。それだけだよ」
「どうして…」
祐一は一瞬心配そうな顔をしたが、次の瞬間にはいつもの顔になっていた
「どうせたいやき食いすぎたんだろ」
「だめだよ祐一、女の子にはやさしくだよっ」
どうしてなのか、ちょっとは分かってたけど、言葉で全部、いわなくてもいいよね?
「ボク、嬉しいから… 楽しいから…」
こんなにも普通な日常を、ボクは何度も夢に見ていた。ボクの望んだ幸せって、きっとこんなかんじなんだ
神様、奇跡がほんとうにあるのなら、ボクがいまここにいることが、一番の奇跡です
だから、これからも、祐一君たちのそばにいて、いいですか?
ボクは祐一君が、大好きだから…
ボクはきっと、いま幸せなんだ
「ほら、いくぞ、あゆ」
「あ、おいてかないでよぉ」
ボクは祐一君たちの影を追う
背中の羽が、かさかさ音をたてていた