~Kanon another short story~
出会い <栞>
えっ?
どさっっ!! 突然だった
……冷たい
雪が木から落ちてきたのだと理解するのに数秒かかった
頭から雪をかぶったらしい
買い物袋の中身が周囲に散乱しているのを、なんとなく眺めていた
ふと気づくと、少年と少女がいた。心配そうにこっちを見ている
「とりあえず、立てるか?」
「…え……あ…はい」
「ごめんな、拾うよ」
「あっ、いいです。自分でできますから…」
少年はそれでも拾おうとしたが、それをさえぎるように、散らばったものを自分の周りに集めた
それをひとつひとつ袋の中に戻していく
「ごめんな、こいつせいでひどい目にあわせちゃって」
少年が少女を指差して言う
「悪いのはそっちだよ、ボクが飛びつこうとするのをよけるから!」
少女は鼻をさすりながら、少年を批判した。どうやら少女は顔面から木に突っ込んだようだ
「普通、人が突っ込んできたらよけるだろ」
「だってあれは感動の再会のシーンなんだよっ」
「そうなのか?」
「そうだよっ」
どうやら2人は幼なじみらしい。2人はまるで漫才のような会話を続けていた
しばらくのち、ようやく私のことを思い出したように、少女が話し掛けてきた
「うぐぅ、ごめんね。大丈夫だった?」
「はい、なんともないですよ」
少年は私より1つか2つ上だろうか…。自分のことをボクというらしい少女は同じ年頃に見えた
「そうだ、自己紹介、まだだったな。俺は相沢祐一。それでこいつはたいやき泥棒だ」
「たいやき?」
「ちがうよっ。ひどいよ祐一君。ボクは月宮あゆだよ」
「あ、美坂栞です。そこの高校の1年生です」
「なんだ。じゃあ俺の後輩だな。俺は2年なんだ」
「ボクは学校は違うけど、2年生だよ」
「えっ? お前、俺と同じ年なのか?」
「何歳だと思ってたの?」
口は笑っているのに、あゆさんの目は、怖かった…
それからしばらく、世間話が続いたが、あいかわらず2人の会話は漫才だった…
「それじゃあまたな、栞。学校で会ったら声掛けてくれよ」
「バイバイ、栞ちゃん」
2人が去っていくのを、栞は笑顔で見送った
夜になった。私はすでに決心していた… いや、していたはずだった
お昼にコンビニで買い物してきた袋から、カッターナイフを取り出した
チキチキチキ…
刃が光を反射して、不気味に光った
お昼に祐一が袋の中身を拾おうとした時、それを拒否したのは、自分の気持ちを見透かされるのが怖かったからだ
左の手首に刃をあてる。瞬間、赤い筋が現れた…
……痛い
透明なしずくが、頬を伝った
突然頭の中に昼間の2人の様子が浮かんできた
2人の笑い声が聞こえてくる。自分がひどく、惨めにおもえた
私は笑った。涙を流しながら、心のそこから笑った
その笑いは、2人に向けられたものでもあり、自分自身を笑ったものでもあった
決心していたはずなのに… この世界に、引き止めるものはないはずなのに…
私は知っている。私が不治の病だということを。次の誕生日を迎えられるかわからないことを
でも、姉がいれば怖くなかった。信じていた… もちろんいまでも信じてる
けど、やさしい姉はもういない。頼れる姉は、もういない
祐一さん…
雪の中の出会い。偶然だった
まるでドラマみたいでかっこいいですね
くすっ
他人からみたら、間抜けな出会いかもしれませんけど…
でもそういうの、きらいじゃないです
もしあの出会いが、偶然でなく必然だったとしたら、神様は私に生きろっていってくれたのかな
私、あなたの側でなら、大丈夫かもしれません
わらったり、泣いたり、怒ったり、すねたり…
そんなふうに、過ごせるかもしれません
あなたがいれば、笑っていられるから…
明日、もし学校で会えたら…
神様、もう少しだけ、普通の女の子でいていいですよね
好きな人の側で、想い出を作って、幸せを夢見て…
もうすぐ私の誕生日だから…