『BLESS --close your eyes, open your mind--』 SideStory

時間


「……ん…」

なんだか、いつもと違う…

優しくて、温かいキス

あの人の心の中が全部流れ込んでくるような、そんなかんじ

「…ふぁ……ひであ…き…さん」

秀晃がそっと顔を離した

ちょっと照れたような秀晃の表情

それを見るのが、ちょっとした幸せだった

雪乃は秀晃の胸に頭をあてた

「秀晃さん ひどいですよぅ 突然… その…」

「ははは、ごめんな でもそれは雪乃がかわいいからだぞ?」

「うー ひきょうですよぅ」

「ごめん 悪かったよ」

秀晃の手が雪乃の頭をぽんぽんたたく

さらに秀晃の手は雪乃の長い髪をもてあそびはじめる

「ふぇっ……」

「ははっ かわいい反応するなよ」

「だ、だって…」

でも… 私にはわかる

私の額から、秀晃さんのドキドキが伝わってくるから…

あなたが、私を好きでいてくれること

すごく、すごく嬉しい





「雪乃? 雪乃?  ほらー 起きて−」

「え?」

「雪乃ってば!」

「まきちゃん?」

「もー 何寝ぼけてるのよ もうお昼なのよっ」

枕もとの目覚まし時計の2つの針は、12のところでほぼ重なっていた

窓から差し込む光もまぶしい

「ええー? あ、ほんとだー  まきちゃん、なんでもっと早く起こしてくれないの?」

「起こしたわよ でも雪乃があんまり幸せそうな顔で寝てるからさー」

そういえば… 私、秀晃さんの夢…見てた

「あ……  ね、ねぇ、まきちゃん? 私… その、なにか寝言とか言ってた?」

「ふふふー」

「あぁ! まきちゃんの笑顔がこわいっ ねぇ、なんていってたの?」

「にゃははーん 雪乃ったらやっぱりえっちなんだからー 夢の中でまで秀晃さんとあんなことやこんなこ… むぐぐー」

「まきちゃんそれ以上いっちゃだめー」

「むぐぐー はぁはぁ 分かったわよぉ」

「そ、それで、私はなんて言っちゃったの?」

「別に何も?」

「まきちゃん?」

「ゆ、ゆきのぉー その笑顔のままで怒るのはやめようよ〜」

「………」

「…雪乃のお昼ごはん用意してくるねー」

まきえはそういい残すと、あっという間に部屋から飛び出していた




最近、よく思うことがある

それはまきちゃんの気持ち…

私だって女の子だもん

まきちゃんの、秀晃さんのこと好きって気持ち

やっぱりわかっちゃうよ

まきちゃん そうだよね

どうして… 耐えられるの?

まきちゃんはそれで満足なの?

私… 秀晃さんのこと 好きだけど…

まきちゃんのことも好きなんだよ

私は… 2人とも好きなんだよ



「ゆっきのー 今日のお昼ご飯は炒飯と中華スープだよ〜」

まきちゃんの… 笑顔がいたい

「わぁー すごいねっ まきちゃんが作ったの?」

「もちろん! なんてったって、天下の佐倉家のメイドなんだからねっ
 
 あ、ちなみに今日の雪乃の朝ご飯は私ががんばって食べたから」

「あ、ごめんね 食べてあげられなくて」

「いいよいいよ あ、でもー  そうだっ 罰として、今日は秀晃さんのご主人様モードで会っちゃう?」

「ええー!?」

「だってあれ以来やってないじゃなーい あれ、おもしろかったんだよぉ 雪乃の照れた顔がっ」

「もうっ まきちゃん!」

「あははー 冗談じょーだん」





まきちゃん… どうして 応援してくれるの? 私と秀晃さんのこと…





聞きたくても聞けない

なぜか、きいちゃいけないような気がする

自分がまきちゃんの立場だったら…

考えただけで怖い

まきちゃんに悪いなって思う気持ち

秀晃さんに私を好きでいてほしいって思う気持ち

どっちも本心のはずなのに…

明らかに矛盾している


チクタクチクタク……

一人でいると、目覚し時計の小さな音が妙に響く

チクタクチクタク……

十年後… 秀晃さんの隣にいるのは誰なんだろう

私?

まきちゃん?

それとも私の知らない誰かだろうか…

想像するのは… 怖い

私たち3人の未来

それは確かに存在するのに それを見たくないという私の心…

時の流れが解決してくれることはたくさんある

きっと、小さな悩みは消えていく

だから… 私は今までそれに甘えてきたように思う

“いつかきっと…”  なんて、甘い言葉に…

それが悪いことなんて言わない

けど… 私のどこかが納得しない

チクタクチクタク……

止まってしまえばいいのに

チクタクチクタク……

一番幸せな時のままで 止まってしまえば…



まきちゃんは幸せなの?



「雪乃? 入るよー?」

「あ、いいよ」

「あのさー、今日秀晃さん来れないんだってぇ ひどいよね?」

「え、そうなの?」

「なんかさー、バイトが急に入っちゃったらしくて」

「じゃあ仕方ないよ」

「あー ほらほら そんな哀しい顔するんじゃないのっ」

「ええ!? し、してないよー もう、まきちゃ〜ん」

「ねぇ、行ってみる? 秀晃さんのバイト先 ね? 行こうよ」

「うーん……」

「よし決定! れっつごー」

「ああん もうっ!」




まきちゃん

私ね、まきちゃんを見てると…

その… 私の思い込みかもしれないけどね

私と一緒だなって、思うの

3人でいる時間が何よりも楽しいって思うこと

きっと私はそうなんだ

まきちゃんもそう思ってると…思うの

だからね 

私の2つのきもち

きっとあれは2つとも本当なんだ

今を、過ぎていく一瞬を、幸せに、精一杯生きること 

それが私たち人間にとってほんとうの幸せなら

私は、今を3人で笑って過ごしたい

だからね

時の流れに流されるんじゃなくて

私たち3人で、3人の流れを作っていこう

まきちゃん

3人の未来なんて、今は考えなくていい

この一瞬一瞬を大切にして…

そうしたら、その先に何があろうと私はきっと怖くないよ

ね まきちゃん


Fin

柚木