もうすぐ春
晴れ上がった空に午後の終わりが始まる時
深く長く 一つのことを望んでいたことに気づく
投げやりになったり
もう一度立ちあがろうと思ったり
でも どの決意も一つの望みの向こうで
心の中に浮かんできたことだった
袖に掴まっていても 歩けば歩くほど
二人の距離が膨らんでいく
それがわかるほど愛は見えなくなって
そして聞こえた つぶやくようなただ一言
「もう逢うのはよそうよ」
この人とは離れたくない
単純に望んでいただけの私
電車を待つたくさんの人の声が聞こえない
耳の中に残っているのは突然立ち止まった君の言葉
この先一歩踏み出しただけで
私は死んでしまいそうになる
やがて私との時間を忘れていくであろうこの人の望み
私のそれとは違うのね
ゆっくり私を振りかえる瞳の意味は
読み取れない いいえ 読み取りたくない
澄みきった冬の終わりの空に風がきらめく
もう戻らない二人の時間を夕日の中に押しとどめ
涙をポケットに押し込む
「君と出会えて良かった」という彼の言葉は
真実ということにしてしまおう
神様が微笑んでも
彼が私を待つなんてこれからは奇跡のひとつ
どうせ私だけが覚えていくのなら
もしこの先一歩踏み出しても生きていけるのなら
遠ざかる後姿 見えなくなるまで見送った
許すのも愛だと気づいたことは誰にも言わずにいよう
そう決めた途端
駅を通うたくさんの人の声がすこしずつ聞こえてきた
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