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詩になりそこねた小さなWORDS
 pieces 




まだ少女だった頃の私の記憶
家族から離れて湖のほとりに立っていた

傘をそっとたたんでみると
傘を打つ雨の音が消えて
岸に打ち寄せるさざ波と
浜に染み込む雨の音だけに包まれた

とても静かだった

蒼い夕闇に浮かぶ半月は
凍った影を
足元の水溜まりに落としている

この冷たい水を
目を閉じて飛び越えれば
冬の女王の魔法が溶けて
あなたは私の元に
帰ってくるでしょうか

 

「お休みなさい」
小さく微笑んで車を降りる

静かに燃える心を
助手席にそっと残して

 

 

「やあ、今日は暑いね」
窓を大きく開けながら
君はにっこりと
笑顔で振り向いた

すると
ふわっと夏の風に乗せて
愛用のコロンが香り
その時
とまどっている自分に気づいた

 

 

日記のページを破るのは悲しいこと
そこだけ開きやすくなるだけ

 

 

海は涙の水溜り

だから世界中の悲しい涙が
川や雨と同じようにみな
海を求めて流れ出す

 

 

少女が柔らかい笑顔で
目をつぶって風の中で舞っている
きっと今世界で一番
この台風を楽しんでいるのは
彼女だ

 

 

今なら そう 今の
この満ちている月になら
私の中の秘密を
話してあげるね

 

 

夏の午後の黒い蝶
光を吸いこむ羽根の上に
「時」が休んでいる
濃い緑の風も音も
そして私も
その影が見えなくなるまで
迷わず息を止めている