白い犬
カツカツ、とか。
コトコト、とも聞こえる?
壁に響く爪音を立てて、
僕は夜道を歩くんだ。
まぁるい月と
暗い空に浮かぶ青い雲。
僕の上をのんびりついてきてるから、
僕はね。
ひとりぼっちじゃあないんだよ。
猫が集会を開いている路地を避けて駐車場を横切ると、
こんな時間にもまだ明るい窓があって、
そこの向こうにいるヒト達。
みんな僕のことなんて知らないんだ。
でもね。
僕はもう、たくさんの窓の奥での事を知っているの。
昼間にお母さんが見ていた
怖いドラマの音を思い出してしまって
どうしても眠れない赤ちゃんを、
抱いてあげることもなく
怒鳴り声で怒るお父さんのいる窓。
外に出るのをとっても嫌がって、
お母さんを泣かせるだけのお兄ちゃんのいる窓。
そして恋人との長電話が楽しくて
いつ寝ているのかわからない、
淡いピンクのカーテン越しの、お姉さんのいる窓とか。
僕の歩く道はどこにでも続いてて、
僕はどこにでも行けるのだけど、
ヒト達もそうなの?
窓の向こうに、もっと道はあるの?
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