夢の中の海
こんな思いをしたくて
歩いているはずないのに
すでに打ちのめされた感覚で
国道からゆっくり浜に下りる
聞こえるのは波と風と傘に当たる雨
傘から落ちるしずくは次々と
湿った砂に吸い込まれてゆき
行きつく先は
冷たくて近づけない荒れた海
誰だろう
見知らぬ人が少し離れて立っている
知っている背中なのに名前がわからない
黒い傘に半分隠れた背中を眺めながら
「あなたは誰」と聞いてみたいけど
きっと思い出さないほうがいい人
重たい雲の向こうにあるはずの太陽が
海の上でおぼろげに
強い風に吹かれるままの私を黙って見下ろしている
ちゃんと見ていてと太陽を見上げる
もう少し時間がたって目が覚めれば
明日は晴れると思うから
きっと笑えると思うから
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