〜聖夜 奇跡の心〜


「彼女が最後に奇跡を信じ、求める人よ」
さんたの言葉の半分も幸也の耳には残らなかった。
「静歌、なんで?」
幸也が声を漏らすが、静歌は気付いた様子もなくそのまま横を通りすぎていった。
そんな彼女に向けてさんたは奇跡の可能性である七色に光る粉を振り掛けた。
「どういうことなんだよ、さんた、お前まさか知ってたのか?」
振り返り、問いかける幸也にさんたは平然とした言葉で答えた。
「はい、奇跡をかなえるためにそれに関係のあることはある程度知っておかないといけないですから」
「奇跡をかなえる…、なんの奇跡だよ」
「幸也は何も知らないんだね、彼女、静歌はあなたを失った悲しみから他の人と付き合っていました、でも、やっぱり幸也、あなたのことが忘れられなくて、一ヶ月ほど前に別れているんです。そして彼女がここに来た理由、それは」
そこでさんたは言葉を切る、幸也の中では嫌な予感が広がっていった。
一方、静歌は昼間、幸也のいた場所に向かっていた。
「それは、幸也のそばに行くこと、死んで幸也に出会うこと、来世でもあなたを一緒にいることそれが彼女の願い、そして、その奇跡の可能性を与えるのが私の仕事」
その言葉に、幸也は静歌の方を振り返った。
彼女はちょうど策を越えたところだった。
「彼女の信じる力は強いから、必ず奇跡は起こるわよ、よかったわね」
さんたの言葉を引き金に幸也は走りだした。
信じられないほどのスピードで走る幸也。
「まって静歌」
そう言って声を上げるが、幽霊の声が聞こえるはずもなかった。
金網をすりぬけ静歌を止めようとするが、その体はすり抜けた。
「もうすぐだよ、幸也」
静歌はそう言うとゆっくりと体のバランスを前にずらしていく。
「静歌」
幸也は叫んだ。
奇跡を信じる、奇跡は起こる絶対に、だから静歌を助けてくれ心のそこから叫んだ。
「奇跡は起きる必ずね」
そんな二人から離れた場所でさんたはぼそりとつぶやいた。
そして……。

静歌の体は、地面にたたきつけられることはなかった。
幸也の伸ばした腕が、静歌の腕をつかみ彼女の体を支えていたからだ。
「幸也」
静歌は目に涙を浮かべながら、幸也の顔を見ていた。
「静歌、見えるのか」
「見えるよ幸也、ここに幸也がいるよ、見えるところにいるよ、私つらかったんだよ」
静歌の腕を引っ張って、彼女の体を抱きしめた。
「これが私からのバイト料、結構いいバイトだったでしょう、でも見えるのは聖夜の間だけなんだけど、それに……」
いつの間にここまで歩いてきたのか、すぐ近くでさんたが言った。
「今日だけか、でも今度はちゃんと別れの言葉が言えるな」
「そうだね、幸也ともう一度会えたんだから」
二人がそう言うと、さんたは人差し指を左右に振りながら。
「まだまだあるよ。さらに残業手当つきで、毎年聖夜には会えるようにしておいたから」
「ありがとう」
幸也は満面の笑みで答えた。
幸也は心を見つけた。奇跡を信じることがクリスマスの心なのだ。




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