本の感想です微妙にネタバレしてます
幻色江戸ごよみ 宮部みゆき
久しぶりの宮部みゆき。江戸時代を舞台にした短編十二編。全て主人公は町の人々。切ないような少し怖いような、
また少し不思議な話がてんこ盛り。一篇一篇とても短いのでさくっと読めるのですが、いくら読んでも一向に飽きません。
江戸時代という自分になじみの無い舞台にも関わらずすんなり入り込めました。さすがです。
個人的には「首吊り本尊」がお気に入りです。「神様」と言えば今の時代でも一般的に「崇高な存在」という定義がされており、
それが江戸時代ともなると更に深い信仰がなされているはず。なのに何故か首を吊っている。その発想が素敵。
クビキリサイクル 西尾維新
最初は引きました。そして読むのをやめようかと思いました。個人的に「うにー」とか言う萌えっぽい女の子は好きになれません。
でも我慢して読むと・・・面白い面白い。前半でなんとか抵抗を克服し、後半は怒涛のように早く終わってしまいました。
「鴉の濡れ羽島」(←ここでも引いた)で起こる密室連続首切り殺人事件。容疑者はどれも一癖も二癖もある天才達。
たまたま招待されていた主人公「いーちゃん」と天才のひきこもり玖渚友はこの事件を解決しようとするのだが・・・。
この人の世界にはまるのに時間がかかりますが、慣れてしまえば気になりません。というのも設定が突飛!
舞台は現代の日本そのままなのです。しかしそこに出てくるキャラたちがあまりに弾け過ぎていたり荒み過ぎていたりと、
どう考えても浮いているわけでありまして・・・。でもそのキャラ達がいなきゃこの話が面白くはならないわけで、
それはそれでいいのです。
ストーリーは良かったです。ラストの
*入れ替わりのネタバレや、やたら含みを持たせて描かれているいーちゃん
と友の過去には閉口しましたが、*全体的にテンポが良くて長さを感じさせませんでした。次回作にも期待です。
クビシメロマンチスト 西尾維新
「いーちゃん」二作目。毎回友とのコンビが描かれるのかと思ったのでそこは拍子抜けしました。いや、失望したとかではないですが。
今回は「いーちゃん」とそのクラスメイトたちの殺人事件。それに加え、連続無差別殺人犯、零崎との出会い。クラスメイトが次々と
殺される中、
「いーちゃん」のとった行動は・・・。
残酷でした。内容自体は軽い、ほんわかはじけてる場面が多くを占めているのにも関わらず、残酷だと思いました。
私は一作目二作目と、「いーちゃん」の「僕は人と違うのだ」「欠陥品なのだ」という戯言にどうにも違和感を感じていたのですが、
最後の最後でやられました。こいつは残酷だと。あんなにも明るくて一途だった巫女子ちゃん。確かに殺人はどうしようもないほど悪
だと思います。しかし自分に対し並々ならぬ好意を寄せている、明るく元気な女の子に残酷な言葉をつきつけていく彼に、
殺人に勝る恐ろしさを覚えました。彼女の死体を見て気分が悪くなった彼の描写を読んで、「あーこいつもやっぱ人間じゃん」
みたいに思ったのですが、それすらも最後にあっさりと崩されて、気分は良くなかったです。
しかしそれでもそこまで書ける西尾維新はすごいなぁと。一作目よりかなりパワーアップしてるなぁと感じました。
ところで人類最強の請負人は毎回最後に出てきて事件解決の仕上げをするだけなのですが、まさかこれからもそのパターン?
折角完璧人間なのにそれじゃぁあんまりじゃ・・・。完璧すぎて作者も使いづらいのかしら?
覗き小平次 京極夏彦
京極夏彦は「京極堂」しか興味なかったのですが、家にあったので読んでみました。
この話、読めません。先が。普通の小説なら、例えば中学校が舞台でそこで起きた殺人事件を解決するまでのストーリーとか
読んでるうちに分かるもんじゃないですか?でもこの小説は違います。先が読めないんです。というかまず主人公が読めません。
タイトルの通り「いつも覗いている小平次」が主人公です(笑)。主人公なのですが、殆ど喋らない。己を主張しない。
それが小平次なのです。ストーリーはそんな小平次の周りの人々が小平次の傍らで生きている話。いやー説明になってませんか。
血なまぐさい事件とか結構描かれているにも関わらず、淡々としていて静かなイメージがありました。それというのもやはり小平次が
主人公だからかな。過去の事件のせいで、何も語らない、からっぽな、厚みのない傍観者となった小平次。しかし幽霊の演技は本物と
見紛う程素晴らしい。否、それは演技ではないから。それに苛立つ女房お塚。彼女が夫であり、しかし憎みきっている彼と別れないのを
とても不思議に思いながら読んでいたのですが、ラストで
*私は小平次に嫌がらせ
する為にあんたと寝たのよ!*と叫んだ所ではなんだか
憑き物が落ちたというか。そう感じては
いましたが、実際に言われてすっきりしたというか。
なんだか非常に不思議なお話でした。でも、良かったです、これ。
FLY,DADY,FLY 金城一紀
どこにでもいるうだつのあがらない中年サラリーマンが、娘を暴行された。しかもその犯人は将来有望なボクサー。事件は揉み
消された。
その事に怒りを覚えたサラリーマンは、ボクサーに復讐を誓う・・・。
軽快で、一本のドラマを見ているようでした。内容も単純明快、出てくるキャラクターも皆はっきりとしていてとても魅力的でした。
サラリーマンと男子高校生たちとの交流がまた良かったです。この作品からは、小説というよりなんだか漫画的な印象を受けました。
最後まで目が離せなくなる事請け合いです。主人公が舜臣に鍛えられて、初めはだるだるだった体が、最後にはバスを追い越したり、
木に素手で登れるようになったりするんですが、そういう一つ一つにこちらも心動かされてしまいます。
読後の爽快感もあるし、とても読んでて楽しかったです。
蛇行する川のほとり 恩田陸
久しぶりにツボにはまる恩田陸ワールドを堪能しました。伝家の宝刀とも言える「学生」「閉鎖空間」「ミステリアス」のコンボです。
にしても内容が重い。重い重い。読んでてかなり沈んだ気持になります。中盤まではぐぐっと引き込まれたんですが、最後の謎が
明らかになっていく下りは憂鬱というか、もう謎なんてどうでもいいよなんて感じながら読んでしまいました。
内容とは関係ないのですが、久しぶりに恩田陸を読んで、改めてこの人の描写の鋭さとか的確さとかに驚かされています。
ほんと、これは他の作家さんと一味二味違う!という恩田陸ならではの持ち味なのでしょう。
巷説百物語 京極夏彦
これはTVKで深夜に放送しているアニメから入りました。たまたま見始めたのですが、すごく面白い。演出が普通のアニメと
違うんです。背景とか情景が独特の、それ自体で作品になりそうな絵(浮世絵とか版画っぽい)で、雰囲気にぴったり合う。
で、これは原作も読まなくては!と急いで図書館に走りました。
お話は、京極堂シリーズの江戸時代版。という印象を受けました。小股潜りの又市率いる異界の住人(?)が、様々な事件の謎を
暴き、決着をつけていくというような内容です。原作もアニメに劣らずとても良かったです。
蛇足ですがこの又市は、笑う伊右衛門にも登場するみたいですね。あーそっちも読みたいわ!
死にぞこないの青 乙一
クラスに新任してきた若い男性教師。彼は生徒にも親にも評判の良い教師であった。しかしその裏には、彼のクラスで皆の不満の
捌け口に選ばれた主人公の少年の苦しみがあった。ある日、主人公は自分だけにしか見えない真っ青な男の子「アオ」の存在に気付く。
「アオ」は苦しんでいる主人公に教師への復讐を提案するのだが・・・。
中々読むのが辛かったです。というのもこの作品、全編通して主人公の苦しい場面が三分の二くらいを占めていて、もどかしかったり
こっちも辛くなったりで大変でした。ラストの方は一気に良い方向へ流れていったわけですが、読み終わった後で感じるのは、やはり
苦しいとか辛いとかいった気持でした。「アオ」の生まれた理由やラストはしっくりいってとても納得できる気持ちいいものでしたが、
やはり全体の印象としては暗いものになりました。
恋の罪 狗飼恭子
この本はある雑誌で田中麗奈が「10冊くらい買って友達に勧めた!」と言っていたのを読んで私も読んでみました。
内容はひたすら恋に身を焦がしすぎて少しおかしくなった女の子の独白です。・・・かなり辛かったです。
というのも恋に生きる少女ですから、考え方とか台詞(あなた無しじゃ生きていけないみたいな)がけっこうむずがゆい感じで。
多分どんな女の子にもある恋愛の一面を具現化したようなお話でした。好きな人を独占したい、私以外の人間を見せたくない。
だからと言って彼女に感情移入できるかといったらそうではなく、むしろムカムカしながら読みました。
薄いのですぐ読めます。でも私はこの人の本はもういいかなと・・・。
MISSING 本多孝好
短編集です。この人の作品は以前「FINE DAYS」を読んでいたのですが、どちらも切ない印象は同じです。
「切ない」といっても乙一の切ないとは毛色が全然違う。陳腐な表現ですがもっと脆くて、儚くて、達観したような、
大人が書いた、大人の為の切なさみたいなものを感じました。
サイコロジカル 西尾維新
今回は上下巻分かれての物語でした。「ハイスクール」までと違ったのはラストの事件のネタバレの部分。
普通の推理小説なら最後の最後には全ての謎が明らかになり、スッキリして終れるのですが、結局今回、全ては明らかになりません。
なんとなく曖昧にぼかされて終わってしまいます。その謎は大して本編に影響を与えるものではないので、明らかにされる
必要がないからなのでしょう。
内容は面白かったです。「ロマンチスト」の時のような重さも無く、密室儀式的殺人事件が繰り広げられる。
しかし!やっぱりまた最強請負人は(ほとんど)最後のネタバレ部分にいつもどおり登場しただけ。結局そのパターンなのかしら。
も一つ!いーちゃんや友の過去、あんだけ「サイクル」から含み持たせといてまだ!ひっぱりますか。ちょっとうんざりする。
笑う伊右衛門 京極夏彦
おばかPCが「笑う」をちゃんと変換してくれません。
唐沢敏明と小雪で映画化して話題になった作品。それで興味を持っていました。いざ読み始めても、脳内で伊右衛門→唐沢敏明、
お岩→小雪、喜兵衛→椎名キッペイと変換して読みました。映画を知った後だからかもしれませんが、大体ほぼ役者さんと
実際の役がしっくりきてます。
それにしてもこの作品、覗き小平次となんだか似てると思います。内容をとても説明しづらい所とか(それだけかな?)。
覗き小平次の淡々とした所はありませんが。もっと血生臭くて、ドロドロしていて。それでもこれはどんなジャンルの話かと
問われれば、やっぱりラブストーリーと答えてしまう。タイタニックみたいに二人の絆とか愛とかが濃厚に描かれている
わけではありません。むしろ作中で中心となる二人が絡むシーンは少ないです!互いが互いを思いやり、思いやりすぎた為に
自己を犠牲にして結局すれ違ってしまう。不器用というかなんというか。お岩はとてもまっすぐで強くて、先をしっかりと見て
いるけれど、周りのことを考えすぎて自分を犠牲にしてしまう。伊右衛門は実直で誠実で、でもやっぱり思いやりからくる
自己犠牲の精神が強くて、結局我慢しすぎてしまう。とてもとても日本的なラブストーリーだと思います。
最後の最後に、ほっとしたというか、救われました。あぁ、やっと。というかんじですかね。
そういえば「巷説百物語」の小股潜りの又市が出演して、かなり重要な役割を負っています。彼の内面やらがこっそり垣間見れて
ファンとしては嬉しかったです。
読み応えは相当あります。こんなにはまってしまったのは正直久しぶりです。ぜぇぇったいに映画も見ます。今すぐ見たい。
ぜぇぇったいにラストサムライよりもこっちの小雪にグッとくると思う。楽しみです。
クレオパトラの夢 恩田陸
MAZEの続編と聞いていたのですが、続編というよりも主人公が同じな別の話です。
舞台は北海道。恋人の後を追って北海道へ行った妹の和美を連れ戻す為、恵弥は単身北海道へ向かう。しかし彼の本当の
目的は別の所にあった。それに勘付いた和美も巻き込みながら、恵弥は”クレオパトラ”を探す。
恩田陸の作品は、「メンタルサスペンス不思議系」と「SF不思議系」に分けられると思うんですが、これはSFの方でした。
とことん頭の良い兄妹の化かし合いは読んでいて楽しかったです。それにしても恵弥がかっこいいのね、すごーく。
またこのシリーズでないですかね?出たら読みたい!
まひるの月を追いかけて 恩田陸
こちらは「メンタルサスペンス不思議系」・・・ですかね。「クレオパトラの夢」と一緒に読んだんですが、まるで対に
なるかのように舞台は奈良。要所要所に名所の説明などあって、またその描写が素敵だったから、行きたくなりました。
不思議な関係の男女3人の、不思議な旅。恩田陸っぽいなぁなんて思いました。
どうでもいいけど、この人結構主要人物を殺しますね。もちろんそれで話が進んでくんだけど、いつもドキっとする。
黄昏の百合の骨 恩田陸
待ちに待ちに待った「麦の海に沈む果実」の続編です。といっても主人公が同じだけで他の登場人物とか舞台とかは全然違います。
全然違うけどやっぱりはまってしまいました。理瀬は前作と比べて大分悪女というか大人びたというか。これが本来の彼女なので
しょうがちょっと淋しかったり。
親戚や友人どうしの化かしあい、探り合い有り、殺人ありの、木曜組曲にちょこっと似たとこを感じました。人物に魅力がある
作品はそれだけで読み応えがあります。
それにしてもラストはちょっと期待はずれでした。なんだか突拍子もない所からオチが出てきた、みたいな。読んでいる時は
そんなに違和感有りませんでしたが、もうちょっと後引くようなミステリアスな謎解きで終われたら良かったのにな。いや、でも
あぁいう終わり方だからこそ物語が締まったのかとも思えますが。うむむ。
ナ・バ・テア 森博嗣
本屋で見て驚きました。あの大好きな「スカイクロラ」の続編が!装丁で直感しました。
読んで二度驚き。初めは前作と同じ主人公かと思いきや少し違和感。読み進めていくうちに草薙水素が主人公だと判明。
基本的に前作と同じ戦闘機乗りの日常が舞台ですが、今回は前作よりも「男」「女」関係を中心に描かれていました。
ぶっちゃけ前作の方が好きです。あの無機質な淡々とした雰囲気がとても好きだったのですが、今回は女性を主人公にしたからか
(問題発言?)彼女の内面や周囲との軋轢のようなものが、わずかですが濃く描写されているように思えて少しがっかり。
それでも好きですが。
ちょっと気になったのが戦闘シーン。短文で専門用語連発の空中戦闘シーンは、少しずつあるから理解力ゼロでもその雰囲気
が読み取れるのであって、あまりにも多用されるとチンプンカンプンで読み飛ばしたくなります。
この作品からスカイクロラに話が繋がっていくのですが、まら分からないことも少しあって。それらはこれから明らかになる
機会がまたあるのでしょうか。だといいなぁ。
モドル