惨句集 2001年 六月

1 蚰蜒を踏む怨み無けれど力込め
2 白と黒日傘出逢ひて長考す
3 特に記す事無しうづき曇かな
4 一句をも成さずに過ぎて薔薇砕け
5 明日有りと歌ひ終りて梅雨に入る
6 自ずから収支は合ひて夏落葉
7 蜘蛛の巣の五尺の獲物持余し
8 陽を拗ねて降る病葉や街静か
9 亡ぶもの皆明くて五月闇
10 蟻の列一瞬乱れ元の列
11 走馬灯泡沫巡り喜劇また
12 驚きも発見もありの本
13 虹の橋幾つ渉りて黄泉の国
14 出目金の遠慮勝ちなる泳ぎかな
15 紫陽花のかたまり毎の密議かな
16 結葉を洩るる光に愁ひ顔
17 父の日や仔は父を跨ぎ超え
18 虹鱒やカリフォルニアの空蒼く
19 五月雨身の内までは降込まず
20 青嵐邪念払へば何も無し
21 も児も妻も居り侘び住ひ
22 さみだるる日本列島なほ暗し
23 黴雨中四方に現る魑魅魍魎
24 塵洗ひ束の間の陽の夏木かな
25 塊の如き炎熱みち塞ぐ
26 覚めて寝て地獄巡りの熱帯夜
27 物の陰皆くつきりと梅雨晴れ間
28 駅出口ハンカチ探り決意して
29 帰宅子の挨拶先づは冷蔵庫
30 時速六十一瞬に過ぐの灯
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