惨句集 2001年 八月

1 束の間の夕立の後の人間の顔
2 娘臍あちらにもへそ迷ふ
3 美味いのは手抜して副ふ冷奴
4 職無くて今日妻四拾九暮の夏
5 向日葵の壱輪律儀日を睨む
6 日に焼けし児各々のキャラクター
7 シナトラの歌声を聴く秋に入る
8 西瓜喰ふ人皆作法無き如く
9 日に百人自刃択ぶか秋の空
10 一瞬の胸騒ぎあり星奔る
11 ビルの峡踊太鼓の曲り来る
12 朝顔の筧を伝ひ屋根の上
13 桐一葉道化したたか綱渡る
14 痛み止め五百億ほど盆休み
15 児を殺す記事一面に敗戦忌
16 蟋蟀の未だ一匹の聲途切れ
17 辻待のあさましあはれ秋暑し
18 蚯蚓鳴くかとN.Cの唸る夜
19 金環の地球眺むや月兎
20 初嵐この家の主夢の中
21 あばら家に板打付けて蚊の名残
22 気詰りに拾ひ動かぬ捨団扇
23 たそかれに綱かけ易き月の弓
24 蜻蛉の眼死相幾つか映し居り
25 大地揺れ先づ眩暈かと暮の秋
26 新涼やスリッパ探る足の裏
27 そういつてしまへばしまひ秋の翳
28 長城もチュニジアも見てしづか
29 コンビニに化ける銀行秋の空
30 遠ざかる赤色灯に秋の雨
31 仔の登校促す電話休暇明

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