惨 句 集  弐千壱年 九月

1 寧ろ天裂けて呉れぬか震災忌
2 パソコンの秋懐募り足も萎へ
3 持ち帰る書類の重さ残暑かな
4 長き夜やラベルに猫のワイン空く
5 泣きつ面村雨洗ふ秋の宵
6 髪切つて背筋に逼る秋の風
7 泥舟と知りて縋るや秋出水
8 黒残る髪梳く風に色も無し
9 蛇穴にこころ東西南北に
10 野分中守る物何か在る如く
11 コスモスの交す囁き野辺の夕
12 有り明にころりと散華露の玉
13 さはいへど身にしむ独語さぐる闇
14 店轉ろび次は我かと秋の聲
15 宵闇にせめてめしませわが刃
16 微笑みに翳見咎めて欄の秋
17 曼珠沙華死人見据ゑる逢魔刻
18 溢蚊の仄黒き壁終の地と
19 落日のその荘厳の今日子規忌
20 夕月や取残されて雲一つ
21 落魄の落莫の中竹の春
22 舟脚を急かせても中東へ
23 食へば入歯も踊る口の中
24 逢ふ毎の吾が気の遅れ龍田姫
25 掛け違ふ釦ひとつや夜長人
26 この径の釣瓶落しの茜色
27 秋さびし口の端よぎる恋の歌
28 たふとげな言葉の淀み秋の影
29 君に似し影追ひ越せし真葛原
30 霧雨や拙きに噎せ酔漢る
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