うそ日記

 

2002.10.

 自分の夢を売ってるやつがいた。どこにでもいる駄目なサラリーマン。首から「私の夢を買ってください」と極彩色のマーカーで書いた画用紙をぶら下げている。夢ひとつが500円。黙りこくって、なのに汗かきながら売っているのが駄目なのだ。誰も見向きもしない。当たり前だ。もう少し工夫したほうがいいと思う。

2002.10.7

 昨日の夢売り人、あれでは売れないとやはり思ったのか、今日はメニューを別の画用紙に書き込んで背中にたらしている。品数は三つ。「羊の出てくる夢」「象の出てくる夢」「エッチ直前まではいくけどそこまでの夢」分析医が見たらどう分析するだろう。やはり、誰も買わない。

2002.10.8

 量販店におされて、老舗が逃げ出そうとしている。逃げる当てはあるの?と訊くと、「お店の天国」に逃げ込むのだという。もっとよくききたかったが、老舗はあまりにも急いでいた。老舗が逃げ去った跡地に、店主だけがぽつんと取り残されてしまっていた。

2002.10.9

 老舗が逃げ去った跡地に、量販店が入り込もうとしていた。けれどもいかんせん、量販店の体の大きさからして、その跡地はせますぎるのだ。体を窮屈にひしゃげて無理にはまり込もうとしている。手伝ってくれといわれたが、手伝わなかった。別に、逃げ去った老舗に同情していたわけではない。

2002.10.10

 老舗がちょっとだけ帰ってきた。天国には行けなかったと泣きじゃくった。話を聞くと、老舗の青年時代の悪行が今になって問題視されてしまったらしい。老舗なら誰でもやったことがあるはずだと、愚痴りはじめた。

2002.10.11

 今日は風呂の水がお湯になりたくないといったので、シャワーだけにした。お湯になりたくないといったって、明日には、排水溝にさよならなのだ。風呂桶との別れを惜しむのなら、むしろ進んで湯になるべきではなかったのか。

2002.10.12

 幼馴染だった「嘘」に十三年ぶりに再会した。本当に恐ろしいほどの偶然だった。もう一分、家を出るのが遅かったり早かったりしていたら、決して会うことは出来なかっただろう。喫茶店に行き、しばらく話をした。本当に楽しかった。あれほどの正直者はほかにいないだろう。嘘つきの嘘ほど、真実のことはないからだ。

2002.10.13

 「お酒」と喧嘩した。些細なことが原因だったが、俺は悪くない。飲めない俺に難癖をつけたからだ。酒の中で「調理酒」だけが味方になってくれた。お神酒がいちばんたちがわるかった。

2002.10.14

 「時間」が風邪をひいてしまったらしい。くしゃみをするたびに、空間がどろんとゆれる。こんなところで「相対性理論」のレクチャーを受けるとは思わなかった。確かに、時間と空間とは相対的なものだ。時間に風邪薬をやる。あとはゆっくり休養を取ることだ。

2002.10.15

 風邪薬のお礼に、五分だけ時間をもらった。俺だけの時間。今のところ、使い道がないので、机の引き出しにしまっておく。いつか使うこともあるだろう。