欠損した記憶、真実の鍵
「祐一くん」
おお、どうしたんだ
「探し物、見つかったんだよ」
そりゃあ良かったな
「うん、でも今日は祐一くんにお別れを言いに来たんだ」
お別れって、どこか行くのか?
「祐一くん、ごめんね。」
どうしたんだ?いきなり
「ボク、もう行かなきゃならないんだ・・・」
行くって、どこへ?
「それにこの街にも、もう来れないと思うんだ」
だったら俺が会いに行くよ。
「たぶん、もう会えないと思うんだ・・・」
え・・・
さようなら・・・祐一くん・・・・・
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・
あゆが俺の前から姿を見せなくなって一ヶ月
あの言葉が今も頭について離れない
当たり前のように・・・
それが当然のように会っていた俺たち
あゆと会わなくなってからというものの
俺の心には穴があいてしまったかのようだった
祐一「あゆはどこ行っちまったんだろうな」
名雪「え・・・」
俺の唐突な問いかけに名雪が戸惑う
祐一「いつも商店街に行けば居たのにな」
名雪「そうだね〜」
そう、商店街に行けばあいつはいつも元気に走りよってきた
祐一「あいつ探し物をしてたんだっけ」
何を探していたのかは分からないが相当大切な物だったようだ
名雪「でも確か見つかったんだよね?」
祐一「ああ、そうらしいな」
名雪「祐一も見つけなきゃね」
祐一「ん?」
俺の探し物?そんなものあっただろうか・・・
名雪「7年前のこと、思い出せるといいね」
祐一「そうだったな・・・」
そう答えたが俺はどうでもよかった
どうでもいいと言うより、思い出さなくていい
そう言ったほうが合っている
自分ではそんなつもりはないのだが、自然とそう思ってしまう
名雪「祐一?どうしたの」
考え込んでいたら名雪が顔を覗き込んでいた
祐一「いや、なんでもないぞ」
なんでもない
そう言ってしまえば、なんでもないのだが
どうも何か引っかかる物があって仕方ない
秋子「祐一さん・・・七年前にこの街であった事、覚えてますか?」
祐一「え?」
秋子「いえ、なんでもありませんよ」
何を言おうとしたのかは分からなかった
あゆは自分でこの街から出て行った
それに俺がとやかく言うことは出来ないし、かといって肯定も出来ない
もどかしい気持ちも合わさって胸の辺りがむかむかする
しかし、なにをどうすることも出来ず、ただ毎日を普通に過ごしている
でも、同じ別れならもう一度会ってちゃんと『さよなら』と言いたい
そう思っても、探る手は空をかくばかり
何も出来ず、何の進展のないまま時間は過ぎていく・・・
・
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そして季節はうつろいはじめる
雪も降らなくなり、寒い中にも徐々に空気が温かみを増していく
鳥のさえずりも賑やかになり
気の早い植物たちが新たな芽を芽吹かせている
しかし・・・・・
俺の心は冬のあの時から止まったまま
何も出来ずに手足をばたつかせる子供のような心境だった
名雪「祐一なんか最近元気ないね?」
祐一「そうか?・・・まあそうかもしれないな」
心配してくれるのはありがたいが、相談して解決するような事じゃない
もしそうならとっくに相談している
学校帰りだったので、久々に商店街へ寄っていくことにした
祐一「俺ちょっと用があるから先に帰っててくれないか?」
名雪「いいよ、それじゃあね」
祐一「ああ、じゃあな」
用がある。
そんなものは嘘だった
ただ一人になって考えたかっただけだった
前は毎日のように行っていた商店街も、あの時からあまり行かなくなった
そんなことは無いと分かっていても、期待してしまう
ここにくればまた、あいつが走ってきてぶつかってくるんじゃないかと・・・
しかし、あゆはもう居ない
そんなバカな事を考えながら商店街を歩いていた
祐一「ん?」
不意に目を留めたのは写真館のディスプレイウインドウだった
そこにはお決まりの赤ん坊、七五三、成人式などの写真が飾られていた
しかし、その中に混ざってこの街の写真が飾られていた
と、その中に見慣れないものを見つけた
祐一「あれ、この街にこんなのあったかな?」
それは街のどこからでも見えそうな、巨大な樹だった
祐一(うっ!)
頭の奥がズキリと痛んだ・・・
この樹に見覚えは無いはずだ
位置は写真からほぼ見て取れる
俺は気になったので、そこへ行ってみることにした
・
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・
そこは街が見下ろせる丘のうえにあった
そこまでは道とも言えないような細い一本道が続いている
そこを進んでいくと少し開けた場所に出た
祐一「このあたりのはずなんだが・・・」
しかし、そこには樹など無かった
ふと中央に目をやると切り株がある
どうやらこれがあの樹だったらしい
相当の大きさの切り株がそこには鎮座していた
ちょうど夕陽が落ちていく時間だった
その赤に染められて目の前全てが色を変えていく
祐一「なっ!?」
言葉を失った
俺は知っていた
この場所をあの大きな樹を
その時
失われた声が聞こえてきた
「祐一くん」
祐一「あ、あゆっ!」
「祐一くんごめんね、寂しい思いをさせちゃったみたいだね」
祐一「あゆ、どこだ!」
声の主が実体をあらわす
あゆ「祐一くん、思い出してくれた?」
祐一「ああ、昔お前と遊んだことも、この場所のことも」
あゆ「ありがとう祐一くん」
祐一「でも、まだ足りないけどな。全てを思い出したわけじゃないからな」
そう、まだ靄のかかった場所がある
しかしどんなに考えてもそれが晴れることは無かった
あゆ「もういいよ。そこまでで十分だよ」
祐一「そうなのか?」
あゆ「うん」
祐一「お前はそれでいいのか?」
あゆ「うん、ボク・・もう行かなきゃ・・・ならない・・・・・から・・・」
次第に声に悲しみが混じる
祐一「だったらなんでそんなに悲しい顔するんだよ」
あゆ「悲しいけど・・・・しょう・・・・がないから・・・」
祐一「そうか。じゃあ最後に3つ目の願いを俺にかなえさせてくれないか?」
あゆ「・・・いいの?」
祐一「ああ、何でも言ってくれ。俺に出来ることならなんでもする」
あゆ「それじゃあ・・・最後のお願いです」
最後・・・・
心にずしりとのしかかる言葉
なんとなくわかっていた
最後の・・・・・
あゆ「ボク、もう一度祐一くんと一緒にタイヤキ食べたい」
祐一「そうか、わかった。時間はかかるかもしれないけどな」
あゆ「それで十分だよ」
もう一度一緒に・・・・
必ず
あゆ「もう行かなきゃ・・・」
祐一「そうか、寂しくなるな」
あゆ「ごめんね、・・・・・さよなら祐一くん・・・・」
祐一「ああ、またな・・・あゆ」
俺はあえて『さよなら』と言わなかった
その言葉を言ってしまった瞬間に全てが終わってしまうから
俺にはまだやることが残っていた・・・
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・
俺は秋子さんがつけているスクラップブックを開いた
そこにはこの街で起こったことが新聞の切抜きと共に書き込まれていた
その中に小さな記事を見つけた
俺の予感は確証へと変わる
あとは秋子さんに確かめてみるだけだ
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祐一「秋子さん、前に七年前にこの街で起こったことを俺に聞きましたよね?」
秋子「ええ」
秋子さんは全てを悟った顔をしている
秋子「祐一さん、もうわかっているでしょ?」
祐一「ええ」
秋子「彼女を迎えに・・・彼女に朝を迎えさせてあげてください」
祐一「はい」
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祐一「ほら、お前の分だ」
「ありがとう、祐一くん。いただきま〜す」
祐一「これでお前の願いは叶えたからな」
「ん?おねがい?」
祐一「いや、なんでもないよ。気にするな」
「うぐぅ、そう言われると気になるよ」
祐一「まあ、そうだろうな」
「うぐぅ〜、祐一くんのイジワル」
祐一「さてと、タイヤキも食ったし・・・行こうか」
「あ、ちょっと待ってよ。ボクまだ食べ終わってないよ」
祐一「そんなの5秒あれば十分だ」
「そんなのもったいないよ。味わって食べないと」
何気ない会話
戻ってきた時間
全て同じとはいかないけれど
今この瞬間が愛おしい
「ごちそうさまでした」
祐一「こんどこそ行くぞ」
「うん」
おかえり・・・・あゆ
一言:ぷふぁ〜、一ヵ月半のブランクは効果大ですな。慣れてきた頃はサクサク書けたのに今では
5時間ほどかかる始末。あ〜これからは気をつけないと・・・・といっても反省の色が無い
私。もうすでに気持ちはラグナロクへw。まあこれからぼちぼち気が向いた時に書くことに
しましょうかね(ヲイ。それでは次回には期待しないで下さいな(あふぉ)