神に見放された男・・・・
名雪「祐一〜、ちょっといいかな?」
祐一「なんだ?」
名雪「今日ね、お買い物行こうと思うんだけど、付き合ってもらえないかな?」
祐一「ああ、すまん。今日はちょっと無理なんだよ」
名雪「そっか、それじゃあしょうがないね」
祐一「悪いな、次は必ず行くから」
名雪「うんっ!約束だよ」
祐一「ああ、約束だ」
そう、俺にははずせない用事があるのだ。
たしかあれは先週のことだった。
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祐一「ったく、なんで俺が少女漫画なんて買わなきゃならんのだ」
とはいうものの、真琴と『ババ抜き』で勝負をした俺がバカだった。
勝つ気満々で挑んだが、見事惨敗。
罰ゲームとして少女漫画と肉まんを買わされる羽目になったのだった。
祐一「それにしても、どれを買ってけばいいんだか」
本屋で少女漫画のコーナーへ来たものの、種類がありすぎる。
ましてや、少女漫画なんて読んだことは無い。
なので、どれがいいなんかわかるわけも無い。
と、そこへ。
「相沢さん・・・・・ですよね?」
祐一「え?」
そこには天野がいた。
美汐「以外・・・・としか言えませんね。少女漫画ですか?」
祐一「いやっ、違う違う。」
勘違いされると困るので、慌てて弁明。
祐一「これは真琴に頼まれたんだよ」
美汐「ああ、やっぱりそうでしたか。」
口が裂けても罰ゲームとは言えない。
って、やっぱりって。
美汐「何かお困りのようですが、どうしたんですか?」
祐一「ああ、真琴に買ってく本なんだが、どれを買えばいいかってね」
美汐「そうでしたか」
ここで俺の頭がひらめきをみせる。
祐一「そうだ!天野、何がいいか選んでくれないか?」
美汐「私が・・・ですか?」
祐一「ああ、俺なんかより女の子の天野が選んだ方がいいと思って」
美汐「いいですよ。よろこんで」
祐一「あ、あとさ、会計も代わりに行ってくれると助かるんだけど・・・」
美汐「はい、任せてください」
よかった、何とか事なきをえた。
実際、いい年の男が少女漫画を買うなんて、どう考えてもいい目では見られない。
ここでの天野の登場は、本当にありがたかった。
美汐「はいっ、相沢さん。買ってきましたよ」
祐一「おお、サンキュな天野」
美汐「いえ、いいんですよこれくらい」
ここで何のお礼もしないなんて、男としてイカン。
祐一「お礼がしたいんだけど、何がいいかな」
美汐「え、いいんですよお礼なんて」
祐一「いいから。何でも言ってくれ」
美汐「それじゃあ、お言葉に甘えて」
祐一「それじゃ、何がいい?」
美汐「今度の日曜日、デートしてください」
祐一「えっ?」
美汐「何度も言わせないで下さい。」
祐一「す、すまん。もう一回だけいいか?」
美汐「最後ですよ。今度の日曜日、デートしてください」
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というわけなのだ。
とはいえ、デートなんて予想だにしない答えだった。
天野って俺のこと?
ハハッ・・・・・・・・まさかな。
約束は10時に百花屋だった。
今の時間は・・・・・9時15分。
遅れちゃマズイよな・・・・。
祐一「いってきまーす」
ほどなくして商店街へ。
そして百花屋へ着く。
祐一「天野はまだ来てないみたいだな」
えっと、時間は9時45分・・・か。
祐一「ま、これくらいだろ」
デートというのはあまり経験が無い。
こう改まって「デートしてください」なんて言われると・・・。
はっきり言って、対応に困る。
天野はまだかな?
時計に目をやる。
10時10分・・・・。っておい。
祐一「あいつ遅れてるじゃないか」
と言ってるそばから天野が来る。
美汐「ごめんなさい、遅れちゃいました」
祐一「まったく、決めたのはそっ・・・・・」
天野の目が俺を貫いている。
祐一「・・・・・い、いや、俺も遅れて今来たんだよ」
美汐「そうですか、よかった〜」
い、今のは何だったんだ・・・・・。
美汐「それじゃ、行きましょっ!」
祐一「あ、ああ、行こうか・・・・」
たしか、行く所は決めてくれといわれていた。
なので、まずは噴水のある公園へ。
美汐「素敵な所ですね。私ここには来たことが無いです」
祐一「ああ、静かでいいところだろ?」
美汐「ええ、とっても。さすが相沢さんです」
祐一「そ、そうかな・・・」
気に入ってくれたようでよかった。
それにしてもさっきの目はなんだったんだろう・・・。
と、そこへ・・・・・。
「祐一さんっ」
祐一「ん?ああ、栞か」
栞「おはようございます、祐一さん」
祐一「おはよう。栞は何してるんだ?」
栞「天気がいいので、スケッチに」
美汐「あら、こちらの方は・・・たしか、美坂さん」
栞「天野さん、おはようごさいます」
美汐「おはようございます」
栞「祐一さん、もしかして天野さんとデートですか?」
祐一「あ、ああ。そうなんだよ」
美汐「きゃっ、相沢さんたら。恥ずかしいです」
栞「いいなー。祐一さん、今度は私ともデートしてくださいね」
突然、横からすさまじい視線を感じる。
やはり、天野がものすごい目で俺を見ている。
祐一「あ、ああ。また今度な。それじゃあ、俺達は行くから・・・・」
栞「はい、ではまた今度」
美汐「さよなら、美坂さん」
俺は足早にその公園を後にした。
空気が重い。
気圧が上がり、重力が増したような感覚だ。
何を話せばいいかわからない。
沈黙が続く。
その沈黙を破ったのは天野だった。
美汐「次はどこへ連れて行ってくれるんですか?」
顔は笑っているが内に秘めた何かをはっきりと感じ取れる。
祐一「えと、次はゲームセンターでもどうだ?」
美汐「いいですよ、おまかせします?」
ゲームでもやれば少しは機嫌が直るかもしれない。
不機嫌の原因は明らかに栞の登場だった。
やっぱデート中に知ってる女の子と会うのはマズイなー。
ゲームセンターに着くが、そこにも見知った顔があった。
クレーンゲームの前に舞と佐祐理さんがいた。
俺は気付かれないようにコソコソとゲームセンターの中に入る。
だがそれも、無駄に終わった。
佐祐理「あ、祐一さんだ。舞、祐一さんがいるよ〜。」
舞「祐一」
祐一「舞、佐祐理さん、こんにちは」
これはマズイ。
早くこの場を退散しなくては。
美汐「えっと、倉田さんに川澄さん。こんにちは」
佐祐理「こんにちは〜」
舞「・・・・・」
祐一「えっと、俺達急いでるんで行きますね」
佐祐理「あはは〜、もしかしてデート中でしたか?」
俺の本能が警笛を鳴らす。
祐一「ええ、そうなんですよ。ではこれで」
佐祐理「こんどは佐祐理達ともデートしてくださいね〜」
佐祐理さんが禁止キーワードを言う。
舞「祐一・・・、約束・・・」
ついでに舞のアシストも付く。
佐祐理「じゃないと、もうお弁当あげませんよ〜」
さらに、ダメ押し。
嗚呼、佐祐理さん。
ダメだよ、それは言っちゃあダメだよ。
祐一「あ、はい。じゃあこれで失礼します」
見えない力が俺に迫る。
それは俺を包んでいく。
息苦しさに汗が噴出す。
祐一「あ、天野?今のは・・・」
美汐「なんですか?相沢さん顔色悪いですよ」
祐一「い、いや、なんでもないよ。なんでもない」
口では心配しているが、声には心配の色が無い。
怖い。
今本当にそう思う。
今までこれほどの恐怖を感じたことがあったか?
舞との魔物退治だってこれほど怖くなかった。
俺は今、生涯最大の恐怖に直面している。
と俺の目に百花屋が入ってくる。
いつのまにか、戻ってきていたらしい。
ひとまず落ち着きたかった。
祐一「天野、お茶でも飲んで休んでいかないか?」
天野「はい、よろこんで」
少しは機嫌が直っているようだ。
店員「いらしゃいませー。4名様ですか?」
祐一「はい?」
「祐一〜」
「相沢くん」
祐一「い゛っ!」
名雪と香里がいた。
神は俺を見放したようだ・・・。
香里「あらあら、相沢くん。デート中みたいね」
名雪「祐一、用ってこれだったの・・・・?」
美汐「・・・・・・・・・」
祐一「え、あ、うーあー。えっと、その」
香里「名雪、ダメじゃないの。しっかり捕まえとかなきゃ寝取られちゃうわよ」
香里は凄いことを言っているが、顔がにやけている。
名雪「・・・・?。そうだね〜」
名雪は意味がわからず、適当に答える。
しかもその適当な答えは話を繋げてしまっている。
祐一「いやっ!違うぞ天野。」
だが時すでに遅し。
美汐「相沢さんのバカ―――――――――っ!」
走り出て行ってしまった。
終わった。
いろいろな意味で。
いろいろな事が。
終わった。
名雪「あの子、かわいそう。祐一ヒドイよ。」
香里「まったく、女の子を泣かせるなんて・・・。」
誰のせいだ、誰の?
しかも周りのほかのお客さんからも痛い視線が飛んでくる。
完全に終わった・・・・・・何もかも。
名雪「イチゴサンデ〜」
香里「私も同じものを」
店員「はい、かしこまりました」
俺には構わず、すでに注文をしていた。
俺は何もせずに出て行った。
その日から俺は5日ほど引きこもった。(学校には行ったが)
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そのあと天野は2週間、口をきいてくれなかった・・・・・・。
この世には神も仏も存在しない・・・・・。
俺はそう悟ったのだった・・・・・・。
一言:この話もっと簡潔に書きたかったんですが、あれよ、あれよという間に長くなってしまいました。
美汐を出せたのがよかったです。一部で人気があるみたいなんですよね、美汐って。
それにしても香里は嫌なキャラになってますね〜(汗。面白くはなってますが・・・。
どこかでイメージアップを図らなければ。結構好きなんですよ香里も。
次あたりに舞・佐祐理さんメインで書こうかな〜なんて思ってます。