登場人物
その2
オクムラ家の人々
オクムラ自転車店は東京の下町、荒川区の都電沿いにある小 さな自転車屋。1階は作業場と台所、半兵衛さんが寝起きして いる6畳間、そして風呂とトイレがある。2階は息子夫婦の 部屋と、嫁の慶子がピアノを置いている部屋になっている。
「ワシなんか適当に生きてきた典型だな。時代に逆 らわず、無理をせず、自分の器量というものから踏 み出さない。言いたい事を言って、やりたいことを やる。人付き合いでも、妙に気を使ったり無理をし ないから、けっこう敵も作るし、味方もいる。それ が健康の秘訣だよ」
半兵衛さんの人物評
「息子は母親似だな。ワシと違って本心を口に出すタ イプじゃない。しかし、川の中に生えている水草のよ うなもので、枝葉は流されてはいるのだが、きっちり と根は張っている。みんな、ワシを頑固だというが、 死んだカミさんはもっと頑固だったよ。本音を口に出 さないってのがホントの頑固者だよ。だから息子も大 学じゃ出世はできんだろ」
誠一の嫁。34歳。山の手のお嬢さん育ちで音楽大学 を卒業。近所の子供たちにピアノを教えている。まだ 学生時代に誠一と登山サークルで知り合ったというこ と。清楚な感じのする美人である。下町の自転車屋、 しかも義理の父親と同居で、よく嫁にきてくれたもの だと言う人が多い。半兵衛さんの亡妻、幸子に良く似 ていると言う人もいる。男は母親のイメージに一生縛 られるものかもしれない。
「近所じゃ評判の良くできた嫁らしいが、ちょっと浮 世離れしたトコがあるネ。地球滅亡の瞬間になっても 『晩ご飯は何にします?』って聞いてくるような」



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