登場人物
その3
明智家の人々
オクムラ自転車と隣接する明智家は先代からの古いつき合いであ る。明智家の先代はリアカーひとつから身を起こし、一時は10 数台のトラックを抱える運送会社になった。リアカーやバタバタ と呼ばれていた三輪トラックの時代は、半兵衛の父親がお抱えの 修理工だったという。高度成長期にあたる娘の悦子の少女時代が 全盛期で、その後、婿養子に迎えた悦子の夫が投機に失敗し、現 在では会社は人手に渡っている。
明智 悦子(悦子ママ)
半兵衛さんは多くを語らないが、どうやら親同士に は、幼馴染の半兵衛と悦子を娶わせようと合意もで きていたらしい。ところが、半兵衛さんは派手好き の悦子にソリが合わず、おとなしい幸子と結婚して しまった。婿養子で迎えた夫を10年ほど前に事故 で亡くし、現在独身。日暮里の駅近くで「桔梗」と いうスナックを経営している。遠慮の無い連中は冷 やかし半分に半兵衛さんとの再婚を勧めているが、 悦子も半兵衛さんもその気は無いようである。
「悦子さんは、明るくて快濶でいい娘だったよ。美人だしな。しかし、ワシ はどちらかというと、太陽の明るさよりは、満月の明るさのほうが好きなん だな。それに結婚てのはタイミングだよ」
明智 真弓
悦子の娘。真弓と誠一も、その親の悦子と半兵衛さ んと同じように、仲の良い幼馴染だったらしい。半 兵衛さんはともかく悦子は、真剣に二人の結婚を望 んでいたようだ。誠一が慶子と結婚した後、真弓も 嫁いで一子を設けたが、離婚して実家である明智家 に子供の憲治とともに帰ってきた。離婚後、突然、 銀座に「鈴花」というクラブを開いてママに収まっ た。結構繁盛しているらしい。血は争えないと近所 では評判だ。
明智 憲治
真弓の子供。小学1年生。子供のいない誠一慶子夫婦は我が子のように可 愛がっている。母親、祖母とも帰りの遅い明智家では、夕方から憲治を慶 子に預けるのが普通になっている。おとなしいが利発な少年である。この 『絵日記』の『絵』は彼が描いている。



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