雨、のち・・・
ぽつり。
最初の一滴が空からこぼれ落ちてきた。
そしてそれは、すぐに激しい雨に変わる。
「やーん、降ってきちゃった〜」
叩きつけるような雨の中を少女は必死で走っていた。
少女のトレードマークである、大きな帽子が今は水を吸ってとても重かった。
片手で帽子を押さえて、もう一方の手でパートナーたるボナパルトを抱えて。
ミリーは雨宿りできそうな場所を探す。
最初はちょっとしたピクニックのつもりだった。
最近は大きな戦いもなくて。
朝はとても晴れていたから。
ボナパルトとともに同盟軍の城の周りを探索に出かけたのだった。
そして気がついたら、空はどんよりと鈍い色になっていた。
ぱしゃぱしゃと軽い水音をさせながら、走るミリー。
いつもならふわふわと揺れる髪の毛が、しっとりと濡れて肌に張り付いてきた頃。
ミリーはやっと雨をしのげそうな大木を見つけた。
「ラッキーだね、ボナパルトっ」
抱えたボナパルトに笑いかけながら、大木の下に走りこむ。
そして先客を見つけた。
「あ、フッチ君」
そこにいたのは、自分と同じように白い生き物―――ブライト―――を抱いたフッチだった。
目が合うと、フッチははにかんだように笑う。
ぽたぽたと髪から落ちる雫が、彼もミリーと同じように雨宿りできる場所を求めてここまで来たことを語っていた。
「フッチ君も雨宿り?急に雨が降ってきちゃって、大変だよね〜」
いいながらミリーは顔に張り付いた髪を軽くはらう。
小さな水滴が、いくつか零れた。
「えぇ、本当に。今日は天気がよかったからブライトと散歩をしていたんですけどね」
「あんなにお天気がよかったのにねー。私もボナパルトとピクニックしていたんだよ。でも急に雨が降ってきちゃったんで困っちゃった」
ねー、とボナパルトに笑いかけるミリー。
言葉とは逆の明るい笑顔に、フッチが笑みをもらす。
「雨、早く止むといいですね」
「うん、そうだよね〜。早くお城に帰らないと、風邪引いちゃうかもしれないしね」
その言葉を言い終わらないうちに、ミリーが小さなくしゃみをした。
反動で腕に力がこめられたらしく、ボナパルトがきゅっと鳴く。
「あ、ごめんね。ボナパルト」
ボナパルトの機嫌を取るように撫でるミリーを、フッチが覗き込む。
「寒いですか?」
「うん?大丈夫だよ。ボナパルト抱いていると暖かいし〜」
ぎゅー、と先ほどよりも力をこめて抱きしめるミリー。
それでも濡れた身体は冷えていく事を、ミリー同様濡れたフッチは分っている。
「えっと、じゃぁブライトも一緒に抱いていてくれますか?」
「?」
「ブライトも一緒に抱いていると、もっと暖かいですよ。僕、その間に城に戻ってタオルとか取ってきますから」
「え?ダメだよフッチ君。こんなどしゃ降りの中を行ったら、風邪引いちゃうよ」
そう言って、ミリーの小さな手がフッチの腕を掴む。
「でもこのままだと、ミリーさんが風邪を引いてしまいますよ。女の子を風邪引かせたら、僕ハンフリーさんに怒られてしまいますし」
やんわりとミリーの冷たい手を握り返すフッチ。
「うぅ〜〜〜。でもぉ・・・」
なおもしぶるミリーにブライトを預けようとしたその時。
「あ、そーだっ」
ミリーが嬉しそうな声をあげた。
不思議そうに自分を見つめるフッチに、ミリーは笑いかける。
「風邪を引かないですむいい方法を思いついたんだよ」
そう言ってミリーは左手をかざす。
彼女の左手に宿る山ねずみの紋章が、まばゆい光を放った。
そして。
巨大化するボナパルト。
「・・・ミリーさん?」
呆然とするフッチをよそに、ミリーは巨大化したボナパルトの口をこじ開ける。
「さ、フッチ君も早く」
何が早くなんだろう、と首をかしげていると。
ミリーがにっこりと笑ってフッチをボナパルトの口の中に引きずり込んだ。
「●×■▲!!??」
あまりの事に言葉が出ないフッチ。
対照的にミリーはにこにこと笑ってその中で横になる。
さすがに口の中では、高さがあまりないのである。
「ね、ここなら暖かいから二人とも風邪引かないでしょ?」
「それはそうですけど・・・」
歯切れの悪いフッチの言葉にも、ミリーは笑っている。
「大丈夫だよ、ボナパルトは私たちのこと食べちゃったりしないから。いつもボナパルトのお口の中でお昼寝してるし。ね、だから雨が止むまで二人で雨宿りしていようよ?」
無邪気な笑顔を向けられて、フッチは苦笑する。
そうですね、とつぶやいてミリーの隣で横になった。
こんな雨宿りも悪くない、と思った。
■ あとがき
SS書くのが久しぶり〜。
だからでしょうか、なんか非常に支離滅裂な気が・・・。気のせいである事を願っているんですけど(汗)。
胸を張ってフチミリだっ、って言えるものを目指したつもりなんですけどね・・・。やっぱりカップリングものは難しいデス。
05/08/01 written by Youko.K.