祝福
きゅぅぅ。
手に抱いたブライトが小さく鳴いて、フッチは視線を手元に移した。
沈みかけの太陽の光が、真っ白なブライトをほのかに赤く染めている。
夕暮れ時の静かな風が、フッチの頬を撫でてすぎる。
フッチがいるのは、出来たばかりの展望台。
彼は最近、時間さえあればこの展望台に上っていた。
地面が遠くに見える程の高さのそこは、竜騎士だったフッチにとってはとても居心地のよい場所なのである。
髪を揺らす風の音が、優しい過去を思い出させる。
この空に近い場所で。
空をかけたときと同じ風を受けていると、失くしたものが還ってきたような気がする―――。
「ごめん、ブライト。退屈だった?」
自分を見上げてくる小さな生き物に、フッチは笑いかける。
軽く首をかしげるような仕草をして、ブライトがもう一度鳴いた。
何かを知らせるように。
そしてその声に重なるように。
「あ、フッチ君。見ーつけたっっ」
フッチの耳を、甘い声がくすぐった。
振り返った先には予想通りの少女が笑っていた。
少女の笑顔につられたように、フッチの表情も綻ぶ。
「どうしたんですか?ミリーさん」
「フッチ君を探していたんだよ〜。お部屋にいなかったから、絶対ここだと思ったのー」
よいしょ、と小さな掛け声をかけて、ミリーが展望台に昇るための最後の階段を上りきる。
そして。
「フッチ君、ブライト君、はいっ」
ミリーが満面の笑顔で、手に抱えていたものをフッチに差し出した。
それは大輪の黄色い花。
「・・・ひまわり?」
無意識に差し出したフッチの手の中に、ミリーが優しい手つきでひまわりを渡す。
一瞬だけ触れたミリーの指が、なぜが印象に残った。
「うん。お城の外をお散歩してたら、ひまわり畑を見つけたの。すっごく綺麗だったから持ってきちゃった」
華やかに笑ってボナパルトに目配せをするミリー。
そしてフッチの顔を覗き込む。
「もしかしてフッチ君、ひまわり嫌い?」
心配そうに覗き込んでくる大きな瞳に、フッチは慌てたように首を振る。
「そんな事ありませんよ」
「よかった〜。ちょっと心配だったの。フッチ君のために持ってきちゃったのに、フッチ君が嫌いだったら悲しいもん」
「・・・僕のため、ですか?」
戸惑いを含んだフッチの声に、ミリーは明るく答える。
「そうだよ。ねぇ、フッチ君。ひまわりには人を幸せにしてくれる力があるって、知っていた?」
「人を、幸せに?」
「うん。ひまわりってお日様を追いかけて、お日様を一杯浴びて咲く花でしょ。それはね、人を幸せにする力をお日様からもらっているからなんだって」
そう言って、フッチに渡したひまわりに視線を移すミリー。
「だからね、フッチ君に渡したかったの」
「・・・え?」
「だってフッチ君、ここにいる時いつも悲しそうな顔しているんだもん」
無邪気なまでの言葉が、フッチの胸に沈む。
「そんなこと・・・」
ありませんよ、と続けようとしたが出来なかった。
・・・その答えを自分は知っているのだから。
きゅう、と唇をかみしめて俯くフッチ。
そのフッチの顔を包み込むように、ミリーが彼の顔に手を添えた。
柔らかな手に促されるようにあがった視線が、少女のそれと絡み合う。
少女が屈託なく笑う。
「フッチ君が悲しそうだとね、ブライト君も悲しそうなの。それを見るとミリーもボナパルトも悲しいの。だからね、ひまわりを持ってきたの。フッチ君が、幸せになるように」
幼く、甘い、温かな言葉だった。
ただそれだけの言葉で、胸に沈んでいた切なさが溶けていく。
「ひまわりがきっと幸せにしてくれるよ。だから、もう悲しまないで」
少女の眩しいほどの笑顔に、フッチは静かに頷いた。
■ あとがき
えぇっと・・・。私は一体何が書きたかったのでしょうか。
なーんか、最近ミリーちゃんがまともにかけてないような気がします。
てかミリーちゃん、こんなに鋭いはずないと思うんです。
天然というかノーテンキというか・・・それが紀野のミリー像なんですけどねぇ(溜め息)。
07/28/01 written by Youko.K.