キレイナ人


 その日テレーズは一人で食事をとっていた。
 城内は安心と言うことで、シンも最近は時々席を外すことがある。
 午前中の仕事が長引き、昼食には遅い時間だったので、レストランは人がまばらだった。
「ねぇ、この席空いてる?」
 ふいに声をかけられて、テレーズは驚いた。
 顔を上げると長身の青年がにこやかな笑顔を向けていた。
 トラン共和国大統領子息シーナだった。
「シーナ殿・・・」
「ねぇ、この席空いてる?」
 子供っぽさの抜けていない無邪気な笑顔でもう一度聞いてきたシーナに、テレーズは微笑む。
「えぇ、座りますか?」
「座るともー」
 明るい返事を返して、しなやかな動作で彼はテレーズの前に座った。
 にっこりとテレーズの瞳を見て笑う。
「よかった、こんな時間だから誰もいないかと思ったんだー。俺一人で食べるのって好きじゃなくってさー」
 そう言って、プレートをつつく。
 そんな彼を見ながら、テレーズは紅茶のカップに口をつけた。

 

「テレーズさんってさ、いつもこの時間にご飯食べてるの?」
「いつもではないですよ。今日は仕事の区切りがつかなかったんで、こんな時間になってしまって」
「へぇ〜、お仕事大変だね。俺なんかカイルからお呼びがかかんないと暇でさ〜」
 ニコニコと人好きのする笑顔を浮かべながら、シーナが話をする。
 テレーズは主に彼の話を聞いて相槌を打つだけだったが、彼との会話は飽きることがなかった。
 微笑ましい彼に、自然と笑顔を浮かべながら話しをしていたらしい。
 シーナが目を細めた。
「?」
「いや、テレーズさんってそんな顔で笑うんだなって」
 何を言われたのか咄嗟にわからなかった。
 その言葉を理解して、テレーズの顔は瞬時に真っ赤になる。
「そ、そんなに変な顔で笑っていましたか?」
 顔に手を当て細い声で尋ねると、シーナはからからと笑った。
「そーいう意味じゃないんだよ。綺麗な笑顔だなーって思って。俺、テレーズさんの笑顔見たの初めてだから」
「そうですか?そんなにいつも厳しい表情をしていますか?」
「テレーズさんって面白い人だな〜」
 彼が何を面白がっているのかさっぱりわからなかった。
 とにかく自分を落ち着かせようと、冷めた紅茶を口にする。
 そんなテレーズの行動をシーナは面白そうに見つめていた。

 

「そういえばさ、テレーズさん」
「なんですか?」
 何とか落ち着きの戻った声で答えると、シーナはいたずら好きの猫のような目をテレーズに向ける。
「いつも一緒にいる、あのシンとかっていう男はどこにいったの?」
「シンですか?今日は剣を鍛えてもらいに行くといってましたけど」
「へ〜。テレーズさんっていつもあいつと一緒にいるでしょ?あいつ何者なの?」
「彼は私のボディーガードをしてくれているんですよ」
「いや、そー言うんじゃなくてさ。あいつってテレーズさんのカレシ?」
 さらりと言われた言葉に、テレーズは白い顔を再び真っ赤にする。
 つい声を荒げてしまった。
「シーナ殿!!」
「あれ、図星?」
「そ、そんなんじゃありませんっ」
「ホントに?」
「本当です」
「じゃ、今テレーズさんってフリーなんだ。俺立候補していい?」
 にこり、と子供っぽさが抜けない表情でシーナが笑う。
 虚をつかれたテレーズに向かって、シーナが言葉を繋いだ。
「テレーズさんのカレシ。こんなにキレイナ人が一人なんてもったいないよ」
 キレイ?
 シーナが誰のことを言っているのかよくわからず、テレーズの動きが止まってしまう。
 それを見てシーナはくすりと笑う。
 そして真剣な眼差しをテレーズに向けた。
「俺本気だから。こんなにキレイナ人が一人ってわかっちゃったから、引かないよ。だからさ、テレーズさんも俺のこと本気で考えてみてよ」
 ふっと、またシーナの瞳に明るさが戻る。
 食べ終わったプレートをテレーズの分まで持って立ち上がる。
 まだ動けないでいるテレーズにウインクをしてみせた。
「じゃあねー」
 軽い言葉と身のこなしで、彼はテレーズから離れていった。
 テレーズの心に嵐を残して。

 

 

 ■ あとがき
 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい(以下エンドレス)。
 シーナファン並びにテレーズファンに殺されそうな話です。
 しかも書いた日とアップした日が2年ほど違っています・・・(つまりあまりの危険物ゆえアップを控えていた)。
 こんなもんアップしてどうするんだって感じですが、自分を戒めるため(あとネタが無いので)アップしました。
 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい(以下エンドレス)。

 

戻ります

 

 

10/18/02 written by Youko.K.