風は穏やかだった。
 空は晴れわたっていた。
 太陽は暖かい陽射しを降りそそいでいた。
 けれども、それは敵を前にした子供達にはまったくもって関係ないのである。

すきんしっぷ


「んきゃっ」
 少女の口から悲鳴が漏れる。
 モンスターの一匹が、ミリーの足に牙をつき立てたところだった。
「ミリー、大丈夫か?」
 耳ざとくミリーの悲鳴を聞きつけたシーナが、モンスターの群れの中から素早く戻ってくる。
 バランスを崩して座り込んだミリーが、シーナを見上げてうなずく。
「大丈夫だよ。でも・・・怒ったんだからねっ」
 次の瞬間。
 二人の目の前のモンスター達は、烈火の紋章に吹き飛ばされたのだった。

 

 ぷすぷすと、大地から煙が立ちのぼる。
 ミリーが烈火の紋章を発動させた名残がそれだった。
 ノースウィンドウの古城周辺に、また黒焦げの地点が出来上がってしまったのである。
「相変わらず凄い威力だな、ミリーの攻撃魔法。全部吹っ飛んでいっちまったよ。・・・立てるか?」
 感心したような、半ばあきれたような声で言って、シーナは座り込んだミリーに手を差し出す。
「ありがとう」
 小さな手がそれを掴むと、軽く引っ張ってミリーを立ち上がらせる。
 瞬間。
 ミリーの顔が痛そうに歪んだのをシーナは見逃さなかった。
「足、痛むのか?」
「んー、でも平気だよ」
「傷見せてみな。ちゃんと手当てしとかないと。女の子の身体に傷がついちゃいけないからな」
「・・・何で?」
「そりゃ女の子は、綺麗なのが一番だから♪」
 軽い笑顔で言ってのけて、ミリーをもう一度座らせる。
 自分もかがみこんで手早く傷口に薬を塗る。
「シーナ君って、手当て上手なんだね」
「女の子の手当てだけは、神業と言われているぜ」
 そうおどけてみせた時には、ミリーの足の傷はきっちりと巻かれた包帯の下に隠れていた。
「ハイ、終了。まだ痛むか?」
「ううん、もう大丈夫。ありがとうね」
「じゃ、今日はもう帰るか」
「え、もうー?まだお昼過ぎだよー?」
 不服そうに頬を膨らませるミリーに笑い返してシーナは立ち上がった。
 ぽんと、ミリーの頭を叩くと白い帽子がぽすんと音を立てた。
「早く帰って、ホウアン先生にきちんと手当てしてもらわないといけないだろ?」
 そう言って、ミリーに手を差し出して立たせてやる。
 ミリーはまだ不服そうだった。
「久しぶりのピクニックだから、もう少し遊ぼうよ。この頃ずっと戦争ばかりで忙しかったんだし。ちゃんとシーナ君が手当てしてくれたんだから、大丈夫だよー」
「だーめ。さっきも言っただろう。女の子の身体に傷でも残ったら大変だろ」
 帰るぞ、とキッパリ言って握ったミリーの手を引いて歩き出す。
 膨らんだ頬のまま、ミリーもおとなしく歩き出した。

 

 少女の足に合わせて五歩歩いた所で、手を引いていた少女が歩くのをやめた。
 急に生じた抵抗に、シーナは訝しげに振り返る。
「ミリー?」
 振り返ったとたん、背中に小さくて柔らかいものが触れてきた。
 否、降ってきた。
「うわっ!?」
 とっさの事で、シーナは何が起きたのかつかめなかった。
 バランスを崩さないようにするのが精一杯だった。
 首にしなやかな腕が絡んできて、やっと少女が背中に飛びついてきたのだと理解できた。
「・・・お前ねぇ」
 背中にミリーの体温を感じながら、シーナが溜め息をつく。
 少女の中でも小柄な方であるミリーが重いわけではないが、それでも突然飛び乗るのは遠慮してもらいたい。
 理由を聞くつもりで顔だけ後ろに向けようとすると、ミリーの腕が少しだけ先ほどよりきつく絡まった。
 シーナの耳元にひそやかな吐息がかかる。
「足が痛くて歩けないの。お城までおぶっていって・・・」
 すねた声がいつもより幼くて、シーナはつい笑ってしまう。
「はいはい、お嬢様」

 

 

 ■ あとがき
 あとがきというか言い訳というか・・・。ごめんね、寿々維ちゃん。
 貴方からのガンバレイラスト(は〜と)は、思いっきり私の妄想を刺激してやまなかったのよ。
 勢いあまって、こんなものまで書いちまったよ。勢いって恐ろしい。
 ちなみに、本拠地近くに手強い敵なんかいないだろ、という突っ込みは無しにして下さい(笑)。

 

 

戻ります

 

 

02/27/01 written by Youko.K.
07/27/01 rewrite