人々はその日の事を後々までこう語り継いだ。
 血染めの惨劇、と。

 

協力攻撃2

 

 天気は快晴、気温は良好。
 そんな日はウィングホードのS氏以外、心が踊るというもの。
 子供達ならなおさらだ。
 だから軍主はのたまった。
「ムササビ狩りに行くっ」
 と。
 選ばれたメンバーは前列がカイル、ヒックス、シーナ。
 後列を固めるのはメグ、テンガアール、ミリー。
 引率者のいないパーティーに軍師は顔をしかめるが、サウスウィンドウ周辺のみという条件でしぶしぶ子供達を送り出した。
 こうして、ムササビ求めてのピクニックが始まった。

 

「なぁ、ヒックス」
 パーティーを引率するように歩くのはヒックスとシーナ。
 軍主と美少女達はその後ろを、楽しげに話しながらついてくる。
「なんですか、シーナさん」
 何事につけても腰が低いヒックスは、年下のシーナにまで敬称をつけている。
 そんなヒックスに、にっと笑いかけるシーナ。
「見られるかな?」
「・・・何がですか?」
 意図を理解していないヒックスに、シーナは肩を落とした。
「だ・か・ら・さぁ〜、美少女攻撃」
「え?でもテンガの話だと、あれはまだ練習中だって・・・」
「でもあのメンバーだろ?俺の勘だと、もうほとんど完成してると思うんだ。
今日はその結果を試すってとこじゃないのかな」
「美少女攻撃ですか・・・」
 どこか、憂鬱そうなヒックスの言葉。
「何、お前見たくないのか?」
 心底不思議そうなシーナに、ヒックスは曖昧な笑みを返す。
 別にそんな訳ではない。
 ただテンガアールが自分以外と協力攻撃していると思うと、複雑なのだ。
 例え自分たちの攻撃が、同盟軍内で悪評高いものだったとしても。
 戦士の村攻撃は、ヒックスには唯一の協力攻撃なのだから。
 なによりイタければイタいほどテンガの愛を深く感じる、ヒックス20歳であった。
 攻撃された時を思い出して、顔がにやける。
 ヒックスのアヤシイ雰囲気に、反射的にシーナが数歩下がった時。
 後ろを歩いていた軍主が鋭い声をあげた。
「みんな配置に!ムササビだよっ」

 

 現れたムササビは6匹組。
 だが今の彼らのレベルでは、ムササビなど取るに足らない相手だ。
 体当たりしてくるムササビたちを、余裕でかわす前列3人。
 後列の少女達にはブルーリボンを装備させているので、攻撃を受ける心配もない。
 シーナとヒックスがムササビの中に踊りこもうとした刹那。
 軍主が叫んだ。
「みんな、準備できたっ?」
 後列から、華やかな返事。
 シーナとヒックスが気づいた時には、全てが始まっていた。
 後列を固めるはずのLレンジの少女達が、前列よりもさらに前に進み出る。
 愛らしい笑顔を浮かべ、ポーズを決め。

 ―――虐殺は始まった。

「こ、これは・・・」
 シーナのつぶやきは、荒野にこだまする物騒な音にかき消される。
 哀れなムササビたちは、その華麗な凶行の前になす術もない。
 そして、全てが終わった時。
 ムササビと共に倒れる青年がいた。

 

 どさり、と力なく倒れたのはヒックスだった。
 倒れた彼の下で、影が伸びるように広がっていくものがあった。
 血、である。
「ヒックス!?」
 テンガアールがヒックスに駆け寄る。
 その間にもどくどくと血溜まりは広がっていく。
「どうしたの!?しっかりしてっっ」
 テンガアールがヒックスを抱き起こしたが、意識がないのは明白だった。
 血まみれの顔に、テンガアールは怒りに震える手を添え揺さぶる。
 テンガアールが揺らす度にヒックスから血が飛ぶ様は、はたから見るとかなり哀れだ。
「一体ヒックスに何があったんですか、カイルさんっ」
 ヒックスの血を撒き散らしつつ、怒りに燃える瞳で軍主に答えを求める。
 いいかげんにしないと、出血多量でヒックスが他界しそうである。
 カイルは何も答えずに、ただ堪えるように青空を見上げた。
 代わりにシーナに視線を移すと、彼はヒックスを見やり、軍主を見やり、そして口を開いた。
「ヒックスは多分、アタリドコロが悪かったんだろうな・・・。それよりみんな、今日はもう帰るぞ」
 誰もが、その言葉にとりあえず頷いた。

 

 少女達が帰り仕度をする様子を、シーナは離れてみていた。
 軍主も、少女達から少し離れた場所で空を仰いでいる。
 テンガアールは何があったか、と聞いてきたが。
 何があったかは一目瞭然。
 シーナは深々と溜め息をつく。
 極度の興奮による、鼻腔内毛細血管の破裂。
 それがヒックスの流血の原因。
 ついでに言うならば、軍主はそれの一歩手前なのであろう。
 上を向いたまま時々鼻を強く押さえているところから、推察できる。
 免疫のない青少年達には、美少女達の生足チラリズムは非常に刺激が強かったのだ。
 ・・・モロ見えもチラリズムに入るのなら、だが。
「あーあ」
 つぶやいたシーナの声は、荒野の風に消えた。

 

 翌日。
 血染めの惨劇の事例をもってして、軍師により美少女攻撃の使用禁止が決定された。

 

 

 ■ あとがき
 な、何が書きたかったのだろう、私は・・・(汗)。
 多分、美少女攻撃を最初に見たときの衝撃を表現したかったんでしょうね・・・。
 それにしても、ヒックス哀れ。

 

戻ります

 

 

04/16/01 written by Youko.K.