『B-A』










フッ、ハーッ!





僕は大きく深呼吸してから、

佐藤さんの家の電話番号を押した。





トゥルルルル・・・

トゥルルルル・・・

トゥルルルル・・・






呼び出し音が1度鳴る度に
緊張が高まる。


頭の中では
言うべき言葉がぐるぐる回っている。





いっそのこと
佐藤さんが留守なら…



そんな情けない気持ちさえ
芽生えかけた7コール目、



不意に
電話が繋がった。






「もしもし。佐藤です。」





「あ、あっ、あっ、あ、あの、田中です。」



何から切り出そう。


考えているうちにきっかけを失い、
頭が混乱する。





そのうち、

大混乱になる頭は
全く何も話さないうちから

勝手な結論を出した。




もし佐藤さんが
サイン帳を読んでいてくれんなら、

すぐ電話に出たはずだ。




こうなると、

ますます
話し始めるタイミングはない。






「田中君。大切な話って何?」




僕の予想と全く逆の言葉に
一瞬喜んだ。



しかし、よく考えれば
この言葉はもっともっと悪いのだ。



サイン帳を読んだのにもかかわらず、
電話になかなか出てくれなかったという事は、

僕の申し入れは
迷惑だって事になる。







まだ僕は
何も話していない。


それなのに、
全て事は済んでしまったのか?







いや違う。


僕はけじめを
つけなければいけないんだ。

元々結果は二の次三の次。



ここで踏ん張らなければ、
一生後悔し続ける。



目をつぶって、
心の中で3つ数える。





1、2の 3。





「佐藤さん、

 僕、あなたの事が
 三年間ずっと好きでした!

 卒業式の後、
 『田中君ともっと早く仲良くなれれば良かった』
 って言われた時、すごく嬉しかった。

 それ伝えたくて電話かけました。


 本当にありがとう。」




一旦動き出した口は、

3年間ためていたモヤモヤを
一気に吐き出した。





佐藤さんの答えは覚悟の上だ。


あとはそれを受け止めれば
僕は僕から卒業できる。





しょっぱい卒業証書だけど、


それがけじめか。














「…私も、ずっと田中君のこと、見てた。」











僕は耳を疑った。





天国から地獄には
慣れっこだが、

地獄から天国なんて事は・・・





今回も、なかった。







「でも、遅すぎたみたい。

 何だか上手くいかないね。

 こんな事なら、
 私、もっと早く勇気を出せば良かった・・・。」




佐藤さんは涙声だ。





「サイン帳見た時、すごくドキドキした。


 電話待ってる間、落ち着かなかった。


 ベルが鳴ってる間、迷ってた。



 私も田中君に

 大事な話があったから。






 田中君・・・私・・・。」












佐藤さんから、


衝撃の告白を受けた。











<A>
「お父さんの仕事の都合で、海外に引っ越すの。」


<B>
「あと、半年の命なの。」





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