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essay
扱いづらいヒト②〜友達Nの場合〜(2.17.2003)
「Nちゃん、最近微妙やねん…。」
突然Kから発せられた言葉は我が耳を疑わせるものだった。チョット聞いてよ、おもいっきり生電話か、コレは?って。みのじゃないよ、俺。
「なんでだろう〜、なんでだろう〜、ななななんでだろう〜?」
テツトモの唄がちょうどファミレスの有線で流れていた。この唄が場の雰囲気に合っているのか、いないのか。果たして真相はいかに…。
NとKは同じ学部で同じゼミ。ずっと仲良しだと思っていたのに、今はもう違うかったのか。頭の中のシナプス達がざわめいた。
慌てて耳の穴をきちんと掃除して、かわいい耳クソ達を眺めながら、話を興味深く聞いていると、どうやら不仲ということではないらしかった。
(よかったぁ、ドラえもんとのび太の関係やん=仲良し。)
しかし、微妙なことには変わりないのだとか。
(え?ドラのびじゃないの?じゃあ、織田裕二と平井堅みたいな関係かな、うわぁ微妙すぎ…。微妙なのかどうかも微妙な元19の2人が妥当かな。)
その原因はNの性格にあると聞いた。
Nと俺は高校3年からの付き合い。最近はほとんど会うこともなかったけれど、少し変わった奴と認識している。
悪い奴じゃないけど、時々、「!?」って思うことがあった。Nはビックリマンだったのだ。
それほど交流が深いわけでもなかったが、大学の数少ない友達の一人である。
最近知った情報によると、Nは俺のおじさん(中学教師)の教え子なんだとか。世間って狭いなって実感。やはりビックリマンだった。
そのNが今どうしてるかなんて全然知らなかったのだけれども、Kの告白でNが危機的状況にいることが分かった。
あまりにも突然の告白でびっくりしたせいか、右の鼻穴から鼻クソ1号がKに飛び出していった。1号は無事にKの顔の頬辺りに着陸した。
しかし、1号はKに気付かれたようだった。一瞬ムッとしたときのKの顔は一生忘れられそうにもない。
Nの危機的状況=ゼミでハミっている
信じられなかった。まさか、そんなことが…。ぐぅの音もでないとはこのことか。使い方違うかも。
俺のゼミでは、ハミることなんて絶対にない。なぜなら全員がそれぞれ向けているベクトルの向きがバラバラで交差することも有り得ない。
3次元とか4次元の世界では言い表すことができないのが我がゼミの特徴なのだぁ。
自慢にもならないが、それがゼミだと思っていたのに、NとKのゼミは初めこそ俺のゼミと変わらない状況だったのにもかかわらず、
幹事であるKの必死の努力で改善できて皆仲良しになれたんだとか。
その努力がKのゼミにおける絶対的信頼と地位を確立させ、明るい性格も手伝ってKは一躍人気者になったらしいのだ。
まさに順風満帆な学生生活である。Kは出来杉くんだったことがわかった。
一方、NはKの友達ということでコバンザメ式に人気者になるかと思ったら、全く別の方向へと歩み出したらしい。
自力でエサを見つけることにしたとのこと。
Nの性格はどちらかと言えば、ひきこもりがちで、自分の考えが正しいと思っている、かなりマニアックな奴である。
2ちゃねらーに違いないと思われ。あぼーん。鬱…。
それが原因なのか、ゼミでは周りからキモがられ始めたそうだ。
今では、NはKが話し掛けなければ、教室の一番前の席で本をずっと読んでいるんだとか。
(ひぇぇぇ、そんな奴やったかなぁ。あんま知らないけどさぁ。知る限りでは、鼻クソは食べてなかったよ。保障します。)
Kは顔に飛び付いた鼻クソを気にせず話を続けた。
「今、俺みんなからNちゃんと話せるのお前だけやでって言われてんねん。
みんなとおもろい話とかしたいからNちゃんと一緒におらんねんけど、Nちゃんの方見たら一人で本読んでるし、
前からの友達やから気になって話し掛けに行っても誰も来ないねん。
俺はみんなで盛り上がりたいのに、Nちゃんとおったら我慢しなあかんねん。」
何とも切実な状況だ。Kは今、両挟みな状況で苦しんでいる。
都会に住むか、田舎に残るかみたいな。過疎化に取り残されたくないような感じの話。
しかし、今は鼻クソのことが気になってしょうがないみたいだ。
ムズムズしている。取りたかったら取ればいいのに…。付けたのは俺だけどさぁ。
ところが、Kは取らずにさらに話を続けた。(うそぉぉん…。)
Nに対して周りが思っていることなどを聞かされて、耳クソのない良く聞こえるはずの耳が辛くなってきた。
ありえない…。ヒクヒク、ヒクわ…。ショボーン…。テーブルに置かれていた耳クソ達が風で明後日の方へ飛んで行った。
そんなの自分が言われたら、清水寺から三段跳びで世界記録狙って飛び降りて死んでやる、いやまじで。
この状況を打開する為に、Kは朋ちゃんにオリコン1位を取らせるかのように必死でNをみんなの人気者にするように頑張っている。
すごい努力じゃない?普通無理だよ。朋ちゃんが1位だなんて、安室ちゃんでも無理なのにさぁ。
しかし、Nは全くそういった状況に気付いてないらしく、どうやらNは周りの空気を読めない人らしいのだ。確かに、空気を読めない人なのかもしれない。
ゼミで行ったカラオケの話も聞かされたけど、それは足の小指を角にぶつけるよりも痛いなぁって思った。
でも自分にも起こりうる話なのかもしれないと考えると空気を読むことは大事であろうとそそくさとメモにした。
頂いちゃいました、☆3つぅぅ。
1時間ほど経った頃、この話は終了した。車に乗って帰ろうとした時、ラジオから再びテツトモの唄が流れ出した。
その頃には、Kは顔に付いた鼻クソのことをすっかり忘れていた。そして、それは知る限り、別れる時にも乾燥した鼻クソはしっかりと付いていた。
鼻クソ1号は最期まで自分の役目を果たしていたのだ。よく頑張った。
しかし、鼻クソのことを何も言わずに別れた俺、気付いていたのに忘れてしまって最後まで取らなかったK。
対称的な二人の背後で、ラジオから流れるテツトモが空しく冬の夜空に響いていた。
「なんでだろう〜、なんでだろう〜、ななななんでだろう〜?」