プロローグ



 この世界には、“幻獣”と呼ばれる生物が生息している。“幻獣”は自然の生命力・・・火・水・地・風・雷・光・・・そして闇・・・それらに何らかの影響で魔力が備わり、この世界に現れた生物のことである。 人間達はこの“幻獣”と、契約を交わし、パートナーとすることを代々、行ってきたのであった・・・。
 また、この“幻獣”の中には神に近い力を持つ、特別な六匹の“幻獣”も存在する・・・。
古来より人間と“幻獣”は巨大な力を持つこの六匹の“幻獣”を“神獣”と呼び、崇めてきた。“神獣”はこの世界に六つの世界を創り、それぞれの国の守護神となり、その国を守ってきた。そのため 、人間と“幻獣”は安定した世界の中で生活することが出来た。
だが“神獣”の巨大な力の影響で元々一つだった大陸は六つに分けられ、それぞれの国で異なる文明や文化が生まれることになってしまった・・・。


 そんな歴史に残るほどの天変地異が起こってから早くも数百年が経とうとしている・・・。分かれてしまった大陸の一つに、緑の生い茂った森が一際目立っている大陸があった。数百年という長い年月 を経て、木の一本一本はどれも太く、大きく育っている。よく育った木の生えている森には動物達の鳴き声や草を掻き分ける音などが聞こえてくる・・・。
まぁ、そんな森にも人が歩けるような道が舗装されている。この林道は一本しかないので、町へ行く多くの旅人は、この道を通るしかないのであった・・・。


そんな森の林道を少年と少女が歩いていた。普通ならこんな夜明けの時刻に森の中を歩く人間はいないのが当然なのだが、この二人は一晩中、森の中を歩いていたらしく、歩いているうちに、空が明るくなり始めた ようであった。一晩も歩き続ければ、大抵の人間は疲れきってフラフラのはずなのだが、少年『霧邑氷雨』(きりむらひさめ)は旅慣れしているようでほとんど疲れていなかった。
「おい!そんなに早く行くな!迷子になるぞ!!一体何をはしゃいでいるんだ?迷檎・・・。」
氷雨は自分の隣ではしゃいでいる少女『昧度迷檎』(まいどまいご)に呼びかけた。小柄な体に反している程の大きな帽子をかぶっている迷檎はニコニコしながら答えた。
「だってぇ〜、あそこに美味しそうなリンゴがあるんだも〜ん!」
そう言いながら 木になっている赤い大きなリンゴを指差していた。
「街に行けばリンゴくらい沢山あるって・・・」
氷雨は呆れ顔で言った。
「リンゴは“生”が一番なんだよ!おにいちゃん!」
「腐ったリンゴなんて食わねぇだろ・・・普通・・・」
「私、一回だけ食べたよ!」
「なに!?大丈夫だったのか?」
「大・丈・夫!三日間寝込んだだけだから!」
迷檎は何も無かったかのように笑顔で答えた。
「迷檎・・・」
「ん!?なぁ〜に?」
「いや・・・、何でもない・・・」
(大丈夫じゃないじゃないか!!)と、氷雨は言いたかったが、コイツじゃ聞かないだろうと思ったので我慢した・・・。
「いいか!迷檎!」
「何?おにいちゃん?」
「お前は知らない場所に来ると必ず迷子になる!(知っている場所でもそうだが・・・)だから、なお更こういう森の中では気を付けなければいけないんだ!・・・でも、あり難いことにこの 林道は一本道のようだから、迷子になることはないと思うけどな・・・(安 お前のことだ・・・しっかり俺の後について来い!・・・って聞いているのか!迷檎!!」
ふと、氷雨は振り返って、自分の後ろにいるはずの迷檎を・・・
「って、い、いねぇ〜!!」
迷檎は後ろにはいなかった・・・。
「ど、どこ行ったんだ?」
辺りを必死に探す氷雨・・・。少し冷静になって、辺りを慎重に見渡すと・・・なんと今まで一本道だったはずの林道に“獣”が通っていったような新たな“道”が出来ていたのであった。・・・。
「あっ・・・」
氷雨は今、作られたばかりの“道”を見て、しばらく呆然と立ち尽くしていた・・・。

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