月替りの「お題」からメンバーが
自由な連想でエッセーをつづります。

ものの見方・感じ方に、
それぞれの経験や個性があらわれます。

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今月のお題:「仕事」
隅 恵子 いちばんおもしろかった取材2003
藤木 俊明 一緒に仕事をしたい人と言われたい
床井 順子 あぶらギッシュな一夜
床井 順子 ぶるぶるな一夜
中保 裕子 能ある鷹は爪を隠す



いちばんおもしろかった取材2003-----隅 恵子

去年の仕事で最も印象的だった取材は、鹿児島大学医学部附属病院でした。ここでは、投薬や医療処置がバーコードでコンピュータ入力でき、薬や医療材料の購入や在庫管理もコンピュータ管理されています。日本の病院で現在、ここまでコンピュータ管理できているところはありません。

コンピュータというと「人の手の温かさを感じない」という方が少なくないかもしれませんが、病院にコンピュータが入っても患者さんへの接し方が変わるわけではありません。カルテや診療活動の記録と専門家としての判断の支援を、コンピュータがしているだけです。

言い方は悪いかもしれませんが、病院は複雑で高度な「工場」みたいなところです。劇薬や放射線を扱う部署があり、スタッフも含めて感染のリスクが隣り合わせにあります。患者さんという名の子供や高齢者が出入りし、入院患者の衣食住を引き受け、データには守秘義務があります。

その「工程」は一般メーカーとは比較にならないくらい複雑かつ高度で、病院こそコンピュータがいち早く導入される必要があったと思うのです。しかし、「工程」の複雑さと、営利企業ではないので効率を追求する意識に乏しくて、コンピュータ化が遅れています。

だから、鹿児島大学病院は全国のモデルになっているのですが、いちばんおもしろかったのは、「在庫管理のコンピュータ化で平準化が起こった」という医療情報部・宇都由美子先生のお話でした。

各セクションの在庫状況がコンピュータ上でオープンになったら、在庫の適正化を呼びかけなくても、飛び抜けて在庫が多いとか極端に少ないところがなくなったというのです。理由は、担当者が自発的に「平準化」を心がけるようになったから。

情報がオープンになると平準化が起こるのは、在庫管理だけの話ではないはずですよね。よい平準化ばかりではないかもしれませんが、情報化が社会を変えるってこういうことなんだなーと、とても納得したのでありました。

一緒に仕事をしたい人と言われたい-----藤木 俊明

人をほめる言葉は様々である。
「可愛い」とか言われて、まあ嬉しくないことはないが、ちょっと困る。第一もう40歳過ぎのオヤジなんだしぃ。「素敵」とか言われてもちょっと困る。むろん、常盤貴子なんかに言ってもらえれば、布団の中で100日ぐらい思い出し笑いができようが、ただ、それだけのことである。だいたい、そんなシーンはあり得なくて、オカマバーのママ(?)などに言われるのが関の山。別に、ほめられたくて生きているわけじゃないし、この年になると「ほめ言葉」の裏にあるものを、見透かしてしまうことも多い。

そうはいっても、つらい毎日である。ぐっとモチベーションを高めるような言葉を誰かにかけて欲しいときもある。慰めの言葉ではなく、自分の血管をぐっと押しひろげ、自分の足で立っていることがうれしくなるような言葉だ。

そんなことを考えると「藤木さんとはまた一緒に仕事をしたいです」と言われるとき、自分の血流がさらさら流れ出すのがわかる。「また一緒に仕事がしたい」ということは、何の変哲もない表現のようであって、人格もスキルも含め、かなり認めてくれたことではないか?
当然ビジネスマン同士なのだから、仕事ということについては、予算の交渉も発生する。お互いが代紋を背負って、つばぜリ合うこともある。そんなこんなを乗り越えて、ある地点に着いたときに、ほろっと出るのが前述の言葉である。そして、そう言ってもらったとき、モチベーションの針がぐぐっと上向きになる。常盤貴子に素敵といわれるほどの狂喜乱舞はないが、朝の始発のホームで、そっと胸の中を温める言葉だ。

わたしがそう言われるに値する人間かどうかはわからないが、わたしが「また一緒に仕事がしたい」と思う人間は次のような人である。
■率直に自分の意見をぶつけてくれる人
■立場を守りながら、立場と戦ってプロジェクトを進めようとする人
■場の空気を読んだ上で、わざとそれを壊してもブレイクスルーを求める人
■ユーモアがある人
■時間を守る人
■お金の約束を守る人
■良い意味で大人な人

ただのいい人ではそうはならない。切り開こうという強い意思を見たとき、そして、その進め方にある種の切れ味やオリジナリティを見たとき、そしてそのやり方に「人間味」を感じたとき、わたしは心からそう認めたい。
道は遠いけど、がんばりたいです。
あぶらギッシュな一夜-----床井 順子

忙しい、忙しいと言いながら遊びのお誘いには、ついついのってしまう体質は恐い。
先日、知人から「ただ券があるからカクテルショーにいかない?」と連絡があり、夜
の9時半という時間に近くのホテルまで出掛けた。

アントニオ古賀のものだった。若い人はご存じない名前だと思うが、古賀政男の後継
者で、持ち歌はラテン系である。私はほとんど関心がなかったがラテンを聞くと元気が出るかな? 程度の興味でのこのこ行ってしまった。

「アントニオ猪木のカクトウショーを、なんでホテルでやるのん?」と言いつつ現れたネーさんやら「別のホテルと間違えた!」と開演後にケイタイを鳴らすオバさんやら、こってりとした熟女5人組。

肝心のアントニオ様は、お決まりのようにベロア調のプルオーバーにやや光るズボン、ピカピカの靴といういでたちで、お顔は古賀政男のそっくりさん。

しかし、さすがプロ。しっかりオシゴトをしました。
まさにホンマモンのエンターテイナーでございました。ギター一本、かき鳴らす、むせび泣かせる、ボディを叩く、と持てるワザを駆使して、聞かせる、泣かせる、笑わせる、のせる、と大汗状態での奮闘。
脂しぶきが飛ぶような小一時間一本勝負だった。

対するこちらは、ジミなのは私だけで皆さんヒカリモノのお衣装、アクセサリーキラキラ、ショールぐるぐる、髪はフワフワやらテンコ盛りやら、全体にギラギラした一団。
お席は舞台の真ん前。チケットを持っていた知人が、このホテルのなにかの会員だったためのサービスのようだった。

やたらノリの良い熟女テーブルのおかげかアントニオ様もノリノリ。
半数程度しか埋まらなかったテーブルでも、ラウンジ全体に大変盛り上がったのでありました。
ようするにホテル側はこの知人&仲間の派手さ、ノリの良さを知っていての空き席の有効利用とお見受けした。

後で私たちだけ特別にサイン色紙が届くというオチまでつき、「美女軍団の皆様へ」と黒服から伝言までありました。
キャー恥ずかしい!

やらなくてはならない仕事をほったらかして、息抜きをする当方に比べ、アイトニオもホテル側もきっちりと仕事をしている。いい年をして、改めてプロというものの勝負魂をガツンとやられた気持ちだった。

それにしても、アンコールで歌った「コーヒールンバ」の薬ネーミングを列ねた替え歌はケッサク。
ほったらかした仕事がネーミングだったこともあって、神様に諭されたような、お灸をすえられたようなとても複雑な心境となりました。

ぶるぶるな一夜 -----床井 順子

のんきなお遊び話を書いていたら、やられてしまいました。空き巣にオシゴト。
2月の中旬、夕方、ほんの2時間ほどプールへ泳ぎに行って帰宅したら、なにやら部屋の中の空気が違う。2階の雨戸を閉めようと階段を上がると、いつもは納戸になっていて開けない部屋のドアが開いている!

「おかしい!」と思い仕事部屋へ入ると、鍵のかかっている机がバールで開けられている! 中の手提げ金庫も見事に破られている! ここでようやく事態が呑み込め、あわてて戸外へ逃げ出した。
しかし、手にはしっかり電話の子機を掴んでいた。

すぐさま110番をした。
まだ2階奥の寝室に賊が隠れていそうだった。
警察はのんびりしていて「空き巣ならしばらくして行きます。いま忙しいから。」などという。
冗談じゃない!「まだドロボーが潜んでいそうです!すぐ来て!!」

結局、警察がやって来たのは30分ほど経ってからだった。
その間、私は隣家に避難していた。
家中を警察官にくまなく調べてもらって、やっと家に入れた。賊は逃走した後だった。
「いませんよ、プロは短時間で仕事しますからね!」とのことだった。

玄関の鍵は私が開けて入った、ガラス窓もどこも破られてはいない。
どうやら1階のテラスのサッシの1ケ所に鍵のかけ忘れがあったらしい。私のポカである。
取られたものは現金が数万円。預金通帳やハンコ、会社の実印、パスポートにドル札少々
もあったのだが、さわってはいるが取ってはいかなかった。不幸中の幸いか。

「これは日本人のプロの空き巣でしょう」という。
聞けば近所では現金はもちろん、通帳から印鑑、貴金属にパソコン、電気釜に輸入品のスコッチや化粧品まで、ごっそり持っていかれた例がたくさんあるという。
「こういうのは外国人の窃盗団です」ですって。

後でご近所から聞いた話でも、空き巣に入られた家はかなり多かった。
中には3回も入られた家もあった。
そういえば、昨日も「空き巣注意」の回覧板を回したばかりだった。まったく物騒な世の中になってしまった。

その夜は深夜まで現場検証があり、警察が引き上げた後は、足跡や指紋を検出するために撒いた粉、ドロボーが引っ掻き回したタンスや引き出しの中身など惨澹たる光景。
当然のことながら、とても食事したり眠ったりできる状況ではなかった。

こういう時、独り暮らしはコワイ。けれど逃げ出すこともできない。
賊は一組ではないのだから、別組がまた入る可能性もある。
なにより、翌日は朝一から大事なプレゼンが予定されている。
仕方がないので朝までぶるぶるしながら掃除をし続けた。

後日、すぐさまセコムを契約し、人を感知するセンサーライトも取り付け、ガラスというガラスには防犯シートを貼り、ドアにはサムターン回し防止用具を取り付けた。

ああ、それなのに、ぶるぶる症状は消えず、翌週には疲れのためか発熱してしまった。
さらに、外出恐怖症に陥ってしまった。ことに、日没後の帰宅では家へ入れない症状となり、仕事も日中の打ち合わせでさっさと帰宅。
しばらくは夜、飲みに行くなど考えられない。これってバチがあたったのでしょうか?

能ある鷹は爪を隠す -----中保 裕子
カルビーの「堅」というポテトチップが今のお気に入り。
薄塩味で、一時はブラックペッパーというシリーズ商品があったはずだがあっという間に消えてしまい、今は定番の薄塩味だけになってしまった。

それはまあいいとして、この「堅」(そう言えば、なんて読むのかわからない)ポテトチップが気に入っているのは、まず歯ごたえがあって噛むほどおいしいってこと。
こっくりしたビールによく合う。
そして、最高に賢い!と思っているのは、実は“弊社商品比”がカロリー37%減というところなのだ。

油分が少ないからこそ、堅さにつながるのはわかるのだが、ダイエットを打ち出さない賢明さに脱帽!なのである。
普通なら、ここで「ダイエットチップス」とか何とか言いたくなりそうなもの。
賢い点がいくつもあると、一つに絞るのは勇気が要る。
数学と国語、どっちも出来たら、国公立を狙いたくもなろうが、文系理系どちらかに偏っていれば進路は決めやすい。

私はこのポテトチップが単に“好き”だというだけの純粋な一消費者としてのかかわりなので、そこにどんなドラマがあったか全く知るはずもないのだが、仕事柄推測するに、きっと社内も意見は二分したのではないだろうか。もちろん、何の根拠もない憶測だけど。
そこで「ダイエット」派を退け、「堅さ」1本でいく、と判断した人、その人がすごく偉い!と思う。

もちろん、カロリーオフはありがたい。
しかしビールやポテトチップを食べながら、ダイエットを考えさせられるほど不毛なことはない。
「ダイエット」と銘打つものはまずそうな印象を与える、という懸念はあるが、それ以前に価値観の問題である。
喫煙、飲酒、高カロリー食・・・どれもよくないには決まっているが、「コレ良くないんだよね」といじましい気持ちで喫するとホルモン分泌の影響でより悪いという説もある。どうせ食べるなら堂々と食べるほうが気分もいいし、体にもよいのだ。
カルビーのすごく正しい判断のおかげで、今夜も私は全く罪悪感をもつことなく、ビール片手の楽しい読書タイムが送れる。
マーケティング戦略の良し悪しで、商品は人をシアワセにすることができるのだ。



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