月替りの「お題」からメンバーが
自由な連想でエッセーをつづります。

ものの見方・感じ方に、
それぞれの経験や個性があらわれます。

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今月のお題:「ニュース」
藤木 俊明 この世の終わり
中保 裕子 見る」と「視る
床井 順子 「幻覚か? ニュースか?」
小梨 由美 前向きな人生
須藤 智香 スポーツニュースの怪
隅 恵子 「なぜ、日本人はデモをしないのですか?」
高林 昭浩 「新しくなければニュースじゃない!って当たりまえか」



この世の終わり-----藤木 俊明

わたしが好きな「ニュースの歌」が2つ。井上陽水の「最後のニュース」とサイモン&ガーファンクルの「きよしこの夜/七時のニュース」である。

♪地球上に人があふれだして海の先の先へこぼれ落ちてしまうにょ〜♪という、ミもフタもない歌詞で聞き手を不安に落とし入れる「最後のニュース」。
♪サイレンナイ〜ホーリィーナイ〜♪という美しい斉唱のバックに悲痛なアナウンサーの声が淡々と流れる「きよしこの夜/七時のニュース」。両方とも共通しているのは「この世の終わり」感である。わたしは「この世の終わり」のトラウマを持っているのだ。だから、何となく「ニュース」=「この世の終わり」なのだ。

そのトラウマはわたしの父親がSF好きで、小学校の時からハヤカワのショートショートを読まされたことによる。その中に「ある科学者が作ったロボット」の話があった。
鼻がボタンになってるロボットが街の目抜き通りに置いてある。みんな鼻のボタンを押すのだが、別に何も起きない。そのうち核戦争があって人類は死に絶えた。
そうして、ロボットの鼻を押す人もいなくなった。そうすると、100年経ったある日、いきなりロボットが歩き出し、葬送行進曲を流しながら、全世界に人類が滅んだことを知らせて回った。そう、ロボットは人類滅亡のニュースを伝える役目を負って作られたのでしだ。それが最後のニュース。

小学校低学年の子供にこんな話読ませやがって!心配になったわたしは母親に「そのうち人類はみんな死んでしまうが(by金沢弁)?ほんなら、ぼくも死ぬがか?」と泣いて訴えたらしい。母親は激怒して父親に抗議。それにも負けず父親(当時呉服商)は、「ナスカの地上絵がどうした」とか「猿が人間の先祖だと思うか?人間はどっかから来たんやぞ」「どっかからって?」「それはUFO…」「あんたまたそんな話子供にして!」といったやり取りが金沢の下町では行われていたのだ。それは大したことないニュース。

おしまい(とくにオチなし?)

「見る」と「視る」-----中保 裕子

1995年の2月、阪神淡路大震災から1ヶ月もたっていない大阪への出張があった。
「せっかくここまで来たのだから、長田区を自分の目で見ていったら」という人の勧めに「この時期にただ物見遊山では・・・」とすこし躊躇したが、テレビ番組の仕事をしていたこともあり、やっぱり見て帰ることにした。
マスコミ報道の限界を見ておきたかった、といえば少し大げさだけれど、自分にそう言いわけをした。

阪神電車は住吉でとまった。次の駅舎が倒壊しており、長田区方面にいくならひと駅歩くか、振替運転のバスに乗ってほしいということだった。駅を出ると、商店街の古いビルが軒並み斜めに立っていた。遊園地のびっくりハウスにいるような、不思議な気分だった。

長田区の景色はテレビで見たとおりだった。
道端に木片が散らばり、木造家屋とはこんなに弱いものかと見せつけられた。
しかし、テレビでは放映されない景色もあった。
某新興宗教のりっぱな会館はびくともしていなかった。戦禍に残った「風と共に去りぬ」のタラ屋敷のように、まっすぐ立っていた。

ニュースは連日仮設住宅のくらしの辛さや悲しみに沈む人々を映していた。
ワイドショーではBGMに松任谷由美の「春よ、来い」が流れた。
しかし、実際は疲れた人ばかりでも、戦う人ばかりでもなかった。
パチンコ屋は盛況だったし、ドアがこわれたビルのなかで、カラオケBOXも営業を再開していた(ただし「食べものは出せません」という貼紙があった)。タクシーの運転手いわく「何しろ暇でやることがない」のだそうだ。

元・テレビレポーターの東海林のり子さんの話。
災害地の取材に行ってみると、予想していた地獄絵はどこにもなく、ただ皆がぼうっとしていたのだそうだ。
レポーターはその中に入っていけなかった、という。
そして、東海林さんはそれがきっかけでレポーターを辞めた。

半年後、わたしが再び訪れたときには、残り少なくなった仮設住宅に「もういい加減自分らでなんとかせなあかんで」と批判する声も聞いた。
自分の目で「見る」とテレビで「視る」とでは大違いだった。
幻覚か? ニュースか?-----床井 順子

4月上旬に三鷹のICUキャンパスへ古代史の同好会のメンバーとお花見を兼ねて縄文土器を見に出かけた。
意外かもしれないが、ここの湯浅八郎記念館には構内から出土した先史土器や縄文土器が展示されていて、知る人ぞ知る穴場となっている。

武蔵野の面影が残る構内をぶらぶらと歩いていて、大発見をしてしまった。
新たな遺跡をかって? いえいえ、そんなものは素人が勝手に掘れるものではありません。雑木林の中をチョロチョロと走る謎の動物をである。

体長は40〜50センチぐらい。全体は茶色がかったグレーだが、丸い耳の周辺を除いて毛がない。毛のない身体には妙に皺がある。尻尾の先端は球状をしている。顔はやや丸顔だが鼻先は尖ってはいない。もちろん、四つ足で
ある。3頭ほどが走り回り、遠くには親らしき姿も見える。

同行のメンバーはタヌキだという。
「え〜、タヌキは毛があるでしょう!」
「毛が生える前の子供だろう」
ムジナだという人もいる。
「タヌキとムジナはどう違う?」
「いや、キツネじゃないか?」
「キツネはキツネ色でしょう!」
「色からしてジャッカルに違いない」
「違う尻尾が違う!」
「だいいち、ジャッカルが三鷹にいたらニュースだ!」

帰宅してから動物に詳しい甥のいる友人にこの話をした。さっそくDr.シンちゃんこと友人の甥からお説と資料が届いた。彼の説では、この謎の動物はハクビシンである。地域からして違いないとフィギュアも付けてくれた。

しかし、しかしである。ハクビシンには白鼻心の名のとおり鼻に白線があるはずだ。やっぱり違う、謎は深まるばかりだ。

で、怠け者の私も手許の百科事典などを引いてみた。毛のない尻尾の様子からするとオポッサムに似ている。しかし、また、しかしだ。オポッサムはアメリカ大陸にしか生息しないと書いてある。

う〜ん、さらに謎の奥地へと迷い込んでしまった。捜査の鉄則では、こういうときは最初に戻るのだ。そうそう、最初ね。この日、私たちはお花見を兼ねて三鷹へ行ったのだ。つまりですね、お花見の定番であるお酒もちゃんと持って行った。要するに、飲んだのですね。と〜ってもいい気持ちで散策してたわけだ。あらら・・・、問題はここにあるかも知れません。

確かに四つ足だった。そして、尻尾はあった。でも、猫ではなかった・・
どなたかシラフで、この謎の動物を確認してきてもらえませんでしょうか?

前向きな人生-----小梨 由美

このところのニュースは政治家のスキャンダル一色である。それにしても渦中の政治家たちのリアクションは、何故こんなにも世論と相反するのだろう。呆れているうち、大学の社会心理学で学んだ「認知的不協和の理論」を思い出した。人には自分に都合の悪い情報との接触を無意識のうちに避ける性質があり、それは生命の危機を避けるための本能的な心理だというものだ。政治家に世論が届かないのもこの心理と思えば合点がいく。なるほど政治家はみな、妖怪のように長生きだ。

しかし、生命は永らえてもその判断が仇となって政治生命を失う例もある。聞く耳持たぬ態度は一時回避に過ぎず、状況打破には役立たないのだ。窮地に立たされたときに必要なのは、まず状況を正確に把握すること。都合の悪い情報を無意識に避けるのが人間の本能なら、このときの情報収集は、心して理性的に制御していかなければいけないだろう。あえて耳の痛い情報、悲観的なデータや辛口の批評家の声を集めるくらいでちょうどいい。

正しい状況把握によって取るべき道が導き出されたら、次はそれを実行するかどうかの決断である。政治やビジネスはともかく、人生においてはこの決断は理性的であることが必ずしも正しいとはいえない。「1%の可能性に賭ける」という選択も大いにありだ。感情に従ったこうした選択があればこそ、奇跡も起こり得る。

ならば最初からすべて感情にまかせればいいようだが、あらかじめ99%のリスクを覚悟することで、それが実現できなかったときの感情の破綻は軽減される。「1%に挑んだ満足」という別の境地に至れるかも知れない。状況判断はあくまで理性的に、決断は時として感情のまま大胆に。これこそ生命の危機を避けつつ前向きな人生を送る極意だ。

スポーツニュースの怪-----須藤 智香

みなさん、スポーツニュースはお好き?
実は私、あれが嫌い。いえ、テレビ局の編集方針が特定の選手やチームに偏っているとか、そういう話ではなく……。
先日、ある友人と話していた時のこと。「スポーツのニュースって、どうしてどのテレビ局でも同じ時間帯に放映するのかしら」と、日頃の大疑問をぶつけてみた。
プロ野球にもサッカーにも相撲にも興味のない人間にとって、あの時間帯はとっても退屈。
どのチャンネルにしても同じ映像のくり返しで「あ〜、つまらない!」と、テレビのスイッチを切ってしまうことが多いのだ。


ところが友人いわく
「あの放映時間って微妙にずらしてあるわよね」。
「えっ、そうなの?!」。
彼女によれば、少しずつ時間がずれているから、ファンは○○がホームランを打つ場面や□□がシュートを決める場面を、くり返し見られるのだとか。

つまり、「あっ、これは見たくない」と、あわててチャンネルを変えている私は、結果的にスポーツファンよろしく何度も同じシーンを見るはめになっていた、というわけ。
そうか、そうだったのか。これで日頃の疑問が解明された。

で、大のジャイアンツファンに確認したら、たとえ試合中継を見ていたとしても、各局のスポーツニュースを見るのは当然。
しかも、ニュースの追っかけはこれで終わりではない。
翌日のスポーツ紙(複数)で試合がどう報道されているかをチェックして、感動を新た(!)にするのだという。
この際、ジャイアンツが勝ったか負けたかは問題ではないらしい。
「それはプロ野球に限らず、スポーツファンなら当たり前でしょう」。
もはや私などには全く理解できない世界である。
おそるべし、スポーツニュース。
 

なぜ、日本人はデモをしないのですか?----- 隅 恵子
英会話のレックス先生は、そのニュースに相当ショックを受けたようだった。
そして、
「なぜ、日本人はデモをしないのですか?」
と、私に質問したのである。

ニュースというのは、1999年9月30日、茨城県東海村の核燃料加工会社「JCO東海事業所」で起きた臨界事故。
ウラン加工の工程で、沈殿槽に規定以上の硝酸ウランを入れたことが原因で、国内で過去最悪の「レベル4」という放射能汚染を起こした。

原発産業の従業員に教育研修が不充分なままウラン加工という危険な作業をやらせていて、それも町工場並の手作業だったのにも驚いたが、この時の汚染では放射能が家の壁を透過してしまうため、屋内避難より遠くに逃げるべきだったことがあとで判明し、日本の原発事業の危機管理のあまりの不充分さに、日本って本当に先進国なのかなあ…と思った。

レックス先生は
「なぜ日本人がデモをしないのかわからない。アメリカ人なら絶対、政府の原発事業に対する姿勢に抗議するために、プラカードを持ってデモをするよ」
という。
私は、片言英語で
「日本人はデモをする人を革命家だと思っているのかも。日本人は革命が嫌いです」
と、わけのわからない説明をしたのである。

歌手・マドンナの世界ツアーのドキュメンタリービデオ、『イン・ベッド・ウイズ・マドンナ』には、ツアー同行中の男性ダンサーが、ロサンゼルスでデモ行進に参加する場面が登場する。
「私たちはゲイだ。慣れてくれ!!」という彼らのメッセージと、何万人にも見えるデモの参加者数の多さにびっくりした。

私たちは、住民が、政治や社会に意思表示する機会は「選挙」しかないと決め込んでいるだけなのかも。
私たちの住民の気持ちを、もっと効果的に、もっとスマートに伝える手段は他にたくさんあるのかも。
少なくとも表現することは悪いことではないはずです。
新しくなければニュースじゃない!って当たりまえか
-----高林昭浩
ジョージ・ハリスンの訃報をはじめて知ったのはインターネットのニュースサイトでだった。すぐにあちこちのサイトを検索して、詳細を調べた。

20年以上も前、ジョン・レノンが亡くなったときは、テレビニュースをザッピングしたことを覚えている。そういえば、三島由紀夫の割腹自殺では、子ども心に訳もなくエキサイトしてテレビにくぎ付けになったものだ。さらにさかのぼって終戦のときはラジオの前に正座して玉音放送に耳を傾けた(わけないか)。

この20年、あまり時代は変動していないと思っていたけど、インターネットの登場は確かに大変革なのだと気がついた。考えてみれば、仕事も私生活もネットなしでは始まらないのだ。

仕事に関する資料も、本屋で探す前にとりあえずネットで検索する。例えば「多発性硬化症の発症機序とサイトカインの関係」なんて資料、本屋にあっても1〜2冊。医大の図書館などでは専門雑誌当然海外のもの)でしか新しい資料に当たれないし、あったとしてもそれは英語で書いてあるからチンプンカンプン。とりあえず、ネットで調べることになるわけだ。

しかし、ほんとにネットは情報の宝庫だ。先の「多発性硬化症〜」だって、調べればけっこう出てくる。だが、そう喜んでばかりもいられない。「いったい最後はいつ更新したんだよ」とツッコミたくなるような掃き溜めサイトもあるからだ(それはそれで、発掘気分が味わえておもしろいけど)。

そういえば、最近、サイトの“鮮度”が一目でわかるソフトを、ソニーコンピュータサイエンスという会社が開発したという新聞記事を読んだ。そのソフトを使うと、ずっと更新されていないページはぼやけて読みにくくなるのだそうだ。なんかデジタル技術の最先端がアナログ的だから笑ってしまう。
このサイトもぼやけないように、と書こうとしてふと気づいた。僕のように原稿が遅れる人間がいるからなかなか更新できないわけですね。



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