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ねぇ、君が好きだよ。 午前中はテニスして午後は繁華街ぶらついて。適当な女の子とホテルに入った。(この適当、は俺の意図に適っている、という程の意味だ。) 女の子は柔らかくてゆわふわして可愛い。気持ちがなくたって恋人みたいに囁くと簡単に喜んでくれる。熱に浮かされて濡れた瞳や、動くたびにさらさらと音を立てる髪、求める指先。そのどれもが俺の男の部分を刺激して、確かに欲情させる。 相変わらず俺は女の子が好きだ。 「っあ、 あ!・・・き、よす・・あっ」 俺を求めて呼ぶ声。 熱くなる体とは裏腹に冷えていく思考を頭の後ろのあたりに感じる。 こんな風に女の子を抱く俺を、君はどう思うだろうか。 侮蔑するだろうか。 哀れむだろうか。 それとも、気にもとめないだろうか。 最近は女の子を前よりもずっと厳しい基準で見るようになったと、自覚はある。こうしていても探すのは、あの人と似ているトコロ。 さらさらとした髪だったり ちょっと厚めの唇だったり 長い指だったり 綺麗な背中。 矛盾している。女の子の可愛さを求めながらその中にあの人を見たい、だなんてね。 欲望に任せて果てた後、隣からは静かな寝息が聞こえてきた。 俺の心はこの可愛い女の子のところにはない。申し訳ないけれど。 居心地の悪さに煙草に火を付け一口吸い込み、すぐに灰皿へと押しつけた。ベッドに響かないよう立ち上がってシャワールームへ向かう。 この身体に染みついたものを落としたつもりで、なんでもない顔をして、君の家に行きたいから。 女の子にはいつもと同じようにまたね、とキスをして部屋を出て行く。またがあるかなんて知らない。ほとんど社交辞令に近い言葉だ。置いていってしまうのは可哀想だけど抱いた後も側にいようととは思えなかった。 ホテルから出ると夏の熱気が俺を包んだ。それでもこの頭は冷えたまま。どことなく足取りは重くどうしてこんなになっても君の家に行くのだろう、とも思うのだが、なによりもこの冷えた頭を救ってほしいのだ。君に、救ってほしいのだ。大体抱いた後は会いたくなるって決まっている。本当に抱きたいのは君だから。俺ってバカ。 途中コンビニに入って酒類をたくさん買い込み、君の家へ向かう。 チャイムを鳴らす。これも形ばかりのこと。 「あっとべくーん、俺だよ〜!」 大きな声で言うと舌打ちが聞こえた。 顔まで見えるようで俺はにんまりと笑う。 「開いてるから勝手に入れ。」 聞きたかった声が聞こえて俺は更に笑った。 持ってきた酒を跡部くんに渡し、まだ夕方だってのにプルタブを開けて飲み始める。冷蔵庫にあったモッツァレラとトマト、それにじゃがいも、茄子を取り出して、3品。つまみを作ると酒も進む。二人ともかなり酔って俺はいつもよりもっと饒舌で、あとべくんも良く笑った。 いつのまに寝ていたのだろうか、跡部くんの声で俺の意識は浮上した。頭が鈍く働かないことに苛ついて、俺の手は煙草を探す。すると、叩かれた、手。俺の頭は軽く混乱して、顔を上げると跡部くんが居た。 「あれぇ、あとべくん・・・」 二人で飲んでいたことを思い出した。 「あれーじゃねえだろ?おい、もう十一時だ。」 「あ、まじ? もう帰んのもめんどうだし、泊まるよー。」 当然のように言葉を続けた。俺は立ち上がり、洗面所に行って歯ブラシを手に取る。 この歯ブラシが捨てられていない事実に、俺は甘えている。 ねぇ、君が好きだよ。跡部くん。 この手は違いもなく君の熱を求めて乾いていく。 拒絶を恐れてこの手は女を抱き、この唇は煙草を吸う。 ねぇ、君が好き。 back / next |