ここは、詩のページですよ。

 


 


 

 

               『時』   灰法蔵書

 

 



 

 

 

 

俺に残されている時間は、あまりにも少ない。
俺の「過去」は俺の皮膚にのって、俺の体にあまりにも密着しすぎている。
俺には過去はない。
未来はもう見放されている。
俺に残されているのは現在でしかない。
未来を信ずるのは、愚かなことだ。
未来とは希望そのものであり、俺はあらぬ希望を放擲したのだ。
俺に残されているのは現在の時間でしかないのだ。
        ・
鏡をのぞいてみればすべての「時間」がわかる。
鏡は永遠であり、過去と未来を照らす魔法の器具なのだ。
我々が永遠の時間を獲得するのは現在の時間の迷路の中でしかない。
我々が鏡の前に立つとき、現在という時は茫漠として、その時を失うのだ。
我々の体験は無価値なのだ。
迷路の中でいくらあがこうと、我々の行為はすべて無価値なのだ。
価値は畢竟、廃墟にしかありえないのだ。
俺は狂気に走ろうというのか。
いや俺の頭脳は明晰で俺の行為と言葉は意味に満ちている。
どうして俺が狂っていると言えよう。
俺はますます真実を見、ますます狂気を見つめるのだ。
        ・
「過去」は俺にとって薄っぺらい皮膚のようなものだ。
俺の体にピタッと貼りつき、一刻一刻と死んでははがれていく。
俺の毛穴を通して皮膚の下にもぐり込んでゆく卑猥なものもある。
俺はそれを経験と呼んで軽蔑してやるのだ。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解説》
=========1=========2=========3=========4=========5=========6=========7
久しぶりでこの詩を読んでみて、この詩を書いた当時の気分を振り返ってみま
した。

「なにものも過ぎ去るものがなければ、過去という時間は存在せず、なにもの
も到来するものがなければ、未来という時間はまた存在せず、なにものも存在
するものがなければ、現在という時間は存在しないであろう。」
              「告白」第11巻14章 服部英次郎訳 岩波文庫
まず最初に影響を受けたのはこの聖アウグスティヌスの「告白」でした。その
時間論その他には、(自分で頭を働かせて)問題点を分析し、分解し、組み立
てなおしてみるという体験の大切さを教えられました。

次に影響を受けたのは、わが生涯の師匠ヴィトゲンシュタインです。
「論理哲学論考」坂井・藤本訳 法政大学出版局
6.4311「死は人生の出来事にあらず。人は死を体験せぬ。永遠が時間の無限の
持続のことではなく、無時間性のことと解されるなら、現在のうちに生きる者
は、永遠に生きる。われわれの生には終わりがない。われわれの視野に限りが
ないように。」

物理学上の時間の概念も、私の詩の中に盛り込んでいます。それは・・・
相対性理論では、絶対時間や絶対的同時性が成立しないことが提示されました。
それと、時空は一体であり、(古典物理学と違って)時間は空間と独立して扱
われるべきではないとしています。
この時空一体の概念を抽象的に「鏡」というものを使って表現したつもりなの
ですが、それが成功しているかどうかの判断は他者に任せるとして、自分の中
ではそれしか表現しようがなかったのです。いわば、時空一体を鏡の中に閉じ
こめたつもりになっていたのです。

経験については、実存主義の考え方が影響を及ぼしています。
常に人間が生きていく上では「選択」の問題がついて回るはずで、当時の私は
経験が選択の決定に悪影響を与えることを恐れていたのです。

最後に・・・
ハイデッガーいわく「人間は世界のうちに投げ出されている。人間は、自分が
なぜここにいるかを決して理解することは出来ない。死が確実で人生が最終的
には無意味であることを知りながらも、それぞれに目標を選び取り、情熱的な
確信を持ってその目標を追求しなければならない。」
                           「Encarta98より」


 

では       早々(若い当時の、気分がよみがえってきました)
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<Pen Name>灰法蔵書 hainori@hainori.com

 

 

 


 

『あなたへの手紙』

 

かれん









もうすぐ二人で始めたお店の開店記念日です。

早いですね。月日が経つのは。

でも悲しい月です。

去年のあなたが1番辛かった月です。

いつも泣いていましたね。

お店を閉めるのが嫌で、

あなたは子供のようでした。

命の期限はそこまできているとは言えずに

私も辛い月でした。

たくさんの顔が浮かんできます。

そしてそこにはいつもあなたがいました。

あなたは仕事が好きでしたね。

そんなあなたが私は好きでした。

昨日あなたの友とお酒を飲みました。

あなたを思い出にしてしまうには

まだ心の準備ができなくて

誰もが進みだせなくて

あなたはやはり「いい人」だったのですね。

私は少しあなたを思い出にしました。

1人でいるのにも慣れてきたから

まだあなたの愛と一緒だから

私の道しるべはあなたの役目になったんだよ

 

 

 










どうせなら
私を連れて行って欲しかったな

寂しさは形を変えて
いつまでも私に付きまとうから

どうせなら
言葉なんか残して欲しくなかった

あなたの言葉は
いつまでも私を縛るから

歩き出す一歩の歩幅がわからない
触れようとする手が縮こまる

こんなに臆病だったのかと
こんなに弱虫だったのかと

違う痛みを感じます。
違う悲しさ感じます。

あなたが旅立つとき
私を置いていくこと
どう思っていましたか

あなたが言うように
幸せになれるのでしょうか

ちゃんと私にも時は流れていますか
ちゃんとあなたは私を支えていますか

悲しいくらいに
さびしいです。

 

どうせなら
一緒に連れて行って欲しかった。

 

 

 

 

 

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