冬の別れ

 前日は晴れていたが、一晩たつと銀世界には程遠いが、一面真っ白な雪で覆われていた。
 その日は祖母の葬式で、近くのお坊さんが読経を終えたあと、遺骨を納めに行くのだが、昔からのしきたりで親族は草鞋をはいて納骨にいくので、少しいやだった。いやだけど、しきたりならば仕方が無いのでせめて昼までに雪が溶けてくれれば、と願っていたのだが、どうも、雪が止む気配はみえず、とうとう読経が終わっても雪はまだ少し降っていた。
 草鞋を履き、裏口から出て骨壷を持って墓場へ行く途中、生前の祖母の姿を思い浮かべていた。最後に会ったのは、亡くなる2、3年前だった。「髪の毛、真っ白になっただろ」そう言って笑った祖母の姿は、少し、小さくなっていたような気がした。もう、会えないんだな、そう思った時、悲しくなってきた。ほんの少し、目が潤んできた。

 お墓に、骨を納め、帰る時に履いていた草鞋を脱ぐ。死者が後に付いてこないようにするため、そこに草鞋を置いて、まだ帰っていないように思わせるため、と言う話だ。草鞋を脱いで、冷たくて真っ赤になった足がアスファルトの道を踏むたびに、がつん、といった感じの痛みがはしる。いつもなら5分もかからない道が果てしなく遠く感じる。痛みに耐え、1歩1歩ゆっくり歩き、家に着く。周りの人達は、慌しく動いている。まだ、「葬式」という行事は終わっていないのだ。
 いつもなら、そんな慌しさのなかに、時折声をかける祖母がいた。そして、その姿を二度と見かけることはないんだな、と思うと熱いものがこみ上げてきた。

 そして、僕は祖母が大好きだったんだ、ということがようやくわかった。


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