立秋が過ぎ夏の暑さも和らいだ頃、僕は歩きたくなって隣の街まで歩いた。
隣の街とは大きな川で隔てられていて、この川にかかっている橋を歩きながら川の水を含んだ風にあたるのが好きでよく歩くのだけど、さすがに夏の間は歩くのをやめていた。時間にして約30分位の距離を、週1とはいえ欠かさず続けている。適度な運動になるね、と言う人もいるけど、週に1回くらいしか歩かないんだから運動になるのかどうかは疑問だが、別に運動不足の解消が目的じゃないから、適当に答えている。
季節が換わりかけていることもあって、久しぶりに歩くと見慣れていたはずの風景が新鮮に映った。東京とはいえ、西のはずれにもなると緑も目立ち、季節の移ろいを感じさせてくれる。緑鮮やかだった春先とは違った色合いになっている草花を見ながら、橋へと向かって歩いていく。
橋に差し掛かると、思っていたとおりの涼しい風が吹いていた。ほんの、10分くらいの距離ではあるが、まだまだ暑い時だから汗をかいている体に心地いい。ふと、下を見ると2、3日前の台風の影響か、水量が増えている。それでも、去年よりは少ない。普段は川底か見えるくらいの水量なので、後少しで洪水だったのではないかと思うくらい増えていたが、考えてみると僕が子供の頃は、増えているほうが普段の水量で、今くらいだと水不足と呼ばれていたような気がする。きっと、上流のダムの数が増えたからなんだろうな、と思った。本当かどうかは怪しいが、最近の長野知事絡みの報道を見ているとそんな感じを受ける。
河川敷では、いろいろな人たちがいろいろなことをしている。ベンチに寝ている人、体を焼いているのか、上半身裸でうつ伏せになっていた体を仰向けにした人、おにぎり片手に本を読んでいる人、みんなこんな暑い中元気だなと思う。仕事が思ったように進まず、少し落ち込み気味なの時は余計にそう感じるのかもしれない。
橋をどんどんわたっていく。下り坂が近づいてくると、橋の端だ。心地よい風もここまで。ここから先は少し都会らしく、住宅地と少々のビル群に囲まれたところになる。とはいえ、やはり都心に比べると、小さいところだ。でも、最近はフランチャイズの店や大きな店があちこちに店をだすので買い物するのに不自由が無いくらいになっている。
少し、街をぶらぶらして、少々買い物をした後駅ビルにある行きつけの店に入り、ビールを注文する。歩いて来た時はいつもここで、ビールと軽い食事をして帰るのが、日課ではない週課になっている。なにしろ、少し汗をかいた後にここで飲むビールがうまいのだ。それに、時間が昼とくれば、なおさらうまい。ほんの少しの間だけ幸せに浸れる時だ。子供の頃は、昼からお酒を飲んでいる大人を軽蔑したものだが、今になってみるとなんてもの知らずだったんだと思う。まあ、子供だったから仕方が無い。
ビールと軽い食事を摂った後、来た道を今度は逆に歩いて帰る。橋の手前の坂を上がり、橋の上で川からの風を受け、そして我が家に着く。靴を脱ぎ、荷物を片付けるのもそこそこに、冷蔵庫からビールを取り出して飲む。汗で、先に飲んだビールの酔いが抜けかけているところなだけに、これがまたうまい。
これだから、散歩はやめられないのだ。