金木犀に漂って
金木犀が香ると
幼い頃を思い出す
朝 目が覚めて
甘い香りに誘われるまま
2階の窓からのぞいてみると
夜のうちに散った金木犀の花で
地面が厚く覆われていた
おままごとの小さな茶碗に
山吹色のその花を
山盛りついで
「はい、どうぞ」と差し出した
けれど
その先に誰がいたのか
それから何をしたのか
記憶の中に何もない
はっきりと見えるのは
たった一つ
そのシーンだけ
私は真剣にその花に向かっていた
感覚の扉を全開にして
地面に積もった花の厚さと
山盛りのおいしそうな花と
たとえようのない香りとに
対峙していた
金木犀の香りの渦に漂って
幼い私の中にあった
まっすぐなまなざしに出会った