愛が足りなくなったとき開いて下さい
君にふりむいてもらいたくて
愛のカタログ
愛の流儀
自由が好きだと
世界を見たいと
若い男の情熱を
育ちのよい紳士を
気さくな幼友達を
ふりきって飛び出した
そしてすぐに罠に落ちた
聡明で美人で貞淑で金持ち
そんな女がこよなく好きな
憧れのエキゾチックな男に
欠けていたもの
愛
一人立ちしたとたんに
男の奴隷になった女
幸せを求めて不幸を掴み
そして
身近にいた男たちにようやく気付いた
愚かで
ブスで
浮気で
貧乏な女
それでも愛してくれた
男たちの愛の流儀を
泣きました
生きよう
とにかく生きていれば
辛いことだけでなく
楽しいこともあるはずだ
ほんの一時だけでも
よいことがあれば
いいとしよう
そうして
手を差し延べてくれた
私の人生を
生き返らせてくれた
最後の最後まで
生きよう
それはあがくことじゃない
希望を持つことなんかじゃない
どうしようもないことは分かってる
スキマだ
スキマにもぐり込んで
時を稼ぐんだ
いっしょに生き延びよう
周りの親切な人たちが
どんどん倒れていっても
できるだけ長く生きて
みんなの思いも繋ないでいこう
わたしたちの
つかの間の出会いのことも…
彼はそういって先に逝ってしまった
泣きました
生きよう
生き延びよう
わたしたちのことを
知らないふりしてる世界に
鋭く突き刺さるまで
このままがいい
男のために気遣うなんてとても
自分のことだけでめいっぱい
アル中なんてオヤジみたいだけど
ワインのビンが手放せない
親がうるさいもんだから
いちおう結婚したら
相手もおんなじだった
恋人と別れられないし
家事は女に任せられない性分
わたしのために
若い男を紹介してくれる
ありがたい心遣いだけど
違うの
あなたが好きよ
このままいこうね
コクピットの快感
嫌いじゃなかった
でも、セックスは飽きていた
分かれる理由はなかった
でも、何か欲しかった
脳髄が痺れるようなものが
それぞれ相手と場所を
組み替えてみた
冷たいメタリックな局面
雑踏の陰
昼のこんな出会いを
夜、報告し合う
病院で彼が声をかけてきた
ぼくの傷を見て何かいった
骨折すると不自由になるから
エロチックだ
傷口から手を差し入れて
内臓をまさぐりたい
秘密のショーに誘った
知ってるよ
閉所が好きなこと
潜水艦やコクピットが
君のベッドだ
胎内のようなところではなく
膣のようなところ
窮屈で逃げられなく
拘束され怪我をする
恐怖や焦燥感が
神経の皮を剥き
性器を刺激する
勃起や分泌を促す
君は路上でぼくらを攻めてきた
ショーの始まりだ
車で体当たりして
性感を感じ合う
ぼくの尾骨に突入し
ぼくらは
逃れられないもどかしさに
陶酔し
陶酔はぼくらに跳躍を促す
飼育小屋
つぶらなふたつの瞳
大きく見開いて
どこかにスキがないか
よくさぐってごらん
おまえの本当の父だとは
思いもよらないのだろう
突然闇から現れては
近頃見た怪物映画だ
母親と密会しに来た
かつての同志感情を
まさぐり合うために
母は戦線を離脱し
平和な生活を
金持ちの主人によって
手に入れている
男は血なまぐさい
逃亡の途中
二人は猛り狂って
空白を埋め合い
二つの瞳に気付かない
小屋に隠された獣
つぶらな瞳は飼育を始める
親父か好き!
派手だと思う
実家に帰ればね
カッコウがね
援交したからね
体に自信あるから
テレクラでも遊んだ
スナックのバイトは
遊びみたいな気分
ちょっと気使うくらい
ほとんどお客は来なかったけど
女房にも愛想尽かされた
グータラ親父が
なんだか好きになっちゃったよ
情けなくて
そばにいてあげたい
飢えてるから
あれだけは元気なの
歳なんて違ってたって
別にいいよ
同じ歳の男なんて退屈
いつまでも一緒に
なんて気分はあるけど
やっていけるところまでいければいい
そんな遠くのことなんか考えられない
少女に慕われて
これが愛なのか
恋ではない
そんな暇はなかった
母に逃げられた父はわたしを殴ったけれど
たばこは吸うなと本気で怒ってくれた
後から来た女は最低だった
着いてきた娘もサイテーだった
母とは呼ばない
女もそう呼んでもらいたいわけでもない
娘も姉とはいえない
いえるようなヤツではない
弟だけが本当の弟のようだった
わたしを信じたから
ある日の午後
みんな 血塗れになった
隣の部屋に逃げ込んだ
出ていけ もういいだろう
そうはいかないわ
出ていったら今度こそ殺される
責任取ってよ
部屋の男は天涯孤独
ろくなもん食ってやしない
字も読めやしない
男は床に寝て
わたしはマットで寝た
男に弟子入りした
どうやって食っていくか
知恵だけは溢れていた
世間を這い上がる知恵は
何一つ持ってなかったくせに
敵討ちが失敗した
いのちを張ってまた助けてくれた
破壊してくれた
それからは追われる日々だよ
父であり兄であり夫であり
師匠でもあるがそうは見えない男
愛人
そう わたしは彼を愛してる
義務教育もまだあるけれど
誰も知らないふり
みんな知ってる
男がじき死ぬって
わたしが一番ヤバイやつだね
撃つ
不良娘になったのは
親のせいにしてたけど
ほんとは強姦されてから
明るいところにいられなかった
パトカーを一台ボコボコにした
クスリをやった
すぐには死ねなかったから
少しずつ死のうと
心や体に悪いことを始めた
クスリをやった
誰とでも寝た
なめられたと思ってからは
仲間にはキスだけしてやることにした
これがよかった
仲間はみんな壊れているけれど
私を守ってくれるようになった
クスリも持ってきてくれた
どうやったのか
聴かない 聴かない
きかない きかない
効かない 効かない
効かないーっ
薬屋の友達がいたの
息子なんで知ったかぶりして
おれんちになんでもあるよ
おかげでわたしたちドロボーになった
店のガラスを割ってバレた
頭に来て
ホームレスを襲った
これが一番おもしろい
ラリってやるのが一番おもしろい
何人か死んだと思う
男に捕まって
結婚した
出直そうと思った
幸せがあるって信じた
男が来た
彼は死んだ
元に戻った
男に捕まった
仕事を世話になった
続けるていると
好きになってくれる人ができた
いっしょに食事した
男が来た
彼と喧嘩した
赤ちゃんを堕ろした
もう元になんか戻れない
どっちが元か分からないから
最後の彼と相談した
彼は私を消してくれた
男が来た
彼は男に頼んだ
もう追わないでくれと
彼は私の持ち物から
口紅を持って帰った
愛とは
愛し合っていなければ
二人は生きてはいけないのだろうか
それならさらに尋ねる
愛とはどのようなものか
夫婦は情けで助け合って生きている
ときには憎んでも
いつわりでも
二人は妥協し合って
生涯を送る
死んでも愛したい
霊魂の存在を信じる?
それは残された者の未練の仕業?
〈死んでも愛したい〉
死んだ者も
残された者も
同じ思い
あなたが突然倒れたとしても
長い闘病生活の果てであっても
死んだらぼくは孤独を選ぶ
君と対話を続けるために
死体を愛するかもしれない
お墓のそばに暮らすかもしれない
霊媒師に入り浸るかもしれない
何より君自身を復活させる
復活したイエスよりも
君の肉体を血に満たす
ぼくが無念の死を遂げたのなら
簡単にはあの世に立ち去れない
あなたのそばにいて見守りたい
あなたはきっとぼくの気配に気付く
困難に直面したとき
ぼくのささやきに君は振り向く
寂しく一人眠るとき
ぼくの体温に君はぐっすり眠れる
台所に立ったとき
ぼくの得意な料理を君も上手に作れる
なにより
子どもたちが社会で泣き出すとき
ぼくは君の耳元に
勇気と知恵を思い出させる
お嬢さん
ぼくは大人じゃないから
君のような子は好きじゃない
ただ無神経で
結局イバってるんだ
ぼくの好みは
遠慮深くて
どこか影があって
頼りになれそうで
そのくせぼくを頼っている
ぼくの頼みなら
笑顔で
そうでなくても
仕方がないなって顔で
いつも聞いてくれる
そんな子が好きなのに
君は雲の上のお嬢さん
いつもぼくが君の言うがまま
来たいときに
時間かまわずぼくの部屋を訪ね
眠くなったら
ぼくのベッドで寝る
朝はベッドで待って
ぼくが食事を作るんだ
お金なんて持たない君は
外に出ればお店に入って
勝手に包んでもらう
その都度慌てるんだ
君は雲の上のお嬢さん
平和に飽きると
生きるのが忙しい
狭い部屋のドアをノックする
あの頃よ もう一度
いつからだろう
「若い頃は」
なんて言葉を使うようになったのは
ある時、ちょっと抵抗したけれど
すぐに馴れた
今はいつもいつも口にしている
その若い頃は
小さなラジオ一つが
持ち物のすべてだった
たまにリクエストをして
自分の名前を読まれるのが楽しかった
曲は聴いても仕方のないものばかり
身軽だったけれど
夢だけはたくさん持っていた
それほど昔の事じゃないはずなのに
その夢は
思いだそうとしてもあまり数えられない
夢は叶えられたのもある
でも、思い描いたのとは
はるかに小さい
叶えられなかった夢は今どこにあるのだろう
私は夢ばかり見ていたし
夢を見るのが好きだった
そして夢を語るのも好きだった
今でも捨てきれない夢がある
それはみんなで暮らすこと
農場と小さな作業場とホールのある
花の美しく咲くところ
いまはそれを思うと
死んだ友を思い出したり
人間関係に疲れている事を実感する
夢を愛した若い頃よ
あの頃は二度と戻って来はしない
金がなくて痩せていたけれど
楽しかった
変わり果てた自分の姿を
街の鏡で見ると
悲しくなる
若い頃に聴いた曲を
またリクエストしてみようか
題名なんか忘れてしまった
レコードはあるが
プレーヤーはいつからか動かない
調子外れでも
口ずさんでみよう
あの頃の甘い想い出を
それは時間のホコリを溶かしていく
バカヤローと
自分をののしりたくなりながら
けれど よくやったよ
満足することもある黄金の想い出
暗かったこと
甘い悲しみ
満ちあふれた喜び
過ぎ去った時間
せめてわずかでも取り戻そうと
その場所にきょう立つ
ぼくたちの愛
ぼくたちは恋をした
二人はやがて愛し合った
まなざしを交わし合った
二人はキスをしたことがなかった
手を握ることさえもなかった
でもすっかり心を分かち合っていた
愛の言葉をささやくこともないが
充分に熱くなった
長い長い期間が経った
二人はまるで夫婦のように
言葉を必要ともしなくなった
ぼくたちは何度も旅をした
街の喫茶店や映画館に行った
一度もそんなことはなかったが
何度もそんなことがあったかのようだった
ぼくたちはやがて老いた
ぼくたちの愛は永遠に続くと思われた
愛の言葉
「珍しい」
「何がですか」
「たいがいは自分を売り込み来るものなのに
君は他人を売り込みに来た」
「あの夫婦には恩があるからです」
「彼女はまだ美しいか」
みんなに愛された女
女王にもなれた
才能と聡明と美貌
自分はそれらにまるで頓着せず
売れない中年ライターと結婚した
父親も取り巻く男たちも
どんな才能と共鳴するのかと
自分しかいないはずと
期待しながら見守っていたはずが
彼女を奪ったのは
歓談に交わらず部屋の隅に沈んでいた男
取り巻きたちの落胆と諦めきれなさ
大御所から駆け出しまで
ひたすら彼女の力になれる日を待ちわびた
男は全力で
彼女を愛し
渾身を込めて
創作をし
二人で子どもを量産していった
豪邸など簡単に住める
才能と聡明と美貌
自分はそれらにまるで頓着せず
女は母性に耽溺した
男は小さなロマンチストであり
生活じみてもおり
優しさと激情を併せ持っていた
男は日の目を見ることがなく
優しく発狂して死んだ
最後までデビューの日を待ちながら
再び自分の出番を期待する優しき男たち
みんな遠くから見守った
愛の証しとして
いつまでも独身でいた
彼女はさしのべられる力に
一度は揺れるが振り切って
自分の眠らせていた才能を始動させた
女は男を幻視していた
男の作品について評論を書き講演し
女の愛によって
男は歴史に残った
「あの人の力になりたい」
「あの人を愛して下さる方々のために
働きたいんです」
彼は結婚詐欺師
不倫している
それは事実だけれど
やましい気持ちはなかった
もう終わっていたから
夫には仕事が
妻であり、子
夫の仕事には私が必要だった
私の資産があてにされた
それだけだった
私にも仕事はあった
彼と知り合ったのは
仲間と立ち寄ってからだった
ギャラリーに
彼から私に接近してきた
ううん
彼は純粋よ
彼は創作しかない
そして私との愛
彼のアトリエで
彼の作品に囲まれて
彼との情事
私は彼に創られる
有閑主婦の危険な昼下がり
そんなものじゃなかった
でも彼を殺した夫はいうの
彼は結婚詐欺師だって
夫は私を守ったの?
それとも私の資産?
朝から濡れていた
雨の降る夜だった
もう誰でもいい
あたしを何とかして
車を止めようとする
クラクションを鳴らして
去って行くばかり
止まった車に死にものぐるい
あたしを何とかして
出てきた男は顔見知り
ちくしょう
あたしをハメたやつ
あんたなんであたしの彼を
ホモだなんて言いふらしたの
もう誰だってよかった
こんな卑怯な男でも
腕に抱かれてしまえば
なされるがままだった
彼の言葉はウソではなかった
でも納得がいかない
彼は噂を否定するように
華やかな結婚式を挙げた
翌日 成田空港に行き
ウワサはほんとだ
オレは結婚できない
そんなこといわれたって
オレの親を喜ばせるためだった
そんなこと許せるわけないじゃない
あたしのことはどうだったの
君ならうまくやれると思った
でも でも
できないじゃない
ずっと ずっと待たされて
きょうは朝から