〈創刊について〉
 夢によく現れるのは、巨大な建築内部の迷 路である。
 洗濯物が干してあり、熱気をかき混ぜるだ けの扇風機をくぐり抜け、石炭が山と積み残 された工場や、埃くさい上下入り組んだ謎の 洋館、ふすまのどこまでも続く旧家のお屋敷 、お神輿の繰り出された祭を幽歩する。
 地方の小都市は豊かな自然に取り囲まれ、 四季極まった美しさに脳髄が痺れる体験をす る。信仰が篤ければ神仏に感謝し信心をいっ そう堅めることだろう。
 自然を眺めているばかりでは飽きたらず、 山深い森に分け入り、暗く不気味な迷路を彷 徨うのはなぜだろう。そこで畏怖ろしい存在 に遭遇し、痛めた心身を引きずっては神仏を 呪い、やがてはなおいっそう強い信心を確立 する。いや、呪いをますます積み上げて、悪を 讃美することさえある。
 わたしたちは健全な美を堪能すると同時に 、小都市に足りない迷路を求めて夢を見、身 近な山塊に踏み込んでいく。
 本誌はその報告書であると同時に、迷路そ のものでもある。

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