7.馬術の鍛錬
昔より,武士道を弓馬の道ともいい,身分の高下にかかわらず,弓を射,乗馬をもって武芸の最上としていたといわれている。 最近の武士は剣術,槍術,さらに馬術を大切に心がけて稽古につとめている。
また,若い武士はその他にも,弓術,砲術,居合,柔術など各種の武術を,朝夕,鍛錬するのが望ましいようである。 年齢を増し老いてしまってからでは,筋骨も脆弱になるであろうから,なにを修練するにも思うようにいかなくなるからである。
わけても,小身の武士は馬術に堪能でなければならない。 馬術に練達していれば,よい馬であるが欠陥や悪癖があって人を嫌う馬をみつけては安価に求め乗用馬とするならば,いつも身分不相応な良馬を所有するのと同様となろう。
武士として,馬に興味をもつことは大いに結構であるが,これにも善悪のふたつがある。
昔の武士が馬に執着したのは,ひとたび変事が起これば,具足を着用し旗幟をつけて身体が重くなり,自由な歩行が困難になるため,乗馬せねば戦場での活躍はできなかった。 馬はわが両足として重要であった。 場合によれば,この馬で先駆けをし,軍功を尽くさねばならなかった。
そのうえ,馬上において敵と勝負を決するときには,成り行きしだいで,わが馬も重傷を負い落命するから,畜生ながらも哀れに思える心が,日頃の飼料に気をくばり,手入れをするにも念が入ったのである。
以上は,初心の武士の心得のため,申しおくのである。
我が愛読書:大道寺友山原著『武道初心集』(教育社新書,1989)より
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