桃太郎異聞録 舞台裏1
「ある晴れた昼下がり市場へ続く道にて」

ここは人里離れた山間と書いておきつつしっかりと村の中である。実はここはドッチ村。
呑気そうな爺様とそれはそれはしょぼくれたババアが
『ズズズズズズズズズズズズズズッ』
っとかれこれ2年は入れっぱなしの出がらしもいいところな、お茶をすすっていた。
それでも二人は幸せそうである。
「ときにばぁさんやぁ。二年ほど前にアッチ村から旅立った桃太郎は、
話の流れから言ってもそろそろこの村に立ち寄っても言い頃だに。」
どうやらシナリオ通りに進まないこの物語の愚痴をこぼしている。
そりゃぁ、作者がその場で見切り発車もいいところにスラスラと書けば最初のシナリオなんか
はっきり言ってお呼びでない。
それでもこうして出演してくれる方々にとっては大変なことなのだ。
「ほんにそうですのぉ。じいさんやぁ。香港の映画ならともかくとして、これは日本の小説ですのにねぇ。」
スマン。作者として誠に申し訳ない。そこまで出演者のみなさまを困らせていようとは。
実はここだけの話、壱話ででん助どんに向けてバズーカをぶっ放したのもなんと言いますでしょうか、
若気の至りというか、ほんの出来心でして、、、。
「そう言えば、ソッチ村のでん助どんが、同郷の田吾作どんにカマほられたっちゅう話だ。」
グサリ。今、ものすごく大きなおもりが僕の心の中に打ち込まれました。もうこの村まで噂は伝わっていたのか。
って、僕はカマほられたなんて書いてないぞ。
くそっ。このじじい文句をたれつつ、せりふ間違えやがった。
今回はこのじじいを偉い目に遭わせてやる。(イヤン!僕ってあくま?)

さてこちらは人々を鬼から救うという使命を背負った桃太郎。
いま順調にドッチ村の隣村(ドッチ村との距離約八里)に向けて黙々と進行中であった。
一方、こちらはその桃太郎から世界を救う使命を担っている田吾作君である
彼は夕べ必死でシナリオを覚えてくれた結果、順調にドッチ村へ向けて歩いている。

「あ〜つまんねぇなぁ〜。」
桃太郎が反対側を旅姿であるくね〜ちゃんをみながらつぶやく。
「まぁ、前回の訳のわかんねぇやつは追ってこねぇしいいか。なんせ、ただでさえ、継ぎ接ぎだらけだった服が、殆ど全取っ替えだもんな。」
なるほど。確かに彼の今の服装はほぼ全てが以前の桃太郎の物とは違う。
しかし、全ては桃太郎が悪いのだ。せっかく僕がこの手の物語共通の主人公は傷つかないと言う設定を用意してやっているのに全く無視して枠の外ばっかり行く物だから、こんな事になるんだ。俺の言うとおりにしていれば、少なくとも一年前無事鬼退治が終了して、そんでもってめでたしめでたしってなって、それから、僕は僕で浦島太郎異聞録の執筆に取りかかれた筈なのである。全く(憤慨中)。

「取りぃ〜出しぃ〜ましたるぅ〜、一冊の本!これを台本と言いまする。」
 何て言いながら、桃太郎はビームスの袋から台本を取り出した。
「どれ、いま何処に向かっているんだっけ?え〜と標識は何処かな。」
 辺りを見回す。が、ここは明らかに江戸地代以前の日本の何処かであるからして、標識なんてあるはずがない。
「あっ、あった。あれだ。」
 嘘?マジで?僕の意見を無視しつつ、桃太郎は道路脇にたてられた標識の方へ向かって歩いていく。(本当にこんなんでいいのだろうか。:作者の声より)
「え〜と、どれどれ。ウェルカム・トゥ・ソッチむら。っていうことはここはソッチ村だな。よしよし。で、台本には。・・・。ソッチ村へ行く桃太郎、って書いてあるから間違ってないな。」
 あれ?なんで。あ、そうか。桃太郎に渡したのは、古い台本だ。早速新しい台本を桃太郎に渡さなくちゃ。ドロンッ!
「もしもし桃太郎君。」
「うわっ、誰だよお前は?」
「僕はねぇ、この物語の作者のマツモトヒロシっていうんだけどね。台本変わったから渡しに来たの。それでね、キミが行かなきゃならないのははソッチ村じゃなくてドッチ村なんだ。」
「え?」
「だから、今からドッチ村に行って頂戴。」
「マジ?なんでもっと早く、言ってくれね〜んだよ。」
「いや、キミが台本取りに来ないのがいけないんだよ。他のみんなはちゃんと取りに来たんだから。とりあえず、作者命令だからね。ってことで。」
 ドロンッ!
 はぁ。これでよしと。さてさて続はどうなる事やら。