太陽系に、大陽の光を青く、蒼く反射させる惑星がある。
 地球だ。
 ある日、その星の空に異変が起こった。世界中の人々は、ただただ呆然とその光景を眺めているだけだった。彼らの視線の先には。巨大な雲があった。と言っても真っ白な雲ではない、微妙な色彩と形をを持ちあわせ、あたかもそこに女性がいるかのような、そんな雲だった。
 青い色をした瞳。水の流れをそのまま植え付けたような髪の毛。薄衣の下から見える細い腕。
 ふと、その女性の口が開いた。
 声が聞こえる。何か、心の奥に直接語りかけてくるような感覚。
 「地球に息吹く我が子等よ。私の声に耳を貸してください」
 彼女は話し続けた。自らの手によって火星にも生命を誕生させたこと。それが人類と同程度、あるいはそれ以上の文明を持っていること。地球を侵略しようとしていること。その事態が二十年後にやってくること。
 地球の学者や、その他の有識者は口々に言った。火星に生命が存在するはずはない。それは火星探査機の調査結果でも明らかになったことだ。まして、人類と同程度以上の文明を保有しているはずなど無い。大体、あの影像は何だったのか。
 様々な仮説が飛び出しては、消えていった。蜃気楼説、集団催眠説、地球意志説など、どれも決め手がなく、葬られていった。
 謎の影像から二年後、女性の言っていたことが本当になるかも知れないという事態が起こった。
 地球の周りを回る星、月。その調査が、アポロ計画の中止以来、再会された時のことだ。調査員達は、未調査の地域へ次々と降りていった。そろそろ、未調査地域の調査も半分に至ろうかという時のことだった。一体の石造物が発見された。
 美しい女性の形をした像。その目の見据える方向にちょうど地球が来るように置かれている。台座の部分には何かが彫られているが、何なのかは解らない。だが、調査員達はその像に見覚えがあった。例の雲の女性そのものだったからだ。
 石像に関しても色々と調査が行われた。エックス線照射で、中に何かが埋め込まれていることが解った。頭部に一つと腹部に一つ、それぞれの部分の後部に付けられた、扉からその物体を取り出すことが出来た。頭部から出てきたのは不思議な機械、腹部から出てきたのは一冊の本である。
 すぐに二つとも炭素十四による年代測定が行われた。結果は驚くべき物だった。
 まず、謎の機械の方だが、こちらは炭素が含まれていないため、年代の測定は不可能だった。
 本の方は、なんと二十六億年前の炭素が含まれていた。一般的に、炭素十四の年代がそのまま本の作られた年代になるとは限らないが、それでも誤差二百年くらいが限界であろう。二十六億年という数字は、あまりにも大きすぎる数字だった。
 このことは、その頃、本あるいは紙という物を製造する技術を有する、知的生命体が存在していたこと。それを月に置いてこられる生命が存在していたことを示していた。
 前者と後者が同一者でない可能性もあるが、人類以外の生物であることは確かである。
人類には信じるしかなかった。火星人と限定は出来ないが、地球の近くに異星人はいるかも知れないということを。