私の妄想・ソ連邦崩壊とレーニン

 妄想とは怖いもので、未だにソ連邦が崩壊したとは信じられないことがある。こう言うと、大方の人に笑われるだろう。しかし、現実を直視できない人は大勢いるものだ。迷信や迷妄はいつの世にも遍在している。

 ソ連邦が崩壊するなんて、ありえない事だと私は思っていた。ところが、現実は1991年12月にソ連邦は崩壊し、消滅した。これが未だに信じられないのである。つまり私は、迷信や妄想にとらわれ易い人間ということなのだろう。

 私は18歳から19歳にかけての若い頃、「マルクス・レーニン主義」を熱烈に信奉していた。そして、極左の政治運動に共鳴し、過激な全学連の闘争に参加していたことがある。 その後、挫折して転向し、社会人になってからは、まったく「マルクス・レーニン主義」とは無縁となり、今では勿論そんな主義などは信奉していない。

 しかし、青春の輝かしい一時期に、ある主義を信奉しそれに心酔したということは、トラウマとなって私の心の中に残っているのだろう。若い頃の強烈な印象というものは、なかなか消し去ることができない。 だから、「マルクス・レーニン主義」に立ったソ連邦の崩壊ということが、信じがたいのだと思う。

 資本主義が消滅し社会主義が確立されるというのが、「マルクス・レーニン主義」の歴史の必然ということであった。 ところが現実は、社会主義のソ連邦が消滅し、資本主義のチャンピオンであるアメリカの世界的支配が確立した。 私の若い頃の信仰は、かくして迷信となり幻想となり、妄想となったのである。

 20世紀で最も偉大な歴史的人物を挙げろと言われれば、それは誰であろうか? ガンジーやチャーチル、アインシュタイン、毛沢東ら数多くいるだろう。しかし、私は躊躇することなく「それはレーニンだ」と答える。 

「マルクス・レーニン主義」とはまったく縁がなくなっても、20世紀の革命の時代に最も大きな影響を及ぼしたのは、レーニンだと思う。 ロシア社会主義革命はレーニンなくして考えられないし、その後の国際共産主義運動は、レーニンの思想なくして語ることはできない。それほどレーニンの影響は絶大だったと思う。

 そこで、ソ連邦が消滅し21世紀に入った今、私の夢はあの世へ行ってしまったレーニンにいろいろ話を聴くことだ。これはまったく幻想であり、妄想だ。 我々は皆いずれあの世へ行く。そうなれば亡き父や母だけでなく、鬼籍に入った多くの人達に会える。それを信じてあの世へ行きたい。 

 生涯一記者である私(テレビ局で28年間、報道記者であった)は、まずレーニンに単独インタビューを申し込み、ソ連邦とはなんであったのか、なぜ崩壊してしまったのかなどを聴きたい。 21世紀の世界の感想をレーニンに聴きたい。 そして冥界から、レーニンの話を地上に伝えたい。それが、生涯一記者である私の妄想である。 (2002年1月21日)

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